【COP28サイドイベント】東南アジアの脱炭素化:ネット・ゼロ実現における民間企業と開発金融機関(DFI)の役割

掲載日:2024.01.16

イベント |

報告者

髙橋 良輔
企画部
調査役

概要

開催日: 2023年12月6日
主催: JICA 共催:PT Sarana Multi Infrastruktur(PT SMI)
会場名(パビリオン名):IDFCブース

登壇者

武藤 めぐみ
JICA
Chief Sustainability Officer (CSO)

エドウィン・シャフルザド
インドネシアインフラ金融公社(PT-SMI)
総裁

福田 幸司
パリ協定に係る「自国が決定する貢献(NDC)」実施支援プロジェクト
総括

グエン・ニャット・ハ・チ*
ドラゴン・キャピタル
ESGマネージャー

山中 美紀
ダイキン工業
工業CSR・地球環境センター担当部長

ルオン・クアン・フイ
ベトナム国天然資源環境省気候変動局
GHG排出削減・オゾン層保護課 課長

河野 正道
三菱UFJ銀行
顧問

プラダナ・ムルティ
インドネシアインフラ金融公社(PT-SMI)
リスク管理部長

太田 浩
第一生命
経営企画ユニット サステナビリティ推進室 フェロー

松本 千賀子
三井住友信託銀行
執行役員

背景・目的

  • 各国のネット・ゼロに向けたコミットメントを受けて、多くの国において、着実な実施のための環境整備を行っています。
  • 本イベントでは、急速に成長する東南アジアに焦点を当て、政府関係者、開発金融機関、民間企業がネット・ゼロに向けた取り組みについて議論しました。

内容

  • 本イベントは2部構成で、第1部では「ネット・ゼロに向けた民間セクターの関与と投資に関する各国での経験と現状」、第2部では「金融機関の役割」を議題としてパネルディスカッションを行いました。
  • 開会挨拶では、JICAの武藤CSOより、インドネシアやベトナムのように難しい脱炭素に挑戦する国に対して、ファイナンス側がどう歩み寄れるか、多様な主体による連携が重要であるとしました。また、PT SMIのエドウィン・シャフルザド総裁はネット・ゼロに向けた取組の先頭に立つとしました。
  • 第1部のパネルディスカッションでは、モデレーターを務めた福田総括が東南アジアにおけるネット・ゼロに向けた取組等を説明した上で議論が進みました。ダイキンの山中部長はダイキンが2050年のカーボンニュートラル達成を目指すと説明した上で、高効率のエアコンによりエネルギー消費の半減が期待出来るとしました。ドラゴン・キャピタルのグエン・ニャット・ハ・チESGマネージャーはTCFD提言を踏まえポートフォリオの気候関連リスク分析を行っていると説明した一方、事業の評価・検証・投資家側のESG基準とのギャップに課題があるとしました。最後に、ベトナム天然資源環境省のルオン・クアン・フイ課長は過去20年でベトナムでは再生可能エネルギーが急拡大したとした上で、トランジションは公正に進む必要があり、事業運営のためのキャパシティ強化の重要性を指摘しました。
  • 第2部のパネルディスカッションでは、モデレーターを務めた三菱UFG銀行の河野顧問が低炭素事業への投資を5倍に増やす必要があるという推計やバンカビリティに係る議論を紹介し、議論が進みました。三井住友信託銀行の松本執行役員はインパクト・エクイティ投資を実施していることを紹介した上で、人材を含めた体制整備や各国政府によるトランジションに向けた政策策定が課題と指摘しました。また、太陽光パネルのリース事業、森林ファンドへの出資の事例が紹介されました。第一生命の太田フェローは世界銀行が設立した民間セクター投資ラボに参加しており、保険や証券化等のスキーム等を通じたリスク共有の重要性を指摘しました。PT SMIのプラダナ・ムルティ課長は、PT SMIが2010年の再生可能エネルギー事業支援に始まり、GCFの認証機関としての承認、ブレンデッド・ファイナンスのプラットフォーム創設等の取組が進んでいるとしました。最後に、JICAの武藤CSOは、JICAが技術協力と資金協力を組み合わせる数少ない開発金融機関であり、途上国と先進国ファイナンスコミュニティをつなげる役割があるとした上で、JICAのアジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グループへの正式参画を表明しました。

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登壇者集合写真

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パネルディスカッションの様子

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武藤CSO(最高サステナビリティ責任者, JICA)による開会挨拶