外務省/国連開発計画(UNDP)共催「分極化時代における人間の安全保障 〜危機と未来に向けた連帯〜」―井本佐智子理事が登壇―
掲載日:2024.07.25
イベント |
掲載日:2024.07.25
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会議名:外務省/国連開発計画(UNDP)共催「分極化時代における人間の安全保障 〜危機と未来に向けた連帯〜」
開催日:2024年6月24日(月)
主催:外務省・国連開発計画(UNDP)共催
場所: 東京(国連大学エリザベス・ローズ国際会議場/オンラインのハイブリッド)
主な参加者:ハオリャン・シュウ国連事務次長兼UNDP副総裁、武見敬三厚生労働大臣、穂坂外務大臣政務官、高須幸雄人間の安全保障担当国連事務総長特別顧問、ペドロ・コンセイソンUNDP人間開発報告書室長、ジャン=エリック・モーリス・パケ駐日欧州連合(EU)代表部特命全権大使、シディヤ・エル・ハージュ モーリタニア・イスラム共和国駐日特命全権大使、高尾文子Climate Youth Japan代表、井本佐智子 国際協力機構(JICA)理事ほか
複雑化・複合化する危機を抱え分極化が進む昨今の世界動向を踏まえ、外務省・国連開発計画(UNDP)の共催により、「分極化時代における人間の安全保障~危機と未来に向けた連帯~」と題したイベントが開催され、井本佐智子理事がパネリストの一人として登壇しました。本イベントでは、今年発表された「人間の安全保障に関する国連事務総長報告書」およびUNDPによる「人間開発報告書2023/24年版」に基づき、持続可能な開発を実現するための人間中心のアプローチと、それを取り巻く連帯の重要性をはじめ、共創(co-creation)のあり方等について議論されました。
パネル・ディスカッションで井本理事は、JICAが20年にわたり人間の安全保障の理解促進、実装に取り組んできたことや、近年の複雑化する危機を踏まえ、既に2019年から新時代の人間の安全保障を再整理し、取り組みを強化してきたとし、教育、栄養改善分野の事例を共有しました。
女子の不就学率が高いパキスタンでは、正規の公教育へのアクセスが困難な人々 の識字教育に取り組んだ結果、これまで73,500人が教育の機会をえたこと、また、商売に携わる女性が請求書を読めるようになり、経済的自立に必要なスキルを培うことで周囲からも頼られ、自信が持てるようになったことを挙げ、人々がこの取り組みに賛同し、社会全体の意識変革に繋がったことを説明しました。
低栄養と過栄養が課題のソロモン諸島では、住民、行政官が人間中心の視点でコミュニティのニーズや課題に着目した結果、原因が野菜不足にあり、それが農地の塩害と関わっていることや、加工食品等への人々の嗜好の変化が不適切なゴミ処理やマラリアの増加に繋がっていること等を明らかにし、これらの解決に取り組むことで、人々の健康、生活環境の改善だけでなく、分野や組織の壁を越えて様々なアクターが取り組む共創の仕組みが構築されたことを紹介しました。
そのうえで、人間の安全保障の実現には、平時から人への投資を通じた人々の能力強化を行うこと、また、人々のニーズに声を傾け、対話と 相互理解を深めることが人、組織、社会の連帯と共創に繋がり、分断・対立を乗り越える力となると訴えました。
また、持続可能で連帯した世界の実現には、目指すべき方向性のコンセンサスを持つことが重要であり、最新技術やデジタルツールも駆使して一人ひとりの声を聞き、主観やアスピレーションを理解することが重要ではないかと提起しました。
本イベントは1994年にUNDP「人間開発報告書」で人間の安全保障の概念が導入されて以来、30年の節目に行われました。世界の分極化が進む中、人間の安全保障とそれを取り巻く国際社会の議論の変遷、人間中心のアプローチの重要性が再確認され、今年9月の国連未来サミットに向け、国際社会の連帯と具体的行動の促進が確認されました。
JICAは今後も、あらゆるアクターと連携しながら、人間の安全保障の実践促進と発信に努め、人間の安全保障の更なる理解促進に取り組んでいきます。
井本理事登壇の様子
パネリスト
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