日本ASEAN友好協力50周年記念シンポジウム ~次の50年の新たなパートナーシップ構築に向けて~を開催!

掲載日:2023.12.14

イベント |

概要

イベント:日本ASEAN友好協力50周年記念シンポジウム~次の50年の新たなパートナーシップ構築に向けて~
日時:2023年11月9日(木)
場所:JICA市ヶ谷ビル(緒方貞子平和開発研究所)

主な参加者

学生、各国在京大使館関係者、アカデミア、民間企業、メディア関係者等、100名超が聴衆として参加

背景・目的

今年は日本ASEAN友好協力50周年の節目の年であり、12月16日から18日にかけて日ASEAN特別首脳会議が行われます。この機会を捉えて、日本・ASEAN地域から第一線で活躍する学識者・実務家を迎え、ASEAN地域におけるこれまでの日本の協力の意義を振り返るとともに、日本国内の課題や日本・ASEANを取り巻く環境の変化、今後のより対等なパートナーシップの構築について議論するシンポジウムを実施しました。

シンポジウム登壇者(前列中央・田中理事長 )

シンポジウム登壇者(前列中央・田中理事長 )

内容

開会セッション

廿枝理事による開会挨拶の後、カオ・キムホンASEAN事務総長によるビデオメッセージが紹介されました。メッセージでは、長年にわたる日本の対ASEAN協力への謝意が述べられるとともに、日・ASEANの「心と心」の繋がりを強める交流の取組及び幅広い分野における日ASEAN協力の促進への期待が表明されました。

カオ・キムホンASEAN事務総長によるビデオメッセージ

カオ・キムホンASEAN事務総長によるビデオメッセージ

カオASEAN事務総長のメッセージに続き、JICA田中理事長が基調講演を行いました。田中理事長の基調講演では、JICAのASEAN地域におけるインフラ整備や人造り協力の事例を紹介しつつ、日ASEANの関係を、福田ドクトリンの意義等を含めて振り返るとともに、冷戦終結後に東南アジア全域の地域共同体へと発展し、更に存在感を高めつつあるASEANは日本にとって地球規模課題の解決に取り組む重要なパートナーであることや、発展するASEANから貪欲に学び、深い対話を行い、共に前進していくことの重要性について述べました。

田中理事長による基調講演

田中理事長による基調講演

第1パネルセッション「ASEANとJICA:これまでの50年、次の50年」

政策研究大学院大学(GRIPS)・大野泉教授をモデレーターとして、神奈川大学・大庭三枝教授、東京大学・佐藤仁教授、タマサート大学・シリポン・ワチャワルク教授、インドネシア戦略国際問題研究所(CSIS)・ヨセ・リザル・ダムリ所長をパネリストとして迎え、50年以上にわたるJICAの協力がASEAN諸国にもたらしたものは何か、将来の日本と東南アジアとの関係を見据えJICA事業はどう変容するべきか、日本がASEAN諸国から学ぶべきものは何かについて、活発な議論が行われました。
パネリストからは、今日のASEAN発展におけるJICAの貢献を多としつつ、今やASEAN地域にとって開発パートナーは日本だけでなく、米・中・韓・豪・NZ・湾岸諸国やASEAN域内他国など多数あり、その中で日本がどう協力していくかが重要との認識が示されました。そして、ASEANの強みである多様性・柔軟性をいかしつつ、ローカルナレッジと最新技術を組み合わせることが共創のために有効であることが述べられました。また、日本の若い世代のASEAN地域に関する基礎知識を高め相互交流を強化する必要性や、ASEAN諸国が域内の格差是正を含め南南協力を推進しつつあること、更に連結性強化を通じた経済統合の推進など地域全体の視点を強化する必要性が示されました。
今後のODAのありかたについて、人間中心の開発や人間の安全保障は重要でありODA自体が安全保障的性格を強めることには留意が必要である一方、ASEAN域内において法に基づいた秩序は重要との意見がありました。そして日本のODAはASEAN発展のJump-Startを助けてきたが、今後はGX等の変革のJump-Startを促し、Transitionをもたらすべきである点が指摘されました。また、JICAの協力を政府間ベースだけでなく、カウンターパートを地域コミュニティや中間的組織にも拡大したり、複数国にまたがる取組も視野にいれるなど新しいメカニズムが必要である等の提言がなされました。
株式会社国際開発ジャーナル社・荒木光弥顧問からは、パネルディスカッションでの議論を踏まえ、日本がASEANに貢献してきた重要な点として、工業化促進、人づくり、高等教育人材支援等が挙げられ、全体の総括として、世界情勢が変化する中でのJICAのアプローチの変化の必要性やパートナーシップの範囲の拡大(多様化、複雑化)、南南協力における日本の役割や若い世代の人的交流の拡大の重要性が述べられるとともに、JICAによる共創プロジェクト創出への期待が示されました。

