アフガニスタン向け無償資金協力贈与契約の締結:故中村哲医師の実践による灌漑手法を通じ農業生産向上に貢献(FAO及びペシャワール会/PMSとの連携)

#2 飢餓をゼロに
SDGs
#6 安全な水とトイレを世界中に
SDGs
#16 平和と公正をすべての人に
SDGs

2023.08.30

国際協力機構(JICA)は、8月30日、国際連合食糧農業機関(FAO)との間で、アフガニスタン向け「地域社会の主導による灌漑を通じた農業生産向上計画(FAO連携)」を対象として13.28億円を限度とする無償資金協力の贈与契約(Grant Agreement: G/A)を締結しました。

アフガニスタンは、2021年8月の政変から2年が経過しますが、経済制裁や国内の混乱に伴う経済悪化や、干ばつや洪水・地震等の自然災害による影響が重なり、依然として深刻な人道危機が続いており、困窮する人々への迅速な支援が求められています。

なかでも食料不足は危機的な状況にあり、人口の6割に相当する約2,400万人が栄養不良のリスクにさらされています。食料生産の向上は現在のアフガニスタンにおいて喫緊の課題です。さらに、就業人口の6割以上を占める重要な産業である農業は、人々の生計に直結することから支援が必要とされています。

降水量が少ないアフガニスタンでは、天水農業が不安定で、雪解け水や河川水を利用した灌漑が重要ですが、干ばつの影響や、灌漑施設の不足または維持管理が不十分等の理由により、農地に必要な水を十分に行き渡らせることができておらず農業生産の足かせとなっています。 

アフガニスタン東部のクナール川流域では、日本人医師の故中村哲氏が総院長を務めた現地 NGO団体PMS(注1)により2003年から灌漑整備が行われ、2019年時点で約65万人の生計が向上し、2023年時点で約23,800haの耕作地が回復しました。中村医師は、灌漑施設完成後も長く裨益地域の人々に活用されるように、施設の計画から設計、建設、維持管理に至るまで一貫して地域社会の主体性を重視する「PMS方式灌漑(注1)」を考案し計画し、その建設に尽力しました。

注1:「PMS」は、ペシャワール会のアフガニスタンにおける事業体で、Peace (Japan) Medical Serviceの略称。「PMS方式灌漑」は、地域で入手できる資機材を活用し、アフガニスタンと日本の伝統的な土木技術を、試行錯誤を重ねて融合させたシンプルかつ実用的な灌漑技術。

JICAは、クナール川流域において、FAO及びペシャワール会/PMSとの協力により、中村医師が作り上げてきたPMS方式灌漑の普及のための事業を実施します。本事業は、食料不足が深刻な地域において、PMS方式による灌漑施設改修及び持続的な施設利用に係る研修等を通じて灌漑用水供給能力の改善を図り、もって農業生産の向上に寄与するものです。また、本事業はSDGsゴール2(飢餓をゼロに)、ゴール6(安全な水とトイレを世界中に)及びゴール16(平和と公正をすべての人に)に貢献します。

なお、JICAは、PMS方式灌漑に係る技術・知見の普及のため、2018年から中村医師と協議し、アフガニスタン側関係者及びペシャワール会等と検討を重ね、PMS方式灌漑事業に係る知見・経験・哲学、治水・利水技術の工夫等を体系的に整理し、2021年に「PMS方式灌漑事業ガイドライン」を日本語、英語、ダリ語、パシュトゥー語の4言語で発行しました。同ガイドラインは、本事業の計画・設計・建設および研修等で広く活用される予定です。

注2:「PMS方式灌漑事業ガイドライン」は下記サイトからご参照ください。

署名式の様子

署名式の様子

本事業の詳細は以下のとおりです。

案件基礎情報

国名 アフガニスタン・イスラム共和国
案件名 地域社会の主導による灌漑を通じた農業生産向上計画(FAO連携)
(The Project for Enhancing Agriculture Production through Community-led Irrigation)
実施予定期間 48か月
実施機関 国際連合食糧農業機関(FAO)
対象地域・施設 アフガニスタン クナール県
具体的事業内容(予定) 1 灌漑施設改修等
2 技術トレーナー育成研修、農民向け研修

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