第21回水と災害ハイレベル・パネル(HELP)に小野寺理事が登壇

イベント |

概要

イベント:第21回水と災害ハイレベル・パネル(High-level Experts and Leaders Panel on Water and Disasters)
日時:2023年6月27日(火)9:00~17:00
場所:スペイン・マドリッド(ハイブリッド開催)

主な参加者

ハン・スンス(HELP議長、元韓国首相)、バスキ・ハディムリオノ(HELP副議長、インドネシア国公共事業・国民住宅大臣)、マーク・ハーバース(HELP副議長、オランダ国インフラ・水管理大臣)、テオドロ・エストレラ・モンリアル(スペイン国環境移行・人口問題省局長)、ダニロ・テュルク(元スロベニア大統領、マドリード・クラブ代表)、イブ・レテルメ(元ベルギー首相)、カルロス・アルバラード(元コスタリカ大統領)、古川康(国土交通大臣政務官)、小野寺誠一(JICA理事)(オンライン)ほか

背景・目的

水と災害に関するハイレベル・パネル(通称HELP)は、2007年に国連水と衛生に関する諮問委員会(United Nations Secretary-General’s Advisory Board:UNSGAB)の提言を踏まえ設置されたものです。水関連災害に対する各国の取組の強化、世界の意識啓発や各種提言・支援をするために、各国の水災害に関する政策決定者、有識者等から構成されており、議長はハン・スンス元韓国首相が務めています(JICAは田中理事長がメンバー)。これまで、国連水と災害特別会合等の主催を通じて、アジア・太平洋水サミット、世界水フォーラム、水のハイレベル・パネル等への政策的助言を継続的に展開しています。
今回のHELPでは、スペイン政府、元国家元首で構成されるマドリード・クラブ共催で、「水と災害への主流化」を各国で推進していくためにどうすべきかについて議論が行われました。

内容

JICAを代表して登壇した小野寺誠一理事からは、多くの国が急速な経済発展を遂げる一方で、気候変動の影響などによる災害リスクも高まっており、2022年には2,230億ドルもの経済被害が出るなど、近年災害による経済被害も上昇傾向にあると指摘し、持続的な経済成長の妨げにもなりかねない災害リスクに対して、各国政府の果たす役割や継続的な災害リスク削減の取組がますます求められつつあると指摘しました。

かかる状況において、仙台防災枠組で規定されている「防災は各国の一義的な責任の下で対策が実施される」点に言及した上で、「水と災害への主流化」を進めていくためには、各国政府が責任を持つことが重要であると強調しました。

また、仙台防災枠組の理念と軌を一にするJICA防災・復興グローバル・アジェンダについても触れ、JICAは特に人命保護と経済発展のための強靭な国の基盤づくりを目指しており、1) 事前防災投資、2) 万が一災害が発生してしまった場合には、より良い復興(Build Back Better)を通じて再度災害を防ぐための取組を行っていることを紹介しました。

事前防災投資の具体的な事例として、ジャカルタの洪水災害リスク削減のためのインドネシア政府のイニシアティブやJICAによるプルイット排水機場の整備支援、バルカン地域(北マケドニア、コソボ、モンテネグロ等)での治山・砂防を中心とした土砂災害・森林火災防止事業、2022年のパキスタン洪水を踏まえて気候変動の影響も加味したインダス川流域の災害リスク削減対策、モルディブでの緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)と連携した沿岸部の災害対策などの事例を紹介しました。

より良い復興(Build Back Better)の事例として、2023年2月にトルコ南東部で発生した地震に対して、被災自治体における復興計画策定、建物の耐震化、災害廃棄物処理のためのガイドライン・研修教材作成などの支援を開始していることについても言及しました。

最後に、日本は何度もあらゆる災害種を経験してきており、長年にわたって地道な災害対策を講じてきたこと、JICAは日本の経験を基に、これからも災害リスク削減を通じた強靭な国家づくりに貢献する事業を展開していくことを強調しました。

小野寺誠一 JICA理事による発表

小野寺誠一 JICA理事による発表

オンライン会議の様子

オンライン会議の様子