鶴岡公二 元駐英日本国大使によるエチオピア・ジブチにおけるJICAチェア特別講義の実施

掲載日:2022.11.13

イベント |

概要

開催日:2022年11月11日(エチオピア)、11月13日(ジブチ)
場所:アディスアベバ大学(エチオピア・アディスアベバ市)、ジブチ外交研究所(ジブチ・ジブチ市)
主な参加者:
鶴岡公二 元駐英日本国大使
【エチオピア】アディスアベバ大学Emebet Mulugeta副学長、伊藤恭子 在エチオピア日本国大使、堀内俊彦アフリカ連合日本政府代表部大使
【ジブチ】ジブチ外交研究所Mohamed Abdoulkader Moussa所長、ジブチ外務国際協力省Mahamoud Ali Youssouf大臣、大塚海夫 在ジブチ日本国大使

背景・目的

2022年11月11日(金)、鶴岡公二 元駐英日本国大使が、エチオピア アディスアベバ大学にて、同大学学生・教官及び政府関係者ら計111名を対象に「JICAチェア特別講義」を実施しました。

アディスアベバ大学におけるJICAチェア特別講義は今回で3回目となります。同国は国内の平和構築の最中にあり、国際社会との関係再構築においても重要な局面に差し掛かっていることから、今回、外交官としての豊富な実務経験及び政策研究大学院大学での教授経験を有する鶴岡氏により、江戸時代以降の日本の歴史も振り返りながら第二次世界大戦後の日本外交についての講義を実施いただきました。

さらに11月13日(日)、ジブチ外交研究所において、同研究所の若手外交官及び政府関係者ら計51名を対象に同様の講義を実施しました。

ジブチでは今回が初めてのJICAチェア講義となります。同研究所は外交官等の能力強化を所掌しており、今回の講義は日本の経験をもとにジブチの外交政策等の在り方を考える機会となり、参加者より好評を博しました。

また、両機関では併せて日本財団「Read Japan Project」との連携による図書寄贈式が実施され、寄贈図書は両国の日本研究等に活用されます。

プログラムの内容

アディスアベバ大学:

(1)JICAチェア趣旨説明(JICAエチオピア事務所 森原克樹所長)
(2)開会挨拶(アディスアベバ大学 Emebet Mulugeta副学長、在エチオピア大使館 伊藤恭子大使)
(3)日本財団図書寄贈式(伊藤恭子大使)
(4)特別講義「激動の世界における日本の外交」(鶴岡公二 元駐英日本国大使)
(5)質疑応答、ディスカッション
(6)閉会挨拶(アディスアベバ大学 Yonas Ashene政治・国際関係学部長)

ジブチ外交研究所:

(1)開会挨拶(ジブチ外交研究所Mohamed Abdoulkader Moussa所長)
(2)JICAチェア趣旨説明(金田所長)
(3)祝辞(大塚海夫駐ジブチ大使、ジブチ外務国際協力省Mahamoud Ali Youssouf大臣)
(4)日本財団図書寄贈式
(5)講義「激動の世界における日本の外交」(鶴岡公二元駐英大使)
(6)質疑応答、ディスカッション
(7)閉会挨拶(ジブチ外交研究所Mohamed Abdoulkader Moussa所長)

講義・質疑応答の概要

鶴岡氏の講義では、第二次世界大戦後の国際秩序の中で、日本が非西欧諸国として如何なる外交上の苦難を乗り越え戦後わずか20年で国際社会への復帰を果たしたか、かかる苦難の中にあっても如何に誠実にルールに基づく国際秩序を一貫して尊重してきたか、外交官としての自身の経験を交えつつ説明がありました。さらに、ルールに基づく国際秩序の維持・発展に向け、建設的に関与する姿勢を皆が持つこと、世界の平和と安定における人への投資・人間の安全保障の重要性等が強調されました。

【エチオピア】「日本は平和主義やルールに基づく国際秩序の尊重等をどうやって達成したのか」、「国際社会における日本の役割は」等の質問に対し、鶴岡氏から、理想を皆で共有して少しずつでもそこに近づく努力を地道に積み重ねる必要があること、成果を出す責任はグローバルコミュニティ全体が負っており、成果が出ていないのであれば原因を突き止めて皆でそれを解決する努力が必要であること、そのためには圧力ではなく対等なパートナーシップが必要であり、国の多様性の尊重や歴史を誠実に見つめ反省する姿勢を各国が持つことが重要であること、JICAの地道なアフリカ協力や30年続けているTICADも上記諸点のような精神を反映していること等を、過去の国連安保理改革に向けた交渉の経験等を交えつつ回答されました。

【ジブチ】鶴岡氏は、小国や中規模国にとってこそ外交は重要であること、特に日本は国際平和の維持に最大のプライオリティを置いて外交を推進してきたことを自身の経験や歴史を振り返りながら説明されました。講義後、参加者からは外交における女性の活躍、ウクライナ戦争における日本の立場、自国の利益を守るために必要な外交能力など、多様な質問が寄せられました。鶴岡氏は女性の活躍に関し、例えばアジア諸国との貿易交渉の場で、相手国側は全員女性ということもあったが日本はまだまだ改善の余地があるとし、ジブチの会場に集まった女性の多さに感心し、外交における女性の活躍推進について激励がありました。また、ウクライナ戦争に関し、違反を許容すると更なる違反、ひいては戦争に発展してしまうため、国際法違反に対しては国際社会で一致してそれを許さないという姿勢で臨まなければならないとの話がありました。必要な外交能力については、「誠実さ(Honesty)」が要諦であり、100%でなくとも半歩でも前進すれば良しとして信頼を構築し、積み重ねていくことが重要との回答がなされました。

JICAは今後も両国との信頼関係構築を重視し、人材育成支援を展開していきます。

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鶴岡大使とアディスアベバ大学・Yonas政治・国際関係学部長によるディスカッションセッション

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伊藤恭子大使からEmebet Mulugeta副学長への日本財団図書寄贈式

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ジブチ外交研究所における開会式の様子

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ジブチ外交研究所前での集合写真