セミナー開催報告「アフリカ新興テック ピッチ決勝戦」

掲載日:2021.02.26

イベント |

アフリカ19か国2,713社から選ばれた10社によるピッチ

高い失業率や公共インフラの未整備等、多くの社会課題を抱えるアフリカ。一方で、13憶の人口マーケットを巻き込みながら、最新のテクノロジーを通じて社会課題の解決を図る起業家が多く輩出されており、リープフロッグ(かえる跳び)現象とも呼ばれ注目を集めています。また、Covid-19の世界的な流行は、アフリカを含む世界の社会構造や距離の概念に大きな変革を巻き起こしています。

このような背景から、JICAはポストコロナ時代の革新的なビジネスモデル・テクノロジーを生み出すスタートアップ支援のため、アフリカ地域19か国において、ビジネスプランコンテスト「NINJA(注) Business Plan Competition in response to COVID 19」を実施し、応募総数2,713社の中から10社を選定し、日本経済新聞社との共催にて2021年2月26日に「アフリカ新興テック ピッチ決勝戦」を開催致しました。

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冒頭のパネル討論では「DXが変えるアフリカ」「With Japanの精神で」「SDGsからとらえたアフリカ」の3点をテーマに議論が交わされました。その後、アフリカ発スタートアップ10社による事業プレゼンテーションが行われ、ドローンや衛星を活用した小規模農家向け営農支援プラットフォーム、AIを活用したCovid-19のゲノム解析システム、妊産婦向けの持ち運び可能で低価格な超音波装置など、アフリカならではの社会課題に対応した革新的なビジネスプランが発表されました。

最後に行われた視聴参加者による投票では、優秀企業上位3社が選定され、日本企業8社からは特別賞が提供されました。また、国内外から企業経営者や投資家をはじめとする2000名以上の参加登録があり、アフリカのスタートアップへの関心の高さが伺えました。今後もJICAは、Project NINJAを中心に、With/Afterコロナの環境において、新たなテクノロジーの開発や、既存のテクノロジーを活用したソリューションの提供を目指す、アフリカ・スタートアップの成長支援を推進していきます。

(注)Next Innovation with Japanの略。JICAが推進する起業家支援事業。

概要

イベント名:「アフリカ新興テック ピッチ決勝戦」
主催:独立行政法人国際協力機構(JICA)、株式会社日本経済新聞社
運営協力:Double Feather Partners
日時:2021年2月26日(金)19:00~21:30
参加登録:約2000名
開催方式:OnlineでのZOOM配信、日英仏の同時通訳あり
プログラム:

19:00 開幕挨拶、コメンテーター紹介
19:15 パネル討論「With Japanで考えるアフリカとのパートナーシップ」
19:25 アフリカスタートアップ10社によるピッチ
21:20 視聴参加者による投票による上位3位の決定と、日本企業から特別賞の発表
21:25 コメンテーターによる総括、閉幕挨拶

主な登壇者

コメンテーター

岩井 睦雄氏:公益社団法人 経済同友会 アフリカ開発支援戦略PT委員長/日本たばこ産業株式会社 取締役副会長
渋澤 健氏:シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役/コモンズ投信取締役会長
片井 啓司氏:国際協力機構(JICA) 経済開発部 参事役

モデレータ

下田 敏氏:日本経済新聞社 メディアビジネス企画開発室シニアプロデューサー

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パネル討論の様子。左から下田氏、渋澤氏、岩井氏、片井。

ピッチをしたスタートアップ10社(登壇順)

1.Mr. Menyo Innocent、Mobile Scan Solutions(モバイル・スキャン・ソリューションズ)CEO & Co-Founder、ウガンダ

妊婦の的確な診察のため、ポータブルな超音波装置を開発・販売している。電力供給が不安定なうえ、高額の医療機器を購入するのが困難なウガンダの医療機関や家庭で利用されている。

視聴者投票第一位。副賞として、JICAからは、代表者の日本招聘と日本企業とのマッチング機会を提供。日本経済新聞社からは、英語のデジタルメディアであるNikkei Asiaの年間無料購読5人分が提供される予定です。

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2.Ms. Rose Peter Funja、Agrinfo(アグリンフォ)、Managing Director、タンザニア

