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ウクライナの人々の安心・安全のために:ウクライナ非常事態庁に日本製地雷除去機の研修を実施

掲載日:2024.08.22

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2024年7月から8月にかけて、JICAはウクライナで地雷除去を行う非常事態庁(SESU)向けに地雷除去機の運用と維持管理のための研修を実施しました。

日本政府は、地雷や不発弾汚染に苦しむウクライナに対し、日本製の地雷除去機を供与しています。これら地雷除去機の中には、クレーンのついた地雷除去機 1 が含まれています。

このタイプの除去機は、クレーンを操作することにより、複雑な地形での地雷除去や、爆発物から安全な距離をとっての除去作業が可能です。また、がれきの中に爆発物があるおそれがある場合、この機材はクレーン先端のアタッチメント 2 を交換することにより、「防爆仕様が施された重機」として、がれきの撤去を行うことも可能です。こうした特徴から、この地雷除去機は、地雷除去だけでなく、がれき処理など復興に必要な様々な作業で活躍できます。

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ウクライナに供与されたものと同型の地雷除去機

こうした地雷除去機の特徴を最大限活用すべく、JICAは日本の地雷除去機メーカーや地雷除去の経験が豊富なカンボジア地雷対策センター(CMAC)と協力して、ウクライナ非常事態庁向けに除去機の操作や維持管理にかかる研修を日本及びカンボジアにて実施しました。ウクライナにおいては地雷除去が喫緊の課題となっていることから、非常事態庁からは14名もの研修員が参加しました。

日本での研修は、地雷除去機メーカーの協力を得て、除去機の基本的な操作と維持管理のための知識の習得を目的として約2週間にわたり実施しました。研修の大部分は酷暑の屋外で行われましたが、研修員は集中力を切らさず除去機の操作を覚えようと研修に励んでいました。

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左:研修の模様 写真の奥の砂利の山など、あえて複雑な地形をつくり、細かい操作技術を体得していきます。
右:維持管理研修にはマニュアルだけでなく、実機も使い、具体的な知見の修得に努めています。

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日本のメディアによる取材も受けました。左は地雷除去機の研修を担当するコミシャン教官、右は独学で日本語も勉強しているペトレンコ除去員。

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日本での研修の後、長年JICAが協力してきたカンボジア地雷対策センターとの協力の下、カンボジアにて実践的な研修を約2週間かけて実施しました。カンボジアには今も除去を必要とする地雷原があるため、実践的な訓練場があります。このような訓練場で、研修員は地雷除去機の運転方法や地雷除去の実務についてカンボジアの実務者から直々に学んでいきました。

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伐採した灌木の山を押しのけた後、ブラッシュカッターで雑草除去します。灌木や雑草の除去は安全かつ効率的な地雷探査のための重要な準備作業です。

研修最終日には、ウクライナ人研修員の習得レベルを把握するための評価会が行われ、研修員全員が極めて高いレベルで技術を身に着けたことが確認できました。研修員からは地雷除去機の使用は安全かつ効率的な地雷・不発弾除去に不可欠であること、今回の研修はウクライナ非常事態庁に対する支援だけでなく、安全な社会を作り出すというウクライナの次世代への支援でもあり、極めて貴重な機会であったと感謝の言葉が述べられました。カンボジア地雷対策センターのラタナ長官は、ウクライナの厳しい状況に苦しむ人々に寄り添う言葉を伝えた後、研修員の献身的な研修への取組みと高い達成度への賛辞とともに、カンボジアのこれまでの地雷・不発弾対策の歴史に触れつつ、地雷・不発弾対策の進展によってウクライナにおける人道的状況が改善されることを望むと発言しました。JICAからはSESUによる本研修への積極的な取組を評価するとともに、地雷対策における「ナショナルキャパシティ―」 3 の重要性を指摘しました。

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カンボジア地雷対策センターのラタナ長官 カンボジアの地雷・不発弾対策の政策的な意義をカンボジアの経験から伝えました。

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ウクライナ研修員代表 ラズン教官 地雷・不発弾汚染に苦しむウクライナの状況、地雷除去機の導入の重要性を強調しました。

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JICA小向専門員 20年以上カンボジア地雷対策協力に携わってきた経験に基づきカンボジアによる協力の意義について述べました

今も戦闘が続くウクライナでは、地雷や爆発物による土地の汚染が、人々の安全・安心な暮らしや復旧・復興への障害となっています。地雷・不発弾対策のため、ウクライナ非常事態庁は文字通り命がけ 4 で取り組んでいますが、広大な汚染された土地を前に、必要な機材・人材が不足しています。

そこで、日本政府とJICAは日本の技術や支援実績をもとに、ウクライナの地雷対策の能力強化のための協力を進めています。地雷除去には時間がかかることから、地雷・不発弾対策は中長期的な取組が必要な課題です。JICAはウクライナの人々が安全・安心な暮らしを取り戻し、国の復興が進むよう、地雷・不発弾対策分野での協力をこれからも進めていきます。

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カンボジアでの研修修了式を終えて。達成感が伺えます。