防災を担う人材をどう育成していくか

掲載日:2023.08.08

イベント |

概要

イベント:第5回 防災に関する日本学術会議・学協会・府省庁の連絡会
「防災・減災を担う人材をどう育成するか」
日時:2023年8月8日(水)13:30 ~ 17:45
場所:日本学術会議講堂(対面・オンラインのハイブリッド開催)

主な参加者

日本学術会議(防災減災学術連携委員会)、防災学術連携体の62学協会、防災に関わる府省庁の担当者、細川幸成(JICA地球環境部防災グループ長)

背景・目的

日本学術会議防災減災学術連携委員会、防災分野の学会・協会、関係府省庁間との情報交換を目的とした年次の連絡会において、JICAへの登壇依頼がありました。今回のテーマは、防災・減災を担う人材育成であり、各組織が最新の取り組みを発表し、今後の取組みについて議論が行われました。JICAからは細川幸成地球環境部防災グループ長が府省庁による発表セッションに登壇しました。

内容

冒頭、学協会を代表して米田雅子防災減災学術連携委員会委員長、及び府省庁を代表して高橋謙司内閣府政策統括官(防災担当)から、挨拶及び防災・減災人材育成の必要性、今回の連絡会への期待が述べられました。

続いて、「防災・減災を担う人材育成」府省庁の取り組みセッションでは、消防庁、厚生労働省、気象庁、内閣府(防災)などから、国内における災害対応やその事前準備を念頭に置いた防災・減災に関わる人材育成の取り組みについてそれぞれ発表が行われました。JICAを代表して登壇した細川防災グループ長からは、JICAによる防災関連人材の育成に係る取り組みについて以下内容の発表を行いました。

JICAが行う途上国の防災人材育成の取組み

まず代表的な人材育成に関わる技術協力の事例として、1960年に開始された国立開発研究法人建築研究所による課題別研修「地震学・耐震工学・津波防災」を取り上げました。本研修事業は60年以上の実績を有し、105カ国、約2,000人の研修員を輩出し、多くの国で研修員が知日派の防災技術分野のリーダーとして育っていることを紹介しました。また本研修によって、本年6月に国土交通省が主催する第6回「JAPANコンストラクション国際賞」の「先駆的活動部門」を受賞したことも紹介し、人材育成に貢献していることを強調しました。併せて、専門家派遣でもフィリピン公共事業道路省への継続的な派遣がフィリピン政府における治水部門の技術者の育成や組織の改善に大きな貢献をしてきたことや、学術研究機関と関係の深い「JICA開発大学院連携」「JICAチェア」といった人材育成に関係する事例も改めて共有しました。

開発協力大綱等の施策におけるJICAの位置づけと今後の方向性

今後のJICA人材育成の方向性に関して、2023年6月に改訂された開発協力大綱に沿って次世代を担う人材を育てていくことにより、我が国が直面する課題や経済成長にもつなげていくこと、これまでの協力の成果である世界の知日派・親日派人材を人的アセットとして各国との関係強化につなげていくこと、及び今後も開発途上国から研修先として「選ばれる国」であるべく、留学・研修プログラムの充実に努めることを強調しました。

国際潮流における人材育成の位置づけとJICAの協力アプローチ

日本の防災の知見が反映された「仙台防災枠組2015-2030」における人材育成や、学術研究機関に期待される役割に触れ、災害リスクの削減には、多様なステークホルダーとの連携が必要不可欠であるとし、防災・復興分野に関するJICAグローバル・アジェンダを共有しました。

国際頭脳循環への貢献と知日派・親日派の事例紹介

最後に、日本と開発途上国との国際頭脳循環へのJICAの貢献事例、及び知日派・親日派人材の事例に触れました。1994年にJICAの研修事業で来日したモンゴルのフレルスフ大統領が、防災担当副首相時代にJICA本部にも訪問し、JICAによる防災協力が大きく前進したことを取り上げました、

質疑応答・ラップアップセッションでは、JICAからの登壇内容のうち、知日派・親日派人材の事例の重要性、協力対象国を対等なパートナーとして尊重する姿勢・日頃から顔の見える良好なネットワークを構築する重要性について、改めて実感するきっかけを得られたとのコメントがありました。また、今回の登壇によって、防災分野の学術研究機関関係者に、国際協力を通じた国内の防災人材育成の重要性や、JICAが国内の防災関係者間のプラットフォームとして機能していることを印象付ける機会となりました。

JICAは防災・復興のJICAグローバル・アジェンダを推進し、国内外の人材育成におけるプラットフォームとしての役割を果たし、今後も国際的な知日派・親日派人材を育成することを通じて、各国における災害リスクの削減を一層推進し、持続的な発展の基盤作りに向けた取り組みを継続していきます。

講演する細川JICA防災グループ長

講演する細川JICA防災グループ長

会場の様子

会場の様子