仙台防災枠組中間評価ハイレベル会合『強靭かつ持続可能な将来に向けた防災投資促進のための各国政府の役割』セッション開催

掲載日:2023.05.18

イベント |

概要

イベント:仙台防災枠組中間評価ハイレベル会合におけるRisk Reduction Hubセッション
日時:2023年5月18日(木)8:15~9:45
場所:国連本部(ニューヨーク)第7カンファレンスホール

主な参加者

中野英幸(内閣府大臣政務官)、水鳥真美(国連事務総長特別代表(防災担当)兼国連防災機関(UNDRR)長)、Dr. Pramod Kumar Mishra(Principal Secretary to the Prime Minister、インド)、Mr. Wolnei Wolff Barreiros(National Secretary of Civilian Protection and Defense、ブラジル)、Mr. Kamal Kishore(Member Secretary, National Disaster Management Authority、インド)、村上威夫(内閣府防災参事官)、Ms. Soko Vasiti(Director, National Disaster Management Office、フィジー)、Dr. Raditya Jati Deputy Minister, System and Strategy, Indonesian National Disaster Management Authority (BNPB)、インドネシア)、Dr. Kawol Dhananjay(Acting Chief Executive Officer, Ministry of Local Government and Disaster Risk Management、モーリシャス)、Mr. Enrique Guevara Ortiz, Director General, National Center for Disaster Prevention、メキシコ)、西川智(JICA国際協力専門員)

背景・目的

複合的なグローバル危機の時代において、気候変動の影響による災害リスクも高まりを見せています。多くの国が急速な経済発展を遂げる一方で、近年災害による経済被害も上昇傾向にあります。仙台防災枠組のパラ19において防災は各国の一義的な責任の下で対策が実施される、と規定されているように、持続的な経済成長の妨げにもなりかねない災害リスクに対して、各国政府の果たす役割や継続的な災害リスク削減の取組みがますます求められつつあります。近年グローバルサウスと呼ばれる国々だけでなく、G7やG20関係国も防災を重要なテーマと捉えてより効果的な対策や国家間の連携を模索しています。
本セッションでは、日本政府(G7議長国)・インド政府(G20議長国)・JICA共催のもと、各国政府の災害リスク削減の取組みに焦点を当てつつ、仙台防災枠組の中でも特に重要な事前防災投資の進捗状況や課題について議論を行いました。

内容

本セッションでは、中野英幸内閣府大臣政務官、カマルインド国家防災庁次官、水鳥真美UNDRR代表からの開会挨拶のあと、西川智国際協力専門員がモデレーターを務めて、関係各国によるパネルディスカッションが行われました。
フィジーのソコ国家防災庁局長からは、災害リスク削減に向けたフィジーの様々な取組みを紹介しつつ、その中でも、特にそもそも危険な場所に人々を住まわせないための移転・土地利用規制や、極端気象・気候変動を考慮に入れたインフラの適切な設計、サイクロン被災後の学校等のより良い復興の事例などの紹介がなされました。また気候変動の損失と損害の議論を防災分野でどのように取り扱っていくかについてもよく考えていくべきであると述べました。
インドのカマル国家防災庁次官からは、気候変動の影響について、より予見性や気象観測性能を高めるための関係者の能力や技術力の向上、災害にレジリエントなインフラの整備及び中長期的なインフラの最適な維持管理体制の改善、より良い復興にあたっては資金的なメカニズムを持っておくことに加えて、それが適時適切に効果的に用いられるようシステムの強化を行っていくことが重要であると指摘しました。
インドネシアのラダティヤ国家防災庁次官は、インドネシアが2020年から2045年までの防災に関する長期プランを立て、5年毎の見直しをしながら防災の取組みを進めていること、災害だけでなく気候変動にレジリエントなインフラ投資を進めていること、またより良い復興や事前準備のために政府が立ち上げた災害プールファンドについての紹介なども行いました。
村上威夫内閣府防災参事官からは、日本が仙台防災枠組合意以降もそれぞれの災害種ごとのリスク評価に基づく防災投資を着実に進めていること、客観的な評価指標によって防災への取組みを行う民間企業が低利で融資を受けられる仕組みがあること、日本の災害経験を踏まえた途上国への支援が進められていることなどの紹介がある一方、課題として早期予警報だけでは災害リスクの削減につながっていかないことを述べ、着実な事前防災投資を通じて徐々に災害リスク削減を進めていくことが重要であると述べました。
モーリシャスのカウォル地方行政・防災省次官からは仙台防災枠組の着実な実施に向けて防災法や防災政策の整備などを進めており、コミュニティの巻き込みなども行っているものの、気候変動の影響もあってサイクロンなどの気象災害が増加傾向にあり、また資金的な限度もあって十分な事前防災投資を行えていないことが課題であると述べました。特に資金的な支援や関係各国や支援機関ともパートナーシップの構築を模索することを通じて、今後更に災害リスク削減のための取組みを進めていきたいと述べました。
メキシコのエンリケ国立防災センター長からは、仙台防災枠組の優先行動のうち、メキシコでは特に1の災害リスクの理解や、4の災害対応体制の整備が進んでおり、保険等のリスク・トランスファーの仕組みも整備されつつあるものの、災害リスク削減に直接資するレジリエントなインフラ整備についてはまだ改善の余地があると述べました。加えて31の大学とのネットワークを通じた防災関連知見の共有や、レジリエントなコミュニティ作りの事例についても共有がありました。

総合討論セッションでは、各国の防災投資を進めるためのヒントとして、日本の国土強靭化予算の仕組み、メキシコの地震予測やフィジー・インドネシアの津波警報等のテクノロジーを用いた災害リスク削減の方策など、具体的な災害と向き合っている国々同士で今後の効果的な災害リスク削減に向けた方策について議論が交わされました。

閉会挨拶では、G20次期議長国のブラジルより、バレイラス国家防衛庁長官と現G20議長国のインドから、P.Kミシュラ首相筆頭次官が登壇し、各国政府による災害リスク削減の取組みの重要性とともに、災害リスクの高い国同士が連携して安全な社会を作っていくことや、今年の議長国インドのイニシアティブもあってG20で立ち上がったばかりの防災作業部会を、次期ブラジルも続けていきたい旨の決意表明が行われました。

JICAは仙台防災枠組採択以降、一貫して開発途上国の防災への取組みを真摯に支援・実施してきましたが、今回のセッションでも防災分野への姿勢、特に事前防災投資を通じた災害リスク削減に真摯に取り組んで行くことを、各国政府ハイレベルに対して印象付けることが出来ました。今回特に同枠組を尊重・推進する姿勢をグローバルサウスの国々だけでなく、G7、G20といった枠組の下で(特に日本でG7会合開催中に)世界に発信できたことは非常に意義深いセッションになりました。

資料

オープニングセッション

オープニングセッション

討議セッションの様子(1)

討議セッションの様子(1)

討議セッションの様子(2)

討議セッションの様子(2)

クロージングセッション

クロージングセッション