第3回開発銀行サミット(Finance in Commonサミット)-武藤上級審議役がグリーンで質の高いインフラ整備について発信-

掲載日:2022.10.20

イベント |

概要

  • イベント:第3回開発銀行サミット(Finance in Commonサミット)
  • 日時:2022年10月18~20日
  • 共催:欧州投資銀行(EIB)、アフリカ開発銀行(AfDB)
  • 後援・協賛:フランス開発庁(AFD)、イタリア預託貸付公庫(CDP)、欧州評議会開発銀行(CEB)
  • 場所:コートジボワール・アビジャン

主な参加者

コートジボワール首相、AfDB総裁、AFD総裁、開発銀行、国際機関、市民社会から約900名が参加(オンラインを加えると1,900名以上が参加)。国連副事務総長、IMF専務理事、AIIB総裁等がビデオメッセージを寄せました。

背景・目的

開発銀行サミットは、約522の開発銀行が一同に会し、気候変動達成やSDGs達成に向けた開発銀行の役割を議論することを目的としています。第1回開発銀行サミットは、2020年にAFD総裁が国際開発金融クラブ(IDFC)議長として主導し、開催しました。今回は初の対面、初のアフリカでの開催でした。

本会合の全体テーマは、本年11月の気候変動枠組条約COP27を見据え、「持続可能な回復のための、グリーンで公正な移行への加速(Accelerating Green and Just Transitions for a Sustainable Recovery)」。複合危機の下でパリ協定やSDGs達成の遅れが懸念される中で、開発銀行が担うべき役割や、相互の連携、民間資金動員等を幅広く議論するため、20のテーマ別セッションが開催されました。武藤めぐみ上級審議役は、ハイレベルイベント「持続可能なインパクト発現に向けたグリーンで質の高いインフラ開発(Building Green and Quality Infrastructure for Sustainable Impact)」に、パネリストの一人として登壇しました。

ハイレベルイベントの概要

グリーンで質の高いインフラ整備は開発途上国の持続的な発展のためには必要不可欠なものの、質の高さはコストにつながる可能性もあります。本イベントではパネリストがインフラの計画や資金協力に関し開発銀行の貢献のあり方を議論しました。

JICA武藤上級審議役からは、気候変動適応の事例としてJICAのフィリピンにおける防災支援の取り組みを紹介しました。JICAは1980年代から洪水対策のためのインフラ整備を支援するとともに、中央政府による河川管理や堤防の設計、地方自治体による住民移転等に係る能力強化を支援しました。その結果、フィリピン内部で気候変動への適応の必要性や、住民移転等はコストではなく人々を守るための行動との意識が醸成されました。そして、災害リスク管理計画、予防策への事前投資等を通じた災害に強い社会づくりが積極的に推進されるよう変化しました。このことを受けて、政府の政策、人々の行動、コミュニティなど社会全体を変革(transform)させる核となるプロジェクトを見極め、支援する重要性を強調しました。

また、民間資金の触媒・動員に関しては、米国の保証と円借款とが協調して地場銀行融資を動員した地方水道区支援を挙げ、信用力のある水道区とそうでないものを見極め、前者には民間資金を動員し、後者の基盤が弱い水道区に政府支援を重点的に投入するなど、全体として脆弱な貧困層にも目が行き届く制度設計をしたことを紹介しました。

この他、WWFは、生態系が豊かな地域とインフラニーズの高い地域は重複する傾向にあり、生物多様性への負の影響を抑制するためのツールの活用(mitigation pyramid)を呼びかけました。

また欧州復興開発銀行(EBRD)は、持続可能なインフラ開発のためには環境やジェンダー等に関する高い要件を設定、遵守することが必要とし、開発を加速するために国際機関と連携した効果的なツールの必要性を指摘しました。

AfDBはアフリカ域内連結性強化への取り組みを挙げ、インフラ整備のみならず、政策対話やOne Stop Border Postなどの能力強化支援など、総合的な取り組みが重要と強調しました。

さらに、開発銀行の資金の触媒機能を活かして民間資金を引き出すため、AFDは民間企業のリスク軽減のための保証や投融資の必要性を指摘しました。

最後に、グリーンで質の高いインフラ整備のためには、地球・政策・組織・人などの全体を捉えて包括的なアプローチを検討し、開発銀行が民間資金の触媒・動員をリードしていくことが必要であると確認してイベントが締めくくられました。

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ハイレベルイベントのパネリストたち

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JICAのフィリピンでの協力を紹介する武藤上級審議役

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サミットには開発銀行や参加機関の総裁・機関長が出席