jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

米国対外援助の激動

2026.03.10

サムネイル
アメリカ合衆国事務所次長 堀川美保

JICAアメリカ合衆国事務所の機能

JICAは、96か所の海外事務所を有し、主に開発途上国で事業を行っていますが、先進国ではフランス・パリと米国・ワシントンDCの2か所に事務所を構えています。いずれも、開発に関連した国際機関やシンクタンクが集積する拠点で、開発協力をめぐる政策的議論の分析やJICAの取り組みの発信を行っています。
なかでも米国では、世界最大規模の政府開発援助を拠出する開発援助関係機関を始め、首都ワシントンDCに連邦政府機能が集まっています。また、国際通貨基金(IMF)や世界銀行、米州開発銀行といった国際機関が本部機能を置き、さらには多くのシンクタンクも集結しています。
こうした国際協力推進と政策議論をリードし、かたち作る中心地において、JICA米国事務所は、現地での動向や議論を分析し、日本およびJICAの取り組みを発信していくべく、活動しています。

クリスマス仕様のホワイトハウス

国際協力分野での日米の違い

JICAは、日本の国際協力を包括的に実施する機関であり、資金協力、技術協力事業に加え、ボランティア事業、緊急援助の事務局など、多くの機能を有するのが特徴で、これらの機能を柔軟に運用しつつ、開発途上国のニーズに合わせた国際協力を展開しています。一方米国のこれまでの国際協力をみてみると、1961年に設立された平和部隊のボランティア事業やUSAIDの無償・技術協力を中心に、時代のニーズに応じて必要な組織が設立・運営(米国国際開発金融公社(DFC)、ミレニアムチャレンジ公社(MCC))されてきました。2024年のODA実績額(OECD/DAC)では、米国がシェアの3割を占める世界第1位(日本は4位)、人材育成、人道支援、保健分野、民主主義・ガバナンス支援への強みを有してきました。ちなみにJICAは、資金規模的には返済を義務付ける円借款を通じた支援が多いですが米国には借款による資金支援がないというのが大きな特徴です。
近年では、日米の両首脳が打ち出してきた両国の強固なパートナーシップに基づいて、国際協力の分野でも、日米援助機関が協議する枠組みの立ち上げや、両国それぞれの強みを補完しながら協力を進めるべく、日々米国援助機関との調整・議論を盛んに行っていました。

2025年1月からの地殻変動

2025年1月20日の米国大統領就任式は、厳しい寒さで40年ぶりに屋内で行われました。「アメリカファーストの政策」は、米国の対外援助へ具体的にどのように影響が及ぶのか?かたずをのんで就任演説を聞いていました。演説そのものは具体策には触れられませんでしたが、就任日に発令された史上最多の大統領令の中には、「米国の対外援助の再評価と再編成」と題するものが含まれ、対外援助方針の見直しのみならず、現在行っている支援全ての90日間の停止を求めるものが含まれていました。当初は、政権が変わった際の通常の見直しの範囲との楽観的な雰囲気もありました。ところが、当時イーロン・マスク氏が率いた政府効率化省(DOGE)によるUSAIDオフィスへの立ち入りなどもあり、単純な方針の見直しではなく、USAIDがコンサルタントと契約し履行中の開発途上国支援事業も凍結するという大きな動きが見えてきました。その後、人道・緊急援助は一転して例外扱いとされたり、USAIDスタッフのほとんどが解任や休職となったりと、報道ベースで知りえる状況は数日単位で大きく変わっていき、2025年1月19日まで頻繁に連絡を取っていたUSAIDの担当にはある日から連絡が取れなくなりました。2025年7月には、ルビオ国務長官が国務省のブログの中で、USAIDの業務終了やアメリカファースト政策の下で援助から自助努力を優先する経済連携を目指す方針を発表しています。
JICA米国事務所では、こうしたトランプ政権のアクションに対する司法判断なども含め一連の地殻変動を、報道や関係者からのヒアリング等を通じて日々追ってきました。

看板が排除されたUSAID本部

また、トランプ政権は国連機関への関与も減らしており、国連分担金の大幅減やWHOやUNESCOからの脱退などもありました。一方、IMFや世界銀行からの脱退や資金拠出削減は行わないものの、4月にベッセント財務長官が演説で、両機関に対し、気候変動、ジェンダーなど非経済的テーマに過剰に注力するのではなく、本来の使命としてマクロ経済の安定・成長に集中するよう要請しました。それを受けて、両機関では要請に応える動きが加速化しています。

これらを受けて

今回の国際協力分野での地殻変動を受けて、日本政府及びJICAは国際協力によって開発途上国とどのような関係を紡いできたか、信頼を得られてきたのかを振り返る機会にもなっています。前述のとおり、JICAは人材育成にも注力してきたとともに、資金規模の多くを円借款という形で供与し開発途上国のインフラ整備等を支援するなどしてきた「日本式アプローチ」は、開発途上国の自助努力・オーナーシップを促すという意味で、米国の目指す新たな方針と同じ方向なのかもしれません。JICA米国事務所の我々としても、日本政府やJICAの支援を最大化して開発途上国に届け、日本が信頼できるパートナーとして評価が高まるよう、米国や他の援助国・機関とのパートナーシップも引き続き模索するなどの活動を続けていきます。

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