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インドの農村部で輝く3万人の女性たち

#1 貧困をなくそう
SDGs
#5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs
#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs

2026.05.22

サムネイル
インド事務所 平田 桃

インドの都市部と農村部

インドと聞いて、みなさんはどのようなイメージをもたれるでしょうか?経済成長著しい国、IT人材が活躍する国、あるいは近所にあるインドカレー屋さんを思い浮かべる方もいるかもしれません。

インドの首都デリーで暮らしていると、JICAが支援したメトロの女性専用車両で通勤できたり、短時間で届くデリバリーサービスがたくさんあったりと、とても便利です。家の近くでは野菜販売などもあり、冬の大気汚染以外は、比較的不自由なく過ごせています。

コルカタ、ムンバイ、チェンナイなどの都市に行っても、人の多さと活気に圧倒されます。メトロが走る場所も多く、JICAが支援した路線もあり、都会的な雰囲気が感じられます。

大気汚染と霧がひどい日のインド事務所が入るビルの前

デリーメトロの女性専用車両

自転車で家の前まで販売に来る野菜屋さん

一方で、インドでは人口の多くが農村部に集中しています。私は日本の農村部出身ですが、インドの田園風景は日本と似ており、出張中は故郷をよく思い出します。JICAは、そんな農村部において必要不可欠な農業、上水道、道路などの支援を実施しています。

灌漑建設事業を実施中のオディシャ州

インドでは、働く人の約半分が農業に関わっており、農業は国にとってとても重要な産業です。また、インドの貧困層は最大約1.3億人(2019年)と、全世界における貧困人口の約2割を占めていますが、その約4割が農家となっており、均衡のとれた社会経済発展と貧困削減のために、農家の所得向上が喫緊の課題です。

オディシャ州の水利用者組合に参加する女性農家

さらに、インドはジェンダー開発指数が低く、私自身、女性が集会の場で発言をはばかる様子や、女性の将来が村の男性によって決められてしまう場面に遭遇したことがあります。女性のエンパワーメントのためには、読み書きを含む教育、生計向上、社会参加などの支援も同様に重要な課題です。

農村部での女性農家への支援

現在、JICAはインドで農業支援の取り組みを約12件進めています。その中の一つに、貧困率が全国で2番目に高く、ジェンダー開発指数も低い、ジャルカンド州での支援があります(ジャルカンド州は、お釈迦様が悟りを開いたことで知られるブッダガヤがあるビハール州から、2000年に分離してできたインド東部の州です)。ジャルカンド州では、男性が都市部に出稼ぎに行くことが多く、農業は女性が担っています。そこで、州政府の生計向上組合と協力し、約3万人の小規模女性農家を対象に、点滴灌漑の導入や共用農業機材施設の整備などを行う園芸の取り組みを進めています。

ジャルカンド州は、気候変動によって偏在的または不安定な降雨量などの問題を抱えています。州の大学訪問時、降雨量の変動データとともに、気候変動の影響が年々深刻になっているという話を伺いました。そのような環境では、安定的な水資源確保や水資源の有効活用は農家にとって不可欠です。点滴灌漑を導入することで、大幅な節水と作物の収量の増加が見込まれ、乾季を含めた年間を通じて作物の栽培が可能となり、生産性を向上させることができます。

導入された点滴灌漑1

導入された点滴灌漑2

点滴灌漑を導入した畑

この取り組みでは点滴灌漑と合わせてビニール育苗施設やミミズ堆肥施設も導入しています。収穫した作物を一時的に保管する保冷庫や、農家研修や農業機材の貸し出しなどを行う施設も建設しています。農家への農業技術支援として、運営方法やマーケティングなどの研修も実施するなど、点滴灌漑の導入だけでなく、総合的に農家を支援しています。また、従来の「作ってから売る」農業から、「売るために作る」というマーケット志向型の考えに移行するため、SHEP(Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion)と呼ばれるアプローチも導入しています。

本活動は女性メンバーからなる自助組織(Self Help Group)を通して実施されていますが、事業開始から数年経ったいま、実際にこの取り組みで支援した女性農家たちは、点滴灌漑等を懸命に活用し、所得を向上させています。男性に比べて女性の方が子どもの教育や健康にお金を回すとよく言われますが、この取り組みで女性の所得が向上したことで、子どもが学校に行けるようになったり、より良い住まいを手に入れられたりしています。約3万人の女性農家が、JICAの支援を通して家族の希望・未来を明るくしています。

女性農家と、女性農家の自助組織(SHG)を支援する州政府の女性

収穫の様子1 (写真撮影:渋谷敦志)

収穫の様子2 (写真撮影:渋谷敦志)

こうした変化は、他州にも広がり始めています。他州のJICA農業事業の担当者がジャルカンド州での取り組みを視察し、感銘を受けたことで、SHEPアプローチや女性のエンパワーメントに積極的に取り組むようになったという例もあります。

インドの農家のために

インドで働く中で強く心に残っているのは、現地の方々の情熱です。インド政府の方からは、農家の所得や暮らしをよくしたいという想いをよく聞きますし、その目標に向かってインド政府も農家も、関係者一人ひとりが懸命に取り組んでいます。経済成長著しいインドですが、まだまだ国際協力のニーズはたくさんあります。これからも農家などの裨益者にとって早く大きなインパクトが生まれるよう、JICAの現地スタッフやインド関係者とともに働いていきたいと思います。

収穫の様子3 (写真撮影:渋谷敦志)

インド農村部で輝く女性たちの動画もぜひご覧いただければ幸いです!

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