「中米独立200周年記念シンポジウム-日本開国150年を振り返る-」を実施しました。

掲載日:2021.09.24

イベント |

1.概要

北アメリカと南アメリカの狭境に位置する中米6か国(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ)は1821年にスペインから独立しました。今年2021年は、その独立から200年という節目の年に当たります。JICAは中米6カ国すべての国に在外拠点を構え、中米地域及び各国とこれまで50年以上にわたり多くの協力を実施してきました。

この記念すべき節目の年に、中米各国の開発やこれからの国造りを一緒に考えようと、2021年9月24日(中米 9月23日)に中米独立200周年記念イベントをWebinarで開催しました。イベントには、グアテマラ、エルサルバドル及びホンジュラスの大学の先生方やJICA緒方貞子平和開発研究所の細野シニアリサーチアドバイザー(元在エルサルバドル日本大使)をパネリストにお迎えしました。

JICAからはまず、日本の明治維新以降の近代化の経験を共有し、次に、パネリストらと一緒に、中米の独立以降の開発と今後の発展について熱い議論を交わしました。

イベントには日本や中米のほかに、ペルーやメキシコなど広く中南米地域から参加を頂きました。

2.イベントプログラム及び主要参加者

実施日時

(日本時間)2021年9月24日 8:00~9:30
(中米時間)2021年9月23日 17:00~18:30

実施媒体

Webinar(Zoom)

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萱島信子JICA理事(ビデオ出演)

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吉田憲JICA中南米部長

1. 開会挨拶 萱島信子 理事

2. ビデオ教材「日本の近代化を知る7章」第1章 明治維新:日本近代化の原点(視聴30分)

3. パネルディスカッション(50分)-司会進行:山口グアテマラ事務所長

  • 1. 日本の近代化からの示唆:緒方貞子平和開発研究所細野昭雄シニアリサーチアドバイザー
  • 2. 中米側パネリストによるコメント ・ホンジュラス国立自治大学 フリオ・セサル・ラウダレス副学長
  • エルサルバドル大学 ネストル・エルナンデス教授
  • グアテマラ ラファエル・ランディバル大学 レンソ・ロサル教授

4. 閉会挨拶 吉田憲 中南米部長

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山口尚孝JICAグアテマラ所長(モデレーター)

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イベント実施メンバー集合写真

3.パネリストからのコメント概要

(1)細野昭雄(JICA緒方研究所シニアリサーチアドバイザー)

・明治維新により武士中心の階級制度が崩壊したことで、実力や能力による人材活用が始まった。明治維新は民主的な改革であり、人材革命でもあったということに注目したい。

・日本には明治維新前から教育に対する強い考えがあり、そのうえで明治維新を迎えたということも重要なポイントである。江戸期には教育の偏りがあったが、明治維新以降、教育制度は拡充され、今に至るまで日本の発展と民主主義は知識層に支えられてきた。

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細野昭雄JICA研究所SRA

(2)フリオ・セサル・ラウダレス副学長(ホンジュラス国立自治大学)

・日本では明治維新以降、他国も巻き込む形で近代化が進んだ。中米においては独立以降、少なからず、人の生活の質の改善はあったが、その発展形態は近年特に後退的であったと言わざるを得ない。

・この独立200周年は、祝うべき節目というよりも中米のこれまでの発展についてより深く分析し、再考される節目となるべき。

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フリオ・ラウダレス教授(ホンジュラス)

(3)レンソ・ロサル教授(ラファエル・ランディバル大学)

・明治維新以降の日本の社会・経済構造の変化プロセスにおいては、従来の日本文化を否定するのではなく、むしろ不可欠な要素として位置づけながら西洋文化を日本社会の中で咀嚼し取り込んでいった。また、長期的視野に立った発展ビジョン(政治・社会的モラル)を持っていたことにも注目する。独立後の中米発展史を再確認する必要がある。

・中米においては、発展を主導する行政機能を強化するとともに、社会・経済に関係する組織を有機的に連携させた包括的・民主的な発展に向けた努力がなされるべき。

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レンソ・ロサル教授(グアテマラ)

(4)ネストル・エルナンデス教授(エルサルバドル大学)

・明治維新のプロセスを概観し、日本においては日本文化というベースに整合させながら西洋の経験が取り込まれていったことがわかった。一方で、中米人としてこれまでの本地域の発展を振り返ると、スペインからの独立以降、現在の政治・社会のシステムは西洋からそのまま取りこまれただけで、発展の基礎に自国文化の尊重が考慮されていたとは言い難く、大きな違いであると感じた。

・歴史は短期的な入れ替わりを繰り返しながら、軍政化等過去の過ちさえも繰り返す可能性を秘めている。持続的で不断の発展のためには、やはり国民の教育が最も重要なことであり、歴史が示唆する危機を未然に回避するための鍵となるだろう。

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ネストル・エルナンデス教授(エルサルバドル)

4.参加者からの主なコメント

・中米でも「集合体としての発展」を目指していかなければならないと思った。

・中米では政府職員の入れ替わりが多く、行政の継続性が低い。これは社会的な弱点であるだけではなく、政府が国の発展を推し進める原動力になれないことに繋がる。

5.おわりに

明治維新という日本近代化の原点を軸に、中米の独立後の開発の歩みと各国の開発状況について振り返る機会となりました。またご参加いただいた各パネリストからは様々な視点で有益なコメントや気づきを得ることができました。独立記念のお祝いムードのなか、独立から200年という歴史の節目において中米の成り立ちやこれから進むべき方向などについて思いを巡らせる良い機会とすることができました。

たくさんのご参加ありがとうございました!