jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

公共インフラ事業においてCOVID-19にどう対応するか?-日本と中米の事例-

掲載日:2020.10.16

イベント |

概要

会議名:公共インフラ事業においてCOVID-19にどう対応するか?-日本と中米の事例-
開催日:2020年10月16日
主催:JICA(社会基盤部、エルサルバドル事務所)
場所:オンライン会議

主な参加者

国土交通省大臣官房技術調査課事業評価・保全企画官 大場慎治氏
国土交通省不動産・建設経済局建設業課政策係長 望月洋樹氏
ホンジュラス「国道六号線地すべり防止計画」コンサルタント 日本工営株式会社 西村秀紀氏
エルサルバドル「サンミゲル市バイパス建設事業」実施機関 公共事業・運輸省実施ユニット総括 ロクサーナ・ミラ氏
主な参加者は、JICA協力先の政府機関、事業に携わるコンサルタント、施工業者、JICAスタッフ等120名以上。

背景・目的

中南米地域では、2020年2月26日にブラジルで最初の新型コロナウィルス罹患者が確認され以来、各国で感染が急速に拡大し、ロックダウンや空港・国境閉鎖等の措置の影響で、多くのインフラ公共事業においても遅延や中止等が発生し、建設業に大きな影響を与えました。感染症の問題に加え、経済活動の停滞による産業分野の成長の鈍化、雇用の喪失が懸念される中、建設現場では感染防止のためのマスク着用、ソーシャルディスタンスの確保、遠隔による打合せ等の取り組みが進められ、発注者は感染防止対策への支援や事業遅延及び一時中止に対する契約変更等の柔軟な対応に努めているものの、どのような措置が適切であるか手探りの状態であるのが実情です。

各地域や国によって感染状況や対策措置に違いはあるものの、感染症がインフラ公共事業へ与える影響を軽減する、より効果的な対応策について、日本と中南米地域の各国がお互いの事例を学び合う機会とするために本セミナーを開催しました。国土交通省からゲストスピーカーを招き、日本での対応状況について情報提供しながら、中米地域の対応事例についても紹介しました。

内容

本セミナーでは、第一部として「建設現場における新型コロナウィルス感染対策」について、日本とホンジュラスの取組事例を紹介し、第二部では「工事の一時中止等における発注者による対応」について、日本とエルサルバドルの対応事例を紹介し、JICAが協力する事業の政府実施機関やコンサルタント、施工業者等を中心に、約120人が参加しました。

日本の建設現場における感染対策の事例を紹介した国土交通省望月氏は、日本政府の基本的対処方針において、公共工事は社会の安定の維持の観点から、緊急事態措置の期間中も継続を求められる事業として位置付けられていることを説明しました。その上で、クラスター感染発生リスクの高い建設工事の現場やオフィスにおいて「三つの密」(密閉空間、密集場所、密接場面)を回避するために講じられている対策事例や、日本の厳しい夏の熱中症リスク軽減等のための取組事例について紹介し、建設現場でのオリジナルポスターやロゴ、看板を通じた実践的な意識向上法を示しました。

日本の発注者による対応事例について紹介した大場氏は、日本政府の基本的対処方針において、公共事業は継続が求められる事業に位置付けられていることを基に、国土交通省の直轄工事では一律に受注者に中止を求めるのではなく、緊急事態宣言対象地域内においては受発注者間で協議を実施し、それ以外の地域においては受注者から一時中止等の申し出があった場合に地域の事情を確認した上で措置を実施していることを紹介しました。

また、感染拡大防止のために必要と認められる対策については精算時に契約変更を実施、入札契約手続きにおいては競争参加資格確認申請書や資料等の提出期限の延長、映像データを活用した監督検査を行う等、発注者として柔軟な対応を行っていることを説明しました。更に大場氏から、日本では7月下旬以降、国土交通省直轄土木工事では単発的に一時中止等がかけられた工事があるものの、10月中旬時点ではゼロであることも共有され、参加者の注目を浴びました。

ホンジュラスやエルサルバドルの事例紹介では、出勤時の検温や手洗い、機材の消毒等の取組、感染の疑いが発生した際に取る手順等について発表されました。ウェビナー中、チャットを通して多数の質問やコメントが寄せられ、建設現場の屋外空間でのフェイスシールドの着用の必要性や、感染防止対策実施に関する施工業者との契約上での取扱い等について質問がなされ、参加者からは非常に有意義なウェビナーだったとの声が寄せられました。

今回のセミナーを通じて、ウイズ・コロナそしてポスト・コロナの時代に向けて、インフラ公共事業の現場や発注者・受注者間のより効果的な感染対策に関する議論が進み、今後の更なる課題解決に向け、国を超えて知見が共有されることが期待されます。

【画像】

建設現場「三つの密」の回避等に向けた取組事例に関するプレゼンテーションの様子(国土交通省不動産・建設経済局建設業課政策係長 望月 洋樹氏)

【画像】

直轄土木工事における新型コロナウイルスへの発注者としての対応に関するプレゼンテーションの様子(国土交通省大臣官房技術調査課事業評価・保全企画官 大場慎治氏)

【画像】

ホンジュラス「国道六号線地すべり防止計画」の感染対策事例に関するプレゼンテーションの様子(日本工営株式会社 西村秀紀氏)

【画像】

エルサルバドル「サンミゲル市バイパス建設事業」の発注者としての対応事例に関するプレゼンテーションの様子(公共事業・運輸省実施ユニット総括 ロクサーナ・ミラ氏)