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アジア14カ国の閣僚・局長級と経済・財政政策を議論する「第7回IMF-JICA合同国際会議」を開催しました

掲載日:2025.03.21

イベント |

1.概要

イベント:第7回IMF-JICA合同国際会議
日時:2025年2月13日(木)
共催:国際通貨基金(IMF)、国際協力機構(JICA)
場所:JICA緒方貞子平和開発研究所 国際会議場

2.主な参加者

アジア14ヵ国(※)の財務大臣1名、中央銀行総裁6名を含む閣僚・局長級など30名以上が参加しました。財務省から三村財務官、IMFから岡村副専務理事、Choueiriアジア太平洋(APD)副局長、Mooji財政副局長、JICAから田中理事長、八原理事、原理事、武藤理事長特別補佐が出席しました。
(※)東南アジア(カンボジア、フィジー、ラオス、フィリピン、タイ、ベトナム)、南アジア(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ、ネパール)、東アジア(モンゴル)。

3.背景・目的

2011年以降、IMFとJICAは、アジア諸国の財務省・中央銀行の当局者を招き、アジア及びグローバルな課題に関する議論の場やネットワークの機会提供を目的とした国際会議を隔年開催してきました。

第7回となる本会議は「Navigating for a Better Future in Emerging and Frontier Asia Under Uncertainty: Economic and Fiscal Policy Challenges and Prospects」を主たるテーマとしました。

紛争や自然災害、地政学的緊張などにより不確実性が深まる中、各国での取組の経験や教訓を踏まえながら、各国財政金融当局者、IMF、JICAの参加者が「中長期の財政政策」「気候変動適応」「産業政策」に関する3つのセッション、及びラウンドテーブルで議論を交わしました。

4.内容

冒頭、IMF岡村副専務理事、JICA田中理事長より主催者挨拶を行い、財務省三村財務官が開会挨拶を行いました。

セッション1:不確実性の下での財政政策

IMFは、アジア各国は米中貿易摩擦や不安定な金融市場の下で多様な歳出ニーズに対応しつつ、財政健全化を図る必要があると指摘しました。また、債務削減、歳出増、政治経済の運営のトリレンマ(3つのジレンマ)に対処するため、税収の強化、AI・デジタルの利活用、国際協力の推進が必要と強調しました。各国登壇者からは、自然災害とパンデミック後に債務を削減した経済改革や、中進国入りを目指す財政運営、雇用創出、海外直接投資の取組み、新たな資金調達手段としてのサステナビリティ・リンク・ボンドの発行を紹介しました。また、こうした取組みへの国民の理解・支持を得るための議論の重要性に言及しました。

セッション2:気候変動適応とレジリエンスの強化

IMFは、自然災害が頻発するアジア各国では、国家適応計画の下、気候変動適応に必要な予算枠組みとマクロ経済の枠組みとの整合を図り、政府の気候リスク評価など能力向上を図ることの重要性を強調しました。JICA武藤理事長特別補佐は、災害リスク低減のための事前防災投資を含む気候リスクを考慮した国家リスクファイナンス戦略の重要性を強調しました。フィリピンでの事前防災インフラ、技術協力、災害リスクファイナンスの協力事例をもとに、同国の主体的な事前防災支出と財政リスク管理努力を同時に引き出しつつ、システム全体としてのレジリエンスに一体的に取組む必要性を議論しました。各国登壇者は、島嶼国や寒冷地、内陸国など固有の気候リスクに応じた対応策を紹介するとともに、国家財政での対応の限界に触れ、国際協力の必要性を指摘しました。

セッション3:産業政策の展望とトレードオフ

IMFは、調査研究中のデータをもとに昨今の産業政策が傾向として自国の先端技術や重要鉱物に対する経済安全保障目的が多いことや、産業政策の結果は様々であることを紹介し、実質的な経済利益を得るためには慎重な設計が必要と指摘しました。早稲田大学の戸堂教授は、サプライチェーンと知的ネットワーク拡大を目指す産業政策は経済成長、イノベーション、強靭性に効果的な傾向があり、JICAの協力に触れつつ、政府の国際共同研究やR&D促進支援の重要性を強調しました。各国参加者からは外国投資促進や雇用創出と経済成長を目的とした産業政策の取組み、過去の政策の教訓などを説明しました。

セッション4:ラウンドテーブル

会議を総括する形でパネリストが各国の経済政策の今後の展望を議論しました。各国登壇者は財政・金融政策の協調と独立性、タイムリーな政策行動や改革の政治的オーナーシップの重要性、経済状況を踏まえた産業政策の適応・調整、金融システムのグリーン化などを議論しました。JICA原理事は、長期的な人材育成に重点を置いた行財政・金融分野の協力事例を紹介し、特にサブサハラアフリカ諸国の政府関係者を対象としたタイ政府との公的債務管理に関する共同研修プログラムに言及し、今後も各国と相互学習・連携を図っていくことを強調しました。

会議中は多様な状況におかれた各国財政金融当局者よりそれぞれの取組の経験や教訓などを交え、非常に活発な議論と交流が行われる有意義な機会となりました。今後もJICAはIMFと連携して、アジア諸国の強靭性の強化に取り組んでいきます。

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参加者