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【COP29サイドイベント】気候変動リスク管理の実践支援:情報開示にとどまらない金融機関の役割

掲載日:2024.12.16

イベント |

報告者

氏名 所属 肩書
日比谷 遼 地球環境部環境管理・気候変動対策グループ 専門嘱託

概要

開催日: 2024年11月19日
主催: 国際開発金融クラブ(IDFC)
会場名(パビリオン名):国際開発金融クラブ(IDFC)パビリオン

登壇者

氏名 所属 肩書
クレア・エシャリエ 気候経済研究所(I4CE) 開発金融プログラムダイレクター
ジャスプリート・カール 気候政策イニシアティブ(CPI) アナリスト
レムコ・フィシャー 国連環境計画・ファイナンスイニシアティブ(UNEP FI) 気候変動部門長
ナターシャ・チャウダリー 気候経済研究所(I4CE) 気候リスク主任研究員
アリナ・ミカ 欧州復興開発銀行(EBRD) 環境財政システム部門長
ノーラ・ランブレット 米州開発銀行(IDB) 気候変動担当上級環境社会担当官
アマル・ベネッサ アフリカ銀行(BOA) サステナビリティ部門長
コマランビ・モグロ 西アフリカ銀行(BOAD) 環境専門官
碓井 祐吉 JICA 地球環境部環境管理・気候変動対策グループ 課長

背景・目的

本イベントは、金融機関に関連する気候リスク管理に関する最近の知見に焦点を当て、金融機関がより良い気候リスク管理のためにどのように協力できるか、また、取引先が直面する可能性のあるリスクに適応する金融商品をどのように開発できるかについて、それぞれの経験を共有し議論しました。

内容

  • はじめに気候経済研究所(I4CE)のエシャリエ氏は、金融機関が気候関連リスクをその枠組みや戦略に組み込むことは、気候の影響に対する途上国のレジリエンスを高める重要な役割を果たすと述べました。
  • 導入として、気候政策イニシアティブ(CPI)のカール氏は、金融機関と投資家は気候変動対策に資する戦略を上手く意思決定に統合することで、気候リスクを軽減するとともに、自ら市場にポジティブな変化を起こすことができると述べました。
  • 国連環境計画・ファイナンスイニシアティブ(UNEP FI)のフィシャー氏は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)がESG投資市場を大きく変え始めているとし、金融機関が取引先の課題を分析し特定する重要性を訴えました。
  • 気候経済研究所(I4CE)のチャウダリー氏は、現在の金融産業の慣習は概してリスク・アセットの特定が十分に行えていないとし、民間金融機関が座礁資産リスク(stranded assets)の管理手法を再考し、より広範なリスク資産(Asset at risk)の概念にシフトしていく必要があることを強調しました。
  • パネルディスカッションでは、はじめに欧州復興開発銀行(EBRD)のミカ氏が、EBRDでは全ての投資が気候リスク評価の下で行われていることを紹介し、取引先の気候変動脆弱性と排出量の大きいセクターに係る分析が重要であると述べました。
  • 米州開発銀行(IDB)のランブレット氏は、気候リスクが既に顕在化し、意識されるようになっている中、IDBではパリ協定への整合を一層強化し、気候ストレスに対応するパイロット事業を進めていることに言及し、小規模農家など気候の影響に脆弱な顧客への適応支援を拡充する必要があると述べました。
  • Bank of Africa(BOA)のベネッサ氏は、加速する気候変動と近年の地政学リスクに言及した上で、金融リスク測定が基盤とする気候シナリオは常に微調整される必要があるとしました。
  • 西アフリカ開発銀行(BOAD)のモグロ氏は、今年ローンチした気候ショックに強靭なローンプログラムを紹介。早期警戒システム関連の保険商品の展開地域を徐々に広げていきたいとしました。
  • JICA地球環境部環境管理・気候変動対策グループの碓井課長は、各開発セクターにおいて、開発事業とのコベネフィットを追求しながら、脆弱性を軽減していく必要があること、また、予防防災に言及し、レジリエンスを高め、ロス&ダメージを最小化する必要性を強調しました。

画像

パネルディスカッションで発表する碓井課長