違いを超えて、私たちはつながれるのか―― 世界の女性10名のストーリー『逆境の先に』発刊
2026.03.06
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- 企画部 川合優子
『逆境の先に』 しなやかに人生を歩んできた世界の女性10名のライフストーリー
3月8日の国際女性デーに、世界と日本の女性10名のライフストーリーを紡いだ『逆境の先に』という書籍を発刊します。
困難に向き合った女性たちの光を届ける一冊です。
JICAは長年にわたり、人材育成、制度構築、インフラ整備などを通して国際協力を続けてきました。
私もこの大好きな国際協力の仕事を、大学を卒業してからずっと続けてきました。
それでも、ニュースを見ても、そして現場に足を運んでも、
この世界の各地ではいまだ紛争が終わらず、
相手との違いを理由に、分断がむしろ強まっているように見えます。
そんな現実を前に、私はあるとき、大きな無力感を覚えました。
私はいままで、何を積み上げてきたのだろう?
世界のために一体何ができたんだろう?と。
悩みの中で、私は、JICAに入構したときの気持ちを思い出しました。
「国際協力を通して、この世界を少しでも平和で優しい場所にしたい」
どんなに小さいことでもいいから、行動しよう。
そんな当時の想いも後押しとなり、2024年1月、「Hikari Project」を開始しました。
「Hikari Project」は、「国籍、性別、文化、役職など、あらゆる属性の違いを超えて、人と人はつながり合えるのか」という問いに向き合う活動です。
今回、私たちは社会的・文化的制約を抱える女性たちに光をあて、インタビューを重ねました。
ウクライナから日本へ避難し、両国を支援でつなぐ若き担い手となった女性。
紛争下のサラエボで地下室を教室に変え、子どもたちの学びを守った女性。
南スーダンの過酷な環境で報道を続けるジャーナリスト。
聴覚障害の息子を抱え、自らも癌を乗り越えたタイのシングルマザー。
女手一つで二人の子どもを育てるJICAザンビア事務所のスタッフ。
そして対話の中で、私たちは問い続けました。
あなたは人生の中で、どんな苦しみと向き合ってきましたか。
その逆境や闇から、なぜ立ち上がれたのですか。
その先に、どんな光が見えましたか?―――と。
戦争、震災、暴力、差別、病、貧困、大切な人の喪失。
彼女たちが向き合った苦しみや悲しみの形はそれぞれ大きく異なります。
しかし、インタビューを通して、
彼女たちのストーリーの中に共通点があることも分かりました。
自分の大切にしているものを失えば、悲しい。
誰かが自分を理解してくれたり、傍にいてくれたら、嬉しい。
自分のために、そして誰かのために立ち上がるとき、人は強くなれる。
逆境の形は違っても、その奥にある感情は、海を越えてつながり合っていたのです。
彼女たちは、決して人前で話しやすいとはいえない自らの経験を、
誰かの光になれば、という想いで、一つ一つ言葉を紡いでくれました。
「あなたの弱さは、あなたを傷付けるものではなく、誰かとつながるきっかけになる」
「生きていてごめんなさいと思ったときもあったけど、自分のためより誰かのためなら動ける」
「今日やるべきことをやる。それを積み重ねるだけ」
Hikari Projectは、JICAの中でも人と人とが出会い、つながっていける場所を創るべく、機構内でラジオ「Hikari Radio」を立ち上げ、30回以上の放送を続けてきました。
障害、家族の病、LGBTQ+、ドメスティックバイオレンス、不登校など、多様なテーマで、
JICA内外からゲストを呼び、自らの経験を語るラジオです。
職場にいる身近な人も、それぞれの物語を抱えている。
多様なストーリーを共有するHikari Radioは、部署や役職を超え、
「悩みや葛藤を抱えながら生きる一人の人」として安心して集える場になりました。
本物のラジオのようにリスナーからのリクエスト曲やHikari Radio特製のジングルも流す
私たちは、国籍、言語、文化といったあらゆる属性の違いを越えて、人と人はつながり合えるのかという問いに向き合ってきました。
このプロジェクトを通して多様な人たちと関わり合う中で、さまざまな違いを抱えていても、対話を通して、互いに理解し合い、尊重し合える瞬間が確かにあるということを実感しました。
一人一人の人間に光を当て、違いを越えて語り合う。その積み重ねが、分断を越える小さな力になるのではないかと感じています。
本書は、世界96か所、日本15か所に拠点を持つJICAだからこそ実現したかった挑戦の記録でもあります。
Hikari Project は2026年3月8日の国際女性デーに合わせて、
女性たちのストーリーをまとめた書籍『逆境の先に』を発刊します。
成功の物語ではなく、失敗したり、傷付いたり、
それでも自分を信じて歩み続けた10名の女性たちの記録です。
このブログを読んでくださっている皆さんが、もし今、困難の中にいるのなら、
どうかこの本を開き、世界に思いを馳せてみてください。
世界が少しでも優しい場所になることを願いながら、この一冊をお贈りします。
多様な部署から集まったチームメンバー。「楽しいことを楽しくやる」がモットー