アフリカ自動車産業のギアチェンジに向けて有識者が集結!TICAD8に向けたJICA最初のプレイベント-アフリカ自動車産業振興調査ウェビナー開催報告-

掲載日:2022.01.24

イベント |

【TICAD8プレイベント】アフリカ自動車産業振興調査ウェビナー開催報告

今まさにギアチェンジの大転換期にあるアフリカ自動車産業。需要急拡大、生産ニーズの高まり、域内統合(AfCFTA)、CASE(注1)、モビリティスタートアップ、脱炭素等のダイナミックな動向を背景に、有望と期待されるアフリカ自動車産業をつぶさに現状分析し、将来展望を描く「アフリカ地域自動車産業振興に係る情報収集・確認調査(ポストコロナのサプライチェーン・モビリティ改革)」を、JICAは2021年5月から実施してきました。
(注1)Connected, Autonomous, Shared, and Electric

JICAとアフリカ自動車工業会(AAAM)の共催で開催された当ウェビナーでは、この調査の成果を共有すると共に、キーパーソンの皆様によるパネルディスカッションを通じて、アフリカ自動車産業の展望を議論しました。アフリカ各国・日本はじめ世界各地から、約400名のご登録、約300名近くのご参加をいただき、大変多くの質問やコメントが寄せられ、高い関心がうかがわれました。

なお、当イベントは、本年開催予定の第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に関連するJICA最初のTICAD8プレイベントとして開催されました。また、当調査の結果は最終報告書にまとめられ、後日公開される予定です。

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概要

1.日時・参加者

(1)日時:2022年1月24日(月)17:30~19:00
(2)参加:事前登録397人/最大視聴273人
(3)登壇者(敬称略)

1.開会挨拶
  • JICA経済開発部 部長 佐野 景子
  • アフリカ自動車工業会 最高経営責任者 デイヴ・コフィー
2.モデレーター
  • JICA国際協力専門員(民間セクター開発) 本間 徹
  • ボストンコンサルティンググループ シニアパートナー ニコラス・ラン
3.パネリスト
  • アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)事務局 産業開発プリンシパルアドバイザー テンバ・クマロ
  • アフリカ自動車工業会 最高経営責任者 デイヴ・コフィー
  • いすゞ東アフリカ 社長 リタ・カヴァシェ
  • モビリティ54(豊田通商アフリカCVC(注2))最高経営責任者 渡邊 剛
  • ボッシュアフリカ 社長 マルクス・ティル

(注2)Corporate Venture Capital

2.内容

冒頭、JICA佐野経済開発部長より「本調査結果を踏まえ、人口増加に伴ってアフリカの自動車需要が伸びる中、世界的にも大変革期にある自動車産業について、産業振興の観点からJICAとして取り組むべき貢献策を検討していく」と述べた後、共催者であるアフリカ自動車工業会のコフィー氏より「アフリカが世界の自動車セクター関係者にとって最後のフロンティアとなる時が来たが、この実現のためには各国政府関係機関によるリーダーシップが求められる」と挨拶。続いて、調査をリードしたJICA本間国際協力専門員による総合司会のもと、(注3)プレゼン資料に基づいて調査結果を報告し、各パネリストよりアフリカにおける自動車産業関連の現状及び課題が提示された。

(1)調査結果報告
  • 自動車産業を巡る環境も大きく変化(CASE等の革新的な取り組みやAfCFTA、脱炭素等)し、アフリカにおける自動車需要の拡大が予想される中、自動車産業誘致のニーズ及び効果的な誘致のための政策支援ニーズが高まりつつある。
  • アフリカの人口は欧州のおよそ2倍ながら自動車登録台数は9分の1(40台/千人)と、自動車普及率は世界で最も低い水準。伸びしろは大きい。
  • アフリカ地域の新車販売市場は小規模かつ互いに分断されており、需要は特定地域(北アフリカ地域、南アフリカ)に集中。また、自動車登録台数も全体の3分の2が4か国(南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、アルジェリア)に集中。大規模生産拠点は南アフリカとモロッコに限定(他国では小規模組立生産が行われている程度)。
  • 域内統合(AfCFTA)への期待は高いが、原産地規則に係る厳しい要求等から自動車産業へのインパクトは当面は限定的。南アフリカ・モロッコ以外では、自動車部品産業が未成熟であり地域単位でのサプライチェーン構築には5~10年程度を要する。
  • 2030年までに、アフリカでEV車が普及する可能性は低い。他方、EVシフトが進む欧州向け輸出国(南アフリカ、モロッコ)では、脱炭素規制が輸出に影響を与える可能性からグリーン電力(再生可能エネルギー)普及への対応は必須。
  • アフリカ自動車産業の将来像を見据えたキーファクターは、以下1~4のとおり。
(2)パネルディスカッション
  • クマロ氏(AfCFTA事務局):AfCFTAによる13億人の単一市場の形成は生産における規模の経済の観点からも魅力的、バリューチェーン構築と工業化を促進する原産地証明制度等の交渉が進められている。
  • コフィー氏(アフリカ自工会):適切な政策とエコシステムの構築により、新車販売はCOVID-19以前の約100万台から今後15年間で500万台に増加する可能性あり。意欲ある国の便益と発展への道筋が重要で、このためにはAAAMとアフリカ輸出入銀行で提唱するアフリカ域内自動車政策を踏まえた、域内の「有志連合」の形成が重要。
  • カヴァシェ氏(いすゞ東アフリカ):中古車輸入規制等に係る解決策を見出すためには、政府と協力して取り組む民間部門の存在が重要であり、また消費者需要を喚起するためには金融機関(自動車ローン等)の役割も重要。
  • ティル氏(ボッシュアフリカ):地域全体で毎年5,000万台以上の車両を維持する必要があることから、自動車のアフターマーケットにおける技術力向上と雇用機会創出が重要。
  • 渡邊氏(モビリティ54):ケニアで物流デジタルプラットフォームを展開するSendy社(豊田通商が出資)の取り組み及び具体的な連携事例(自動車修理部品の在庫管理効率化によるカスタマーサービス向上)を例示しつつ、特にデジタル化による新たなソリューション及び雇用創出の可能性に言及。

3.記録写真

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パネルディスカッション

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冒頭挨拶(JICA佐野部長)

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モデレーター(JICA本間国際協力専門員)