ドローンや衛星を活用して農業関連データを収集し、小規模農家の経営を支援するサービスを展開する。データに基づく信用スコアを金融機関に提供し、その信用データに応じて金融機関が種や肥料等を農家に貸し付ける。

視聴者投票第三位。副賞として、JICAからは、代表者の日本招聘と日本企業とのマッチング機会を提供。日本経済新聞社からは、英語のデジタルメディアであるNikkei Asiaの年間無料購読5人分が提供される予定です。

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3.Mr. Jean Claude Gouesse、Moja Ride(モジャ・ライド)CEO、コートジボワール

交通手段の予約から支払いまで可能なアプリ・運賃カードを開発した。コロナ下で非接触型の決済手段を提供するとともに、交通機関の効率的な運賃支払いを実現。

特別賞として、豊田通商株式会社より新株予約権付転換社債の引き受けによる出資が提供される予定です。

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4.Ms. Folake Owodunni、Emergency Response Africa(エマージェンシー・レスポンス・アフリカ)CEO & Co-Founder、ナイジェリア

救急医療体制が未整備なナイジェリアで会員制の緊急医療ケアサービスを展開する。AIを活用した緊急治療の判断システムの導入を検討。

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5.Mr. Bryan Mezue、Lifestores Healthcare(ライフストアズ・ヘルスケア)CEO、ナイジェリア

アフリカにおいて医療の最前線ともいえる薬局のネットワーク化をテクノロジーで実現した。クラウドERPシステムの導入や共通仕入れで偽薬の流通防止や価格の適正化をはかっている。

特別賞としてAsia Africa Investment & Consultingよりメンタリングの機会が提供される予定です。

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6.Mr. Daniel Elliot Kwantwi、TranSoniCa(トランソニカ)CEO、ガーナ

ガーナ版の「SUICA/PASMO」の導入を進める。従業員の窃盗のリスクや現金勘定の必要がないキャッシュレスカードのニーズに着目した。

視聴者投票第二位。副賞として、JICAからは、代表者の日本招聘と日本企業とのマッチング機会を提供。日本経済新聞社からは、英語のデジタルメディアであるNikkei Asiaの年間無料購読5人分が提供される予定です。

特別賞として、楽天株式会社よりメンタリングの機会が提供される予定です。

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7.Mr. Yo Murofushi、And Africa(アンド・アフリカ)CEO & Founder、南アフリカ

電子商取引の荷物の発送・受取りが24時間可能なIoTロッカーを開発した。高額な再配達料金を回避でき、コロナ下での宅配員との接触も避けられる。

特別賞が下記4社から提供されました。
スターリングエンジンジャパン株式会社より、コロナワクチンも運べる極冷ロジボックスが提供される予定です。
アフリカ・キャピタル・パートナーズ合同会社より出資を見据えたMOUの締結を検討されることとなりました。
株式会社ACCESSとは事業連携を見据えたMOUの締結を検討されることとなりました。
株式会社アクセラレータより、経営者マッチングアプリCOLABOを活用したPR支援及び特別取材が提供される予定です。

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8.Mr. Jihed Hannachi、MajestEye(マジェスト・アイ)Co-Founder、チュニジア

人工知能(AI)技術を使い、医療・企業経営管理・メディアなど幅広い分野のシステム、とくに疫病に有効な成分を迅速に特定できるシステムを開発した。新型コロナウイルス対応に関する情報も保健当局や医療研究所に提供する。

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9.Mr. Kevin Kihara、Upepo Technology(ウペポ・テクノロジー)Managing Director、ケニア

安全な水の利用を高めるため、IoTデバイスを活用した水供給の分析データを水道事業者に提供する。漏水などによる損失を防ぎ、水資源を効率的に保全できる。

特別賞として、Double Feather Partnersより150万円相当の現金出資及び350万円相当のコンサルティングサービスの合計500万円相当の出資が提供される予定です。

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10.Mr. Pedro Beirão、Appy People(アッピー・ピープル)CEO & Co-Founder、アンゴラ

