第一回 トルコ版「防災甲子園」の開催 トルコの教員による防災教育教材開発の取り組みを促進

掲載日:2021.11.12

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第一回 トルコ版「防災甲子園」の開催

トルコは、ユーラシアプレート、アフリカプレート及びアラビアプレートが重なり合う複雑な地形に位置しており、日本と同様に地震が多い国と言われています。今年はトルコ東部において2011年に発生した大地震(注1)から10年目の年であり、トルコ政府が定める「防災年間」でもあることから、教員による防災教育教材の更なる開発・普及展開と一般市民への啓もうを目的として、JICAトルコ事務所と土日基金文化センターは、トルコにおいて初となる「防災教育教材開発コンテスト」(別称:トルコ版「防災甲子園」)を開催しました。本コンテストは、国民教育省、内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)、中東工科大学、緊急支援基金等のトルコの関係機関、在トルコ日本大使館及び兵庫県パリ事務所からの協力のもとに実施されています。

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コンテストは、1)就学前児童・小学校部門、2)中学校部門、3)高校部門、4)知的障害児童向け特別教育課程部門の4つの部門から構成され、21県から合計40校の応募がなされました。提案された防災教育教材は、防災に関するクイズとすごろくを掛け合わせた卓上ゲームや、小さな模型を用いた防災シミュレーション、携帯アプリとSNSを連携させた防災動画等、学生たちの興味関心をそそる様々なアイデアが盛り込まれたものでした。これらの提案から審査員が優秀な教材を選定し、11月12日に表彰式が行われました。

表彰式は二部構成で、前半は、JICAトルコ事務所と土日基金文化センターによる防災教育への取り組みについて、JICAトルコ事務所のエミン・オズダマル職員から紹介がなされました。また、トルコの伝統芸能である影絵(カラギョズ)を用いた防災教育劇も実演されました。後半は、各部門において特に優秀と認められた教材について、各審査員から教員に表彰が行われました。

知的障害児童向け特別教育課程部門において最優秀賞を受賞した教員のアイラ・ウイギュンさんは、「自身は1999年の震災により被災し、防災の重要性を認識した。これまで様々な防災教育の工夫を行ってきたが、このコンテストにおいてその活動が評価されて嬉しい」とコメントしました。

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青山健郎 在トルコ大使館次席による冒頭挨拶

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サドゥル・シェンソイ 国民教育省副大臣による冒頭挨拶

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最優秀賞を受けるアイラ・ウイギュンさんと表彰者の大江伸一郎 兵庫県パリ事務所長

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アイラ・ウイギュンさんが考案した防災教育教材

ひょうご友愛基金を活用した共同防災教育プログラム

地震多発国であるトルコでは、1999年8月17日(注2)及び11月12日(注3)、それぞれM7.0を超える大地震が発生し、甚大な人命・経済被害をもたらしました。これらの地震を受けて、兵庫県は義援金「ひょうごトルコ友愛基金」を創設し、アンカラの土日基金文化センターとともに、遺児・孤児に対する育英奨学金寄付事業を実施しました。

「ひょうごトルコ友愛基金」による支援は、2014年10月以降、「ひょうご・トルコ地震防災対策プロジェクト」として引き継がれ、今日に至るまで、兵庫県と土日基金文化センターの連携のもとで、トルコ国内の中学生・高校生や知的障害児童、その家族や教員等を対象とした、防災教育プログラムが多数開催されてきました。JICAトルコ事務所は、職員や帰国研修員がプログラムの企画・実施に協力する等、それらの活動の企画・継続を支援してきました。

同時に、JICAは日本の防災に関する知見や経験をトルコに伝えるために、数多くのプロジェクトを実施してきました。中でも、国民教育省とともに実施した「防災教育プロジェクト」(第一フェーズ:2010~2014年、第二フェーズ:2017~2020年)においては、トルコの教育行政の強みである教員研修を活用した体制強化を目指し、教員研修の体制作り、防災教育の指導教本作成、指導案の検討、全国への普及拡大等の活動を行いました。事業終了後、国民教育省は独自に教員研修プラットフォームを創設し、教員は各地で教材開発を進める等、防災教育ネットワークは継続して拡大しています。

JICAトルコ事務所は、今後も土日基金文化センターと連携し、トルコにおける防災教育活動の普及・展開、市民の防災意識の向上をサポートするとともに、トルコの都市の防災・レジリエンス強化にも貢献していきます。

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エミン・オズダマル職員による防災教育プログラムの紹介

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トルコの伝統芸能 カラギョズを用いた防災教育に関する影絵劇の上映

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教員による防災教育教材の説明を受ける井黒伸宏 トルコ事務所長

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教員の説明に聞き入るイスマイル・バラクオールAFAD副総裁

(注1)ワン地震(別名「トルコ東部地震」)
日時:2011年10月22日13時41分、11月9日21時23分
震源:ワン市
規模:M7.2(10月22日)、M5.6(11月9日)
被害状況等:死者641名、負傷者4,152名
(注)11月9日の地震の際に、救助活動のために現地に滞在していたNPO法人「難民を助ける会」職員の宮崎淳さんが建物の崩壊によって亡くなった。その功績を語り継ぐために、ワン県の自治体は2020年8月、宮崎さんの名を冠した記念公園を設立した。

(注2)マルマラ地震概要(別名「トルコ北西部地震」・「トルコ・コジャエリ地震」等)
日時:1999年8月17日午前3時2分
震源:イズミット市(イスタンブルから東へ約110キロ)
規模:M7.4
被害状況等:死者17,262人、負傷者43,953人
(注)トルコの全GDPの約35%を占める地域で、総人口約6千万人のうち22%が住む地域が被災。トルコ政府国家計画庁によれば同地震の総被害総額は約90~130億ドル。世銀は直接的な被害額を30~65億ドルと試算。

(注3)デュズジェ地震
日時:1999年11月12日18時57分
震源地:デュズジェ市(イスタンブルから東へ約170キロ)
規模:M7.2
被害状況等:死者818名、負傷者約5千名。