紛争影響地域に平和の定着に向けたヒントを届ける -JICA-UNDP共催ナイジェリア地方行政ワークショップ-

掲載日:2021.10.29

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ナイジェリアは堅調な経済成長を続ける一方、アフリカ最大規模の貧困層を抱える国です。特に、北東部および北部中央地域は、ボコハラムに代表される過激派グループの活動が活発で、住民は誘拐や殺人、待ち伏せ攻撃など日常的にその脅威に晒されており、多くの難民、国内避難民が発生しています。暴力への不安が農業生産や交易、食料へのアクセスを減少させたことで、農業を生業とする多くの世帯を脅かし、また多くの人が家を追われたことにより生計手段や資産をなくし、劣悪な環境での生活を強いられています。更にはコロナ禍による経済的な打撃が加わり、特に脆弱層が深刻な影響を被っています。

2021年10月25~29日の5日間、JICAは国連開発計画(UNDP)と連携し、ナイジェリアの首都・アブジャにて、ナイジェリア北東部および北部中央地域の地方行政官48名を対象にワークショップを開催しました。地方行政官は、住民に一番近いところで住民が必要とする公共サービスを届ける存在であり、住民と共に地域、ひいては国の平和と安定、持続的な発展を直に支える重要な役割を担っています。JICAは2018年から、紛争被害に苦しむナイジェリアの紛争影響地域の地方行政官に対し、日本の経験共有などを通じて、当該地域に平和が定着し、安全なまちづくりが進むことを目指して協力を続けています。

今回のワークショップは、これまでの北東部地域に加え、同じく紛争の影響を被っている北部中央地域も含めた地方行政官の能力を強化し、ナイジェリアの紛争影響地域に対する協力を更に促進することを目的として開催しました。5日間のプログラムを通じて、紛争影響地域における地方行政の役割、日本の地方行政で住民参加を促進する仕組み、平和都市・広島の戦後復興、東広島市の住民参加型計画策定・住民と協働したまちづくりなどについて学ぶとともに、ナイジェリア人有識者による財務管理など実務的なスキルアップも目指しました。プログラムの最後には、学びをどのように自身の自治体に還元するかについて、成果発表会が行われ、「住民に対して責任のある地方行政を目指したい」、「日本のような密なコミュニケーションによる住民と政府の信頼関係の構築方法を地方行政の他のメンバーにも伝えたい」、「どんなに悲惨な状況でも、復興は可能であることを広島の事例から知った。現在ボコハラムの影響で厳しい状況におかれている我々の町を復興して「新しい広島」を作りたい」といった声が聞かれ、今回のワークショップを通じて着実に参加者の意識変容が進んだことが窺われました。

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ナイジェリアの首都・アブジャにナイジェリア北東部および北部中央地域の地方行政官48名が集まりました。

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最終日には、成果発表会が行われました。

本年もコロナ禍のため、日本の講師による講義はオンラインでの実施となりましたが、参加者は熱心に講義を聞き、ディスカッションに参加していました。社会が抱える紛争原因や不安定な治安情勢など、ナイジェリアは日本とは大きく状況は違いますが、住民が平和で安心して暮らせる日が来ることへの願いと平和の定着への強い思いをあらためて確認し、共感することができました。

JICAとUNDPが連携することで、UNDPが持つナイジェリアの地方行政官とのネットワークとJICAの持つ日本国内のリソースを効果的に織り交ぜるプログラムが実現したことも、参加者から好評を得たところ、JICAは今後ともナイジェリアにおける平和構築のパートナーとして、UNDPとの連携を進めることとしています。

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ナイジェリア日本国大使館より松永大使が参加され、参加者に対する激励の言葉と今後の活動への期待を述べられました。

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ワークショップは日本とナイジェリアを繋いで行われました。

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ワークショップを通して得た学びがそれぞれのコミュニティでの今後の活動に繋がることを願っています。