感染症対策を都市計画の視点から見つめなおす。都市・地域開発KMNセミナー「公衆衛生と都市計画について-後藤新平の足跡をたどりながら-」を開催

掲載日:2021.07.15

イベント |

概要

会議名:都市・地域開発ナレッジマネジメントネットワーク(KMN)セミナー「公衆衛生と都市計画について-後藤新平の足跡をたどりながら-」
開催日:2021年7月15日
主催:JICA
場所:JICA本部およびオンラインのハイブリッド開催

主な参加者

基調講演
 越澤明 北海道大学名誉教授
パネリスト
 越澤明 北海道大学名誉教授、長山勝英 アルメックVPI相談役、平岡久和 JICA新型コロナウイルス感染症対策協力推進室副室長、後藤哲司 JICA国際協力専門員(都市・地域開発)/兼司会進行

背景・目的

JICA社会基盤部都市・地域開発グループは、「全世界COVID-19等感染症に対する都市環境改善プログラム形成準備調査」など、コロナ禍の都市への影響や、今後の都市分野における協力方針の検討に関して、複数の調査を実施しています。公衆衛生と都市計画に関する今日の課題を明らかにすることと同様、これまでの歴史から学び、教訓を活かしていくことも重要です。そこで本セミナーは、欧州・日本の公衆衛生に配慮した都市づくりの歴史・教訓を振り返り、特に日本の近代化において本分野で功績を残した後藤新平の取り組みを学ぶことで、その在り方について考える機会を設け、今後の途上国の都市づくりにかかる示唆を得ることを目的として開催されました。

内容

越澤明北海道大学名誉教授から、基調講演「公衆衛生と都市計画について-後藤新平の足跡をたどりながら-」において、欧州・日本の公衆衛生と都市計画の歴史、後藤新平の政策立案・実施の取り組み、他国への日本の都市開発事例紹介などについてご講演いただきました。理想の政策ビジョンを掲げ、一方で現実を絶えず冷静に見極めることの重要性、日本なりの流儀で歴史を活かしながら、現代的なことを組み合わせることで生まれるインパクトなどについても言及いただきました。
その後、越澤名誉教授とともに、都市計画家である長山勝英アルメックVPI相談役、平岡久和JICA新型コロナウイルス感染症対策協力推進室副室長、都市開発分野の経験に長けた後藤哲司JICA国際協力専門員によるパネルディスカッション「途上国への都市計画・開発に向けたメッセージ」を行いました。長山相談役からは、現地の人々の生活に注視し、一番弱い人に届く協力をという明確なメッセージをいただきました。平岡副室長と後藤専門員から、マルチセクトラルアプローチにより、都市計画と公衆衛生それぞれの従事者が少し役割を広げて相互に関わり合いながら、課題に協働して取り組んでいくことの意義が議論されました。
最後に、天田聖JICA社会基盤部長から、越澤名誉教授のお言葉の「思想を抱いて、粘り強く推し進める。人々の暮らしを豊かなものにしていく」ことが都市計画の基本であることを再認識する必要性、さらに、JICAの強みとしての分野を超えたマルチセクトラルな取り組みを続けていくことの重要性がメッセージとして出され、セミナーは終了しました。

本セミナー開催に先立ち、越澤名誉教授は北岡伸一JICA理事長と面談し、後藤新平の帝都復興構想や、19世紀に日本が海外で手掛けたインフラ事業などについて意見交換を行いました。北岡理事長からは、自著「後藤新平 外交とヴィジョン」(中公新書、1988年)執筆にあたって、当時、神奈川県庁に在勤されていた越澤名誉教授に助言を頂いたことへの謝意を述べつつ、後藤新平に代表される日本の経験を基盤としつつ、コロナ禍において病院を核とする保健医療システムの強化を目指す「JICA世界保健医療イニシアティブ」を推進していることなどJICAの取組を紹介しました。

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越澤名誉教授と北岡JICA理事長との記念写真

また、越澤名誉教授から、中国長春市と哈爾浜(ハルビン)市が翻訳・出版した越澤名誉教授の著書をJICAに寄贈いただきました。これらはJICA図書館にて、一般に閲覧が可能です。

参考リンク

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基調講演の様子

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パネルディスカッションの様子

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パネリストの記念写真(左から:長山相談役、越澤名誉教授、後藤専門員、平岡副室長)