再エネ拡大と安定供給の両立に向けた、太平洋島嶼国向け地域研修の実施について

掲載日:2022.04.28

イベント |

2022年3月29日から4月28日の約1か月間、太平洋地域の7か国を対象に、ハイブリッド発電システムに関する必要なノウハウ、技術、運用維持管理についての研修(オンライン)を実施しました。対象国は、クック諸島、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガです。この研修は、フィジーを中心とした研修体制構築の一環として行われ、フィジー政府機関、電力会社職員がトレーナー(講師)となり行われました。

現在、JICAでは「太平洋地域ハイブリッド発電システム導入プロジェクト」にて、太平洋地域の5か国、フィジー、ツバル、キリバス、ミクロネシア、マーシャルを対象に、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入状況等を踏まえたディーゼル発電機(以下、DG)の適切かつ経済的な運用・維持管理に加えて、再エネの適切規模での導入・運転を支援し、DGと再エネによるハイブリッド発電システムの導入を推進しています。
このプロジェクトでは、太平洋地域各国の電力会社等のエンジニアの能力向上を図るため、フィジーを中心とした研修体制の構築を目指しています。当初の対象国に加えて、対象国以外の7か国に対しても地域研修を実施しています。対象国以外の7か国向けの研修は2021年3月にも実施しており、今回はその復習と深堀りした内容で実施しました。

また、持続可能な研修体制に向けて、各トレーナーへ研修参加者からの評価実施、研修参加者には研修後のレベルチェックテストを行い、一定の成績者には研修修了証を発行することにより、トレーナーおよび研修参加者の士気高揚に繋がりました。
各トレーナーにおいてはプレゼンテーション実施経験が蓄積され、資料作成においても積極的な情報収集、経験を踏まえた改善を行ない、研修回を重ねる度に研修実施ノウハウが蓄積されています。
この研修の後、研修参加者に実施したアンケートの回答では、研修内容を高く評価して頂き、3回目研修実施への期待や、ハンズオンでの研修実施、講義テーマの追加要望などのコメントを頂きました。さらに講義内容に関する質疑、意見交換を通して自国の課題を共有できるよい機会になったとの声も頂きました。
本プロジェクトでは、全3回の拡大対象国向け地域研修を計画しており、次回の地域研修が最終実施となります。フィジー国での開催実現を願いつつ、持続可能な研修体制での実施に向けて、フィジー側関係機関の研修対応範囲をさらに広げていく予定です。

開催日程

DG研修:2022年3月29日~4月8日(内8日間)
再エネ研修:2022年4月19日~4月28日(内7日間)

開催方法

日本(沖縄、東京)、フィジーおよび拡大対象7か国の参加者所有のパソコンからWeb会議システムZoomで同時接続による遠隔開催
なお、Zoomのホストは沖縄(日本)およびフィジー

参加者

DG研修

フィジーからトレーナー5名、クック諸島から2名、ナウルから2名、パラオから6名、パプアニューギニアから2名、サモアから3名、ソロモン諸島から8名、トンガから3名の総勢31名のエンジニアが研修に参加。

再エネ研修

フィジーからトレーナー9名、クック諸島から3名、ナウルから2名、パラオから10名、パプアニューギニアから2名、サモアから4名、ソロモン諸島から3名、トンガから2名の総勢35名のエンジニアが研修に参加。

研修内容

DG研修 再エネ研修
1日目 ・開講挨拶
・安全について
(オーバーホール作業時の安全・測定(機械・電気))
・開講挨拶
・PVシステムの設置及び試運転
(PVシステムの設置及び試運転の手順(AU/NZ規格))
2日目 ・DGの基礎知識
(DGユーティリティシステム)
(ヒートバランス)
(燃料消費率)
(ガバナー)
(停電からの復旧)
・PVシステムの概要
(パワーコンディショナー:FRT機能/単独運転防止/MPPT制御/スマートインバータ)
(バッテリーシステム:種類、特性、コスト、デザイン、インバーターなど)
(パフォーマンスレシオ/設備利用率/稼働率)
・再エネ統合計画
(フィジーにおける再エネ推進策)
(固定価格買取制度(FIT)/ネットメータリング(NEM))
3日目 ・DGの基礎知識
(DG(電気)の主要設備)
・DGの運用
(需給管理)
(DG開発計画)
・再エネ統合計画
(グリッドコード)
(保護システム/電力品質/周波数/電圧制御範囲)
4日目 ・DGの運用
(DG経済負荷配分システム(EDC))
(経済発電機運用)
・DGメンテナンス
(発電所の保守・点検管理)
(OH作業の準備/安全/タグ/稼働時間/検査種類の概要/スペアパーツ)
・再エネ統合計画
(システム安定化)
(グリッドフォーミングインバーター/慣性力)
・PVシステム設計
(基本設計(連系点の検討/PV発電量推計演習/概算費用見積/基本仕様書作成))
5日目 ・DGメンテナンス(電気)
(測定器や専用工具の使用方法)
・DGメンテナンス(機械)
(シリンダーヘッド)
(その他設備)
・PVシステム設計
(計画段階)
(計画案/現地調査/関連省庁および電力会社との協議/グリッド接続の技術要件(AU/NZ規格))
・PVシステム設計
(詳細設計)
(PVアレイの設計(演習))
6日目 ・DGメンテナンス(機械)
(シリンダーライナー、ピストン、カムシャフト)
(その他設備)
・PVシステムの概要
(フィジーの離島でのPV統合計画)
(GGGI(Global Green Growth Institute)が資金提供するEV調査の紹介)
・PVシステムメンテナンス
(PV設備検査時の測定器を使用した測定(セルラインチェッカー、ストリングトレーサー、絶縁抵抗測定等))
7日目 ・DGメンテナンス(電気)
(DGのメンテナンス)
(電気設備の点検)
・PVシステムメンテナンス
(点検シート)
(メンテナンス記録)
・PVシステムメンテナンス
(メンテナンス管理)
(メンテナンス方法(スタッフ、構成、年間予算計画、メンテナンスレポート))
・閉講挨拶
8日目 ・DGメンテナンス
(オーバーホールプロセス)
(オーバーホール管理)
・閉講挨拶

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EFL(Energy Fiji Limited、フィジー電力会社)総務・広報マネージャーKarunesh Rao氏による開講挨拶

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研修参加の様子

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フィジーのトレーナーによる講義の様子

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フィジーのトレーナーによる講義の様子

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意見交換の様子(チャット機能を活用)

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日本からの研修サポートの様子