Commonwealth事務局主催IMF本部イベント「持続可能でレジリエントな開発のための財政政策の選択肢」-武藤上級審議役が登壇-

掲載日:2023.04.13

イベント |

概要

会議名:IMF本部イベント「持続可能でレジリエントな開発のための財政政策の選択肢」
開催日:2023年4月13日
主催:Commonwealth事務局
場所:アメリカ合衆国ワシントンD.C. IMF本部

主な参加者

エティシャム・アフマッドLSE教授(元IMFシニアアドバイザー)、インダーミット・ギル世界銀行チーフエコノミスト、ヴィト・タンジIMF財政局元局長、武藤めぐみJICA上級審議役等

背景・目的

IMF世銀春季会合のサイドイベントの一つとして、コモンウェルス事務局(注)により「持続可能でレジリエントな開発のための財政政策の選択肢」(Fiscal Policy Options for Sustainable and Resilient Development)をテーマとしたセミナーが開催されました。本セミナーでは、複合危機下で、特に小島嶼開発途上国(SIDS)や後発開発途上国(LDC)は、他に比べて過度な負の影響を受けており、その中でも持続可能でレジリエントな開発を目指すための開発金融及び各国における財政政策のあり方について議論が行われ、武藤めぐみ上級審議役がパネリストの一人として登壇しました。

内容

冒頭の基調講演において、エティシャム・アフマッドLSE教授(元IMFシニアアドバイザー)は、複合危機下における持続可能でレジリエントな開発の実現には、市場だけでなく自然・人的・社会資本、所得格差のあり方にも配慮した投資判断が必要、また、政策デザインの中で不確実性が考慮されておらず、従来の一人当たり所得基準で譲許的資金のアクセスを決めるのは実態ニーズに即していないと問題提起しました。また、途上国各国においては、開発資金を効果的に活用し、特に国内資源動員が重要であることを指摘しました。気候変動と公正な移行に対応したインフラ整備・防災等のためには、地方レベルでのレジリエンスの獲得のため中央・地方レベルを通じて的確に設計された税制や財政移転ルール等のガバナンスが重要であり、民間資金へのアクセスやデジタル化もカギとなることを提言しました。

パネルディスカッションにおいて、ヒギヌス・ジーン・レオン カリブ開発銀行(CDB)総裁は、島嶼国共通の課題として、災害の影響を受けやすく復興に要する期間が長いこと、それも要因となり高い公的債務残高を抱えており、これら不透明性が民間投資の足枷となっていることを説明しました。包括的なレジリエンス強化に向け、各国の財政健全化努力に加え、債務救済の必要性を主張しました。

インダーミット・ギル世界銀行チーフエコノミストは、低所得国においては、経済全体に占めるインフォーマルセクターのシェアの大きさなどから税制を通じた再配分効果が限られるとして、危機対応や長期的な財政政策のあり方も先進国と異なるとした上で、複合リスクが貧困や脆弱性に与える影響についてインドの最新分析からの教訓を紹介しました。

ヴィト・タンジIMF財政局元局長は、政策立案者は過去の発生確率から予測できる範囲でのリスク対応に比し気候変動やパンデミック等の不確実性への対応をなおざりにし続けていること、気候変動など国際公共財を念頭に、他国への影響を鑑みない国内政策を実施するなどの過誤を犯しがちであるとし、不確実性を考慮した新しい政策枠組みの必要性を提言しました。

JICA武藤上級審議役は、財政政策を通じたレジリエンス向上の事例としてフィリピンの自然災害に対するマクロ経済運営・リスクファイナンス戦略を紹介しました。JICAは、2013年のスーパー台風Haiyanの際に「災害復旧スタンド・バイ借款」を供与し、譲許的ソブリン融資による流動性供給を通じて経済成長のモメンタムを維持した上で、政策マトリックスや円借款事業を通じ、仙台防災枠組を基に、洪水対策インフラ整備、河川単位の防災計画づくり、地方自治体の能力強化等を通じて事前防災投資にも取り組んできたことを説明しました。

セミナー登壇者たち

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