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「BEEをどう考えますか?」―JICA職員として向き合う南アフリカの現実

#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs

2026.08.31

サムネイル
南アフリカ事務所 山下峻督

南アフリカで働いて何度も耳にした「ある言葉」

南アフリカで働き始めて間もない頃、現地の関係者との打合せで何度も耳にした言葉がありました。
それが「BEE」です

BEE(Black Economic Empowerment)は、アパルトヘイト時代に生まれた経済格差を是正するための仕組みです。民主化後も、経済活動の恩恵を十分に受けられない人々が多く残っていたことから、政府は企業にも格差是正への取り組みを求める制度を整備しました。企業は、人材育成や雇用、調達などの取り組みを総合的に評価され、その結果が政府との取引やビジネスにも影響します。そのため、南アフリカで事業を行う企業にとっては、事業戦略の一部として考えなければならない重要な制度となっています。

当時の私は、その意味を十分に理解していませんでした。しかし、企業との意見交換や事業を進める中で、この言葉が単なる制度ではなく、南アフリカ社会の歴史や価値観、そしてビジネスのあり方そのものと深く結びついていることを実感するようになりました。

日本で働いているだけでは、なかなか出会うことのない考え方です。しかし、日系企業が南アフリカで事業を行う上では避けて通れず、JICAとして企業と連携する場面でも頻繁に向き合うテーマでもあります。

現場で感じた「制度は避けて通れない」という現実

この制度をより身近に感じたのは、アフリカ発のスタートアップ企業を支援する「NINJAアクセラレーション・プログラム」を担当していたときのことでした。この事業では、日系企業と南アフリカのスタートアップとの協業を支援しました。その中で、ある日系企業の担当者と話す機会がありました。その方の言葉が今でも印象に残っています。

「南アフリカの企業と協業するときに、BEEは避けて通れません。ただ、制度を理解して適切に対応すれば、(BEEをクリアしていない企業よりも)むしろビジネスの可能性は広がると感じています」

それまで私は、このBEEという制度は企業にとって公平な競争を阻害するもので、この国の経済発展、格差是正が妨げられているのではないかと感じていました。しかし、この言葉を聞いて、現地のルールを理解し、その前提で事業を考えることが、新しいパートナーや市場との出会いにつながることもあるのだと気づかされました。
一方で、現場では難しさも感じます。
企業の技術力や価格だけでは受注につながらない場面があり、意思決定が複雑になることもあります。また、制度への対応そのものが目的になってしまっているように見えるケースや、本来の理念とは少し異なる運用に感じる場面に出会うこともありました。
こうした経験を通じて、歴史的に蓄積されてきた不平等を是正することの難しさを改めて考えさせられました。制度は必要であっても、それを現実社会で運用することには、多くの葛藤が伴うのだと感じています。

南アフリカで働いて感じたこと

南アフリカの現場で、今まで私が企業や関係者と向き合ってきた中で、BEEの背景には、この国が長い歴史の中で抱えてきた課題と、それを乗り越えようとする社会全体の挑戦があることを知りました。

だからこそ、この制度を「良い」「悪い」と単純に判断することはできません。むしろ重要なのは、歴史的背景を理解しながら、現場で直面する現実にも目を向ける。そして、日本と南アフリカ、それぞれの立場をつなぎながら協力の形を考え、バランスをとり続けていくことこそが、私がこの国で働く中で学び続けていることです。複雑な現実に向き合い、その中で少しずつ信頼関係を築いていく――。それこそが、JICA職員としての役割であり、国際協力の現場で働く面白さでもあり、同時に難しさでもあると感じています。

事務所では定期的にブライ(BBQ)で親交を深めています (中央が筆者)

NINJAアクセラレータ・プログラムに参加いただいたスタートアップのメンバーと

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