オンライントークイベント「コロナ禍を生きる -ヨルダンにおけるシリア難民の今-」の開催報告

掲載日:2021.09.04

イベント |

概要

  • 会議名:コロナ禍を生きる -ヨルダンにおけるシリア難民の今-
  • 開催日:2021年9月4日(土)
  • 主催:JICA
  • 場所:Zoom

主な参加者

  • 松永 晴子(まつなが はるこ)氏(認定NPO法人 国境なき子どもたち)
  • 林 芽衣(はやし めい)氏(Tribalogy 創始者)
  • 小松 由佳(こまつ ゆか)氏(フォトジャーナリスト)

背景・目的

現在、コロナ禍によって世界中で多くの人が厳しい環境に置かれていますが、ヨルダンに住むシリア難民(登録者数:約67万人)もまさに同じ状況です。もともとはシリアにおける戦禍を逃れてヨルダンに来た女性や子どもたちが、パンデミックにより経済的基盤を失う、また遠隔授業についていけず学習に遅れが出るといった新たな困難に直面しています。

本セミナーは、こうした状況において、認定NPO法人「国境なき子どもたち」および社会的企業TribalogyがJICAと協力し実施してきた難民女性や子どもたちへの活動を彼・彼女らの生の声と共にお伝えすることで、シリア危機から10年が経ち、さらにコロナ禍にある中でも、改めてシリア難民の今を知り、思いを馳せ、何かしらのアクションに繋がることを期待して実施されました。

内容

2021年9月4日(土)、オンライントークイベント「コロナ禍を生きる -ヨルダンにおけるシリア難民の今-」がJICA主催(企画・司会進行:JICA中東・欧州部 中東第二課、当日運営:JICA地球ひろば)により実施されました。本イベントは、認定NPO法人「国境なき子どもたち」の松永晴子氏、社会的企業Tribalogy創始者の林芽衣氏、フォトジャーナリストの小松由佳氏より、シリア難民の方々が今現在おかれている"リアル"についてご対談頂くもので、北海道から沖縄まで、幅広い年代の方々150名以上にご参加頂きました。

イベントの冒頭には、松永秀樹JICA中東・欧州部長よりオープニングの挨拶が行われ、2011年以降のシリア危機の概況やJICAによる支援などが説明されました。その後、松永晴子氏より、コロナ禍を都市・難民キャンプで生きる子どもたちへの教育支援、また林芽衣氏からは、難民女性がコロナ禍の難民生活を生き抜く支援、その困難さと希望などについての現地レポートが行われました。

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松永秀樹JICA中東・欧州部長よりオープニングの挨拶

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松永晴子氏による現地レポート

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林芽衣氏による現地レポート

その後は、小松由佳氏を登壇者兼モデレーターとしてお迎えし、パネルディスカッションを実施。避難先で迎えたコロナ禍、生活の変化、シリア危機から10年経った今の帰還に対する考えや故郷への思いについて、長きにわたり支援や取材を行ってきたお三方より多角的な観点で意見交換がなされました。

特に、小松由佳氏は近年トルコに住むシリア難民家族を取材されているため、トルコとヨルダンという異なる国・コミュニティに住むシリア難民の共通点や相違点にも話題がおよびました。いずれの場合も、故郷に帰れぬまま年月が経ち、必死に毎日を生きていることは重なりつつも、母語のアラビア語が通じるヨルダンと通じないトルコでは、生き抜く上での術が異なることなどが挙げられました。

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小松由佳氏を迎えた3者パネルディスカッション

その後の質疑応答では、支援活動を行ううえでのヨルダン人やシリア難民の方々との信頼関係の築き方、難民女性が働きやすい環境をどのように作り出しているか、シリア難民が日々を生きるうえで特に不足しているもの、学校閉鎖・オンライン授業が続く中での子どもたちの学習の遅れに対するフォローの仕方、避難生活が長期化する中で子どもたちのアイデンティティ維持に資する活動はどんなものがあるか、ロックダウン中にキャンプの子どもたちの間で流行っている遊びについてなど、多岐にわたる質問が寄せられ、各登壇者より、日頃のご活動に基づいたお考えを丁寧にご回答いただきました。

長期化する避難生活、さらにコロナ禍という重層的な困難にあるシリア難民の方々に対して、私たちができることは何か。ご登壇者からは、まずは現状を知るところから、そしてそれぞれの立場で考え、何かしらのアクションに繋がることを期待するメッセージが述べられました。JICAは、引き続きホストコミュニティに対する協力事業やシリア人留学生事業など様々なかたちで支援を続け、人間の安全保障の実現に貢献していきます。