病院の予約や薬局での薬販売、その評価ができるアプリを開発・提供している。病院や診療所の情報が不足しているアフリカのニーズに応え、薬などの価格の透明化にも貢献。

特別賞として、株式会社アクセラレータより経営者マッチングアプリCOLABOを活用したPR支援及び特別取材が提供される予定です。

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視聴者投票結果

視聴者投票第一位:Mobile Scan Solutions 通称:M-Scan(ウガンダ)
視聴者投票第二位:TranSoniCa(ガーナ)
視聴者投票第三位:Agrinfo(タンザニア)

副賞として上位3社にJICAからは、代表者の日本招聘と日本企業とのマッチング機会を提供。日本経済新聞社からは、英語のデジタルメディアであるNikkei Asiaの年間無料購読一社当たり5人分が提供される予定です。

視聴者投票で第一位となったM-Scanによる代表挨拶。

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特別賞提供企業一覧

豊田通商株式会社

Moja Ride社(コートジボワール)に5万ドル相当の新株予約権付転換社債の引き受けによる出資。

Mobility 54 Investment SAS社長 豊田通商トヨタアフリカ自動車部 渡邊 剛氏からのコメント:

10社全てに共通する点として、アフリカのそれぞれの産業で抱えている課題にしっかりと向き合い、新しい技術やビジネスモデルで解決するということに対して、強いコミットメントを持って事業を展開していると感じた。我々日本企業も、熱い起業家の方々とWith JAPANの精神で一緒になって取り組んでいきたい。Moja Ride社を選んだ理由は、現在コートジボワールで取り組まれている交通セクター向けの各種システム・サービスと弊社が同国で展開している自動車事業と親和性があるため。今後はMoja Ride社と一緒にアフリカ交通セクターのデジタル化を加速していく。

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楽天株式会社

TranSoniCa社(ガーナ)にメンタリングの機会を提供。

楽天ヨーロッパ アフリカ担当 山中 翔大郎氏からのコメント:

弊社はIT企業で、「イノベーションで世界をエンパワーメントする」をミッションに掲げている。特別賞としては、実際の楽天の事業経験を生かして、執行役員を含むプロフェショナルによるメンタリングの機会を提供して更なる事業の加速化を支援したい。ガーナのTranSoniCa社を選んだ理由は、キャッシュレスカードによる、安心・安全な決済手段を提供できる社会意義は大きいと判断したため。楽天もキャッシュレス事業を国内外で展開しているので、その経験を生かしてTranSoniCa社、ひいてはガーナ社会全体に貢献していきたい。他にも、アフリカでのスタートアップ支援、SDGs達成を目的としたJICAとの包括連携協定などの取り組みを生かして世界の人々へ貢献していく。

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スターリングエンジンジャパン株式会社

And Africa社(南アフリカ)にコロナワクチンも運べる極冷ロジボックスを提供。

代表取締役 山田 耕士氏からのコメント:

スターリングエンジンを使った冷却装置を開発製造している会社です。この極冷ロジボックスは、上は+30度、下はマイナス86度、移動+保管据置型というダブル機能を有しており、生体、コロナワクチン冷凍輸送から食品物流までと幅広い用途に利用可能です。また、家庭用電源、車のシガーソケット電源で稼働し、予備バッテリーを積載、オイルを使わずエンジンが動いているので360度回転させてもエンジンは止まらず、アフリカでのコールドチェーンで活躍できる製品といえます。And Africa社に特別賞を授与した理由は、彼らのラストワンマイル型ビジネスを支援し、冷凍物流を通してアフリカに貢献したいと考えているためです。

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アフリカ・キャピタル・パートナーズ合同会社

And Africa社(南アフリカ)に出資を見据えたMOUの締結を検討。

株式会社ACCESS

And Africa社(南アフリカ)に事業連携を見据えたMOUの締結を検討

株式会社アクセラレータ

And Africa社(南アフリカ)とAppy people社(アンゴラ)に経営者マッチングアプリCOLABOを活用したPR支援及び特別取材を提供。

Double Feather Partners

Upepo Technology社(ケニア)に150万円相当の現金出資及び350万円相当のコンサルティングサービスの合計500万円相当の出資を予定。

Asia Africa Investment & Consulting

Lifestores Healthcare社(ナイジェリア)にメンタリングの機会を提供。