「東京大学・JICA連携留学プログラム『水道分野中核人材育成コース』研究報告会」の開催

掲載日:2020.09.23

イベント |

東京大学大学院工学系研究科とJICAは、2020年9月23日にWEB会議形式にて、留学プログラム研究報告会を開催しました。自治体、民間企業、大学関係者など120名以上が参加しました。

2018年9月、東京大学大学院工学系研究科とJICAは新たな留学生受入プログラム「水道分野中核人材育成コース」を開始しました。2020年9月、第一期生としてカンボジア、ミャンマー、ラオスの水道事業体及び水道所管官庁から来日した4名が、コロナ禍による困難な状況を乗り越え、無事修士課程を修了しました。留学生プログラムの進捗及び4人の留学生による研究成果や日本での学びを本イベントにて報告しました(概要については、フライヤーを参照)。

冒頭、岩崎JICA地球環境部長からJICA開発大学院連携及び水道分野中核人材育成コースの概要や、本コースの強みである(1)課題解決型研究、(2)戦略的人選、他JICA事業との連携、(3)日本の水道事業の開発経験の共有、(4)日本の自治体、企業との連携、(5)重層的なネットワークの構築を説明しました。また、留学生に対して「課題解決能力に磨きをかけ、前例のない課題に対しても対処し、母国の水道事業の発展へ貢献して欲しい」と期待を伝えました。
続いて、滝沢智東京大学工学系研究科教授が、「SDGs 6(全ての人々に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保する)を達成するには、人材育成とSDGs 10(国内および国家間の不平等を是正する)に通じる平等な水配分が重要」と述べ、研究活動を通じた「考える人材」、論理的に課題解決ができる人材の育成を本コースの特色として挙げた。
その後、留学生4名が研究内容の報告及び日本国内での学び、帰国後の抱負について述べ、日本の水道事業体や企業を訪問し、日本の水道の開発経験を理解したことも含め、学びの多い日本への留学だったことを報告しました。
各留学生の研究内容の概要は以下のとおりです。
カンボジアからの留学生Ms. Thor Kounthyは修士論文「カンボジアの都市近郊における民営水道事業者の経営状況の評価」について発表し、民営水道事業者の多くが設計の不備により、非効率な運転や頻繁な損傷を招いている実態を説明しました。
ラオスの留学生Ms. Phaimany Sengphouvongは「ラオス国首都ビエンチャン水道公社における職員の労働効率に影響を与える要因」を研究テーマとし、水道事業体職員へのインタビュー結果を分析し、人材開発機会の不足や業務責任の不透明さなど、業務効率が向上しない原因を明らかにしました。
ミャンマーからの留学生Ms. Ei Khaing Monは「ミャンマー連邦共和国ヤンゴン市の西部における地下水汚染源の推定」という研究テーマで、地下水源、表流水源共に大腸菌やアンモニア性窒素に汚染されていることを明らかにし、生活排水や各水源の汚染源について更なる分析が必要と指摘しました。
同じくミャンマーからの留学生Ms. Khaing Khaing Soeは「ヤンゴン市の異なる住居形態における水道メータ損壊による料金収入損失の推定」というテーマで、損傷している水道メータを交換し固定料金から従量制へ移行することで、水道料金収入を増やすことができ、1年から2.5年で水道メータの交換費用を回収できることを明らかにしました。

最後に、東京都立大学の小泉特任教授及び厚生労働省 東水道計画指導室長から、本コースへの期待の言葉を頂きました。
小泉特任教授は、「水道一家」という言葉を例に日本での学びを帰国後に周囲の人々に伝えて欲しい、日本と各国をつなぐ架け橋となるよう期待の言葉を述べました。また、東室長は、水道には「ヒト・モノ・カネ」が重要であり、特に「ヒト」が重要であることを述べ、帰国後の活躍への期待を述べました。

JICAは、本コースを通じて、東京大学、日本の水道事業体や民間企業と連携し、開発途上国の水道分野の未来のリーダーを引き続き育成していくと共に、これら育成した人材と各国の水道分野における課題解決に向けて協働していきます。

【画像】

イベント会場の様子

【画像】

研究発表をする留学生

【画像】

東京都立大学小泉特任教授

【画像】

厚生労働省 東水道計画指導室長

【画像】

留学生(前列中央4名)、指導教官、JICA担当者等による記念撮影。