第1パネルセッションの様子

第1パネルセッションの様子

第2パネルセッション「ASEANと日本:2073年から今を振り返る」

セッションの冒頭、JICA緒方貞子平和開発研究所の峯所長が「50年後の東南アジアと日本」をテーマに講演を行い、人口統計学のデータを用いて2073年までの東南アジアと日本の人口の変化を示し、東南アジアは、成熟しつつある「日本・中国」の型と、成長しつつある「インド・アフリカ」の型の間で、多様な姿を見せていること等が紹介されました。

峯所長による講演

峯所長による講演

また、パネルディスカッションでは、JICA東南アジア・大洋州部の中島洸潤職員によるモデレーターのもと、50年後から2023年の今を「振り返る」ことを仮想し、その上で、日本とASEANの未来のために今、どのような行動をとるべきかをテーマに、各界で活躍するエキスパート並びにJICAの若手職員をパネリストに迎え、多角的な視点による議論が行われました。
マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンの堀井摩耶シニアパートナーからは、50年後のASEAN全体のGDPは日本の3、4倍に成長する見込みであり、経済規模で立場が逆転し、日本がASEANから人材やマーケットなどビジネスの面で恩恵を受ける時代が到来することが紹介されました。また、テクノロジー、イノベーションの推進、不公平・不公正などの社会課題の解決において日ASEANの協働の余地があることについても共有がなされました。
インスタリム株式会社の徳島泰代表取締役・CEOからは、ASEANと日本は既にフェアで水平的かつイコールの関係になっていることが述べられ、今後更に複雑化や多様化するASEANと日本の社会課題解決における民間企業や起業家の役割の拡大や日ASEAN一体となった社会の形成の必要性について強調されました。
ESUHAIのレ・ロン・ソンファウンダー・CEOは、日本の人や文化を大切にする人材育成を評価し、日ASEANの関係性の変化を人間の人生に例え、ASEANの成長・自立により今後は成熟した関係に入ることが述べられたとともに、幅広い世代がその国の文化や語学を理解することで、より心が通じ合えるような社会の実現について期待が示されました。
JICAガバナンス・平和構築部の堀田さくら職員からは、今後、日本が周りの国々から選ばれるために、必死に努力をする必要に迫られる時代が到来し、日ASEANの人々が共に暮らし相互に往来する中での必要な意識の転換、双方の文化や生活様式への理解促進等の重要性を述べました。
朝日新聞の藤谷健シニアエディターからは、ASEANの急速な情報の流通や自由化の進展について述べられ、顕在化する社会課題解決にテクノロジーの力を発揮していく必要性が強調されました。また、50年後も協働していくために、課題解決策の明確化やビジョンの共有の重要性について示されたとともに、協力の本質はハートとハートの繋がりであり、日ASEANの関係構築のみならず、中韓含むアジアの周辺国を含めた良好な関係性構築の重要性が述べられました。
最後にシンポジウムに参加した学生や若手研究者から、「ASEANとの『人と人とのつながりがきわめて重要』という点が大変印象に残った。歴史的・地理的背景もあり、ASEANと日本が一緒に大洋州諸国へ支援を行うことが必要ではないか。」、「日本の人口が激減し、外国人材が増加する今後の50年において、大きな環境変化が起こることを知らずにいる人が多いが、多様性を保ちながら調和を進めているASEANから日本が学ぶことは多い。」等のコメントが寄せられました。

第2パネルセッションの様子

第2パネルセッションの様子