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第9回JICA-JISNAS(農学知的支援ネットワーク)フォーラム開催報告

掲載日:2020.12.11

イベント |

第9回JICA-JISNAS(農学知的支援ネットワーク)フォーラムが2020年12月11日(金)にオンライン(Zoom)により開催されました。

本フォーラムは農業・農村開発及び水産分野における特定テーマについて、JICA、JISNAS間で討論・意見交換を行い、双方の知見を深め、若手人材の積極的かつ主体的な参加を奨励して能力開発を図ることを目的として開催するフォーラムです。

今年度は、「コロナ禍における国際協力の方向性と大学-JICA連携の可能性について」をテーマに大学、関係機関から約100名が参加し、講演、パネルディスカッションが行われました。新型コロナウイルスによる事業や教育への影響の報告だけでなく、この状況を好機ととらえて、新たな方策を検討、実践していくための意見が出されました。

開会挨拶

JICA萱嶋理事の挨拶において、コロナ禍で途上国の農業や国際協力を取り巻く環境が変わる中、新しいアイディアを用いて国際協力をいかに進めていくか、大学とJICAとの連携の在り方などが検討・実践されることへの期待が寄せられました。加えて「JICA開発大学院連携プログラム」のもと、大学の協力を得て、本年度から農業・農村開発分野のプログラム(アグリネットプログラム)により、留学生の来日が開始した旨の報告がありました。

講演

JICA経済開発部の伊藤次長より、新型コロナウイルスによる途上国農業・農村開発およびJICA事業への影響について説明がありました。さらにコロナ禍においても遠隔で効果的に事業を継続していくことが可能であることが報告され、その実例として、オンラインでの協議を通じた案件の形成状況、遠隔研修参加者の意欲を高める工夫、遠隔のメリットを活かした柔軟なプログラム策定などの事例が紹介されました。

続いて、名古屋大学の山内教授より、JISNAS団体会員の34大学から事前に回答いただいたアンケート結果(注)をもとに、コロナ禍における大学教育、留学生の受入状況が報告され、多くの大学においてオンライン教育の提供が行われていることが共有されました。さらに、名古屋大学ではコロナ禍においても学生の日本または海外への留学、国際交流ニーズに全面的に支援していく予定であるとの発言がありました。
(注)アンケート結果については、JISNASのウェブサイトおよびJISNAS冊子「農学国際協力」においても共有予定。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、名古屋大学の伊藤准教授をモデレーターとして、「コロナ禍における国際協力の方向性と大学-JICA連携の可能性について」をテーマに意見交換が行われました。

JICA経済開発部の牧野部長からは、戦略とアプローチを重視して事業を進めていきたい旨の発言がありました。戦略については、コロナという驚異を契機として農業分野におけるレジリエンス強化支援、気候変動やフードバリューチェーン、DX、農業保険など新しいテーマに取り組んでいく所存であり、JISNASとの連携を強化していきたいこと、またアプローチの観点からは、遠隔と現場でのハイブリッドの協力を進めることが重要であること、JISNASとJICAがこれまでに築いてきた信頼が遠隔における課題や制約を補完することへの期待が寄せられました。

JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室の宮田副室長からは、JICAの新しい取り組みである「JICA Virtual Academy & Network」の構想について紹介がありました。同構想は、デジタルツールを活用して様々な関係者の協働の場を提供することを目指したもので、遠隔でも関係者間のつながりや信頼を維持し、研修等で作成した教材や動画などのコンテンツの蓄積・活用を推進していく旨、説明がありました。

さらに、千葉大学の高垣教授より、2020年度に新設された「千葉大学グローバル人材育成”ENGINE”」プログラムの紹介がありました。同プログラムは、学部・大学院生の全員留学に加え、スマートラーニングの実践、グローバル教育の充実の3本柱で構成されているものです。2021年9月までは海外留学の見合わせが決定しているものの、スマートラーニングにより全学生にオンラインの授業や英語プログラムを提供、オンライン留学のコンテンツの充実化により、バーチャル留学の実施を予定している旨の共有がありました。また、国際協力論の授業では、JICA専門家等の関係者を招き、学生が国際協力の現場やキャリアパスの話を聞くことで、学生の意欲向上につながっている事例紹介がありました。

オンラインは、現場視察よりも参加が容易であり、途上国やJICA関係者の声を直接聞くことができるメリットがあり、JICAが関係者の紹介に協力するなど、国際協力を志す人材育成における大学とJICAのさらなる連携促進についてもパネリストから意見が出されました。

メリット・デメリットをふまえてオンラインをバランスよく活用していくためにどのような配慮が望ましいかとの伊藤准教授からの問いかけに対し、山内教授から、大学院教育や研究指導においては対面でのコミュニケーションの重要性を感じており、分野やレベルに応じてオンラインと対面の効果的な使い分けは、今後の課題である旨の発言がありました。

最後に、JISNASでは本日の意見やアンケートの結果を参考にさせていただきながら、分科会の活動を通じて新たな連携の模索を継続していきたい旨、協調されました。

閉会挨拶

JISNAS運営委員長である九州大学の緒方教授より、オンラインにおける新たなチャレンジに言及しつつ、グローバル化の転換点となった2020年、そして今後に向けて、本日のフォーラムが関係者の国際協力推進の一助となることを期待する閉会挨拶がありました。