地雷のない国を自分たちの手で実現するために~地雷対策ワークショップを通じたアフリカ・カンボジア・日本の協力~
掲載日:2024.08.05
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地雷・不発弾は紛争中だけではなく、紛争終了後も長い期間にわたって残るため、復興・開発を妨げる原因となります。地雷や不発弾の問題に効果的に対応するためには、国による地雷対策のオーナーシップ(National Ownership、ナショナル・オーナーシップ)の向上と地雷・不発弾対策に係る国の能力(National Capacity、ナショナル・キャパシティ)の強化が重要です。
JICAは、1998年からカンボジア地雷対策センター(CMAC)との協力を続けてきました。2010年以降は、CMACの知見・技術を他の地雷・不発弾被害国に共有する取り組みに力を入れています。これまでにコロンビア、ラオス、アンゴラ、イラク、ウクライナなど500人以上の地雷対策関係者に対して研修等を通じた知見の共有を実施してきました。
今回、アジスアベバで開かれたワークショップは、アフリカの地雷被害国にCMACの知見を提供するにあたって今後の方向性を議論することを目的に開かれました。議論の始まりは、昨年10月にナイロビで開かれたJICA、CMAC、国連地雷対策サービス部(UNMAS)共催のワークショップです。このワークショップには、エチオピア、ナイジェリア、ソマリア、南スーダンの地雷対策を担う政府組織が参加し、地雷対策に関する現状が共有されました。ワークショップの中で、アフリカ4カ国によるCMACの活動の視察を希望する声が上がったため、今年1月に4カ国によるカンボジア訪問を実施しました。日程の最終日、JICA、CMACとアフリカ4カ国で議論をしている際に「CMACが30年間かけて積み上げてきたナショナル・キャパシティを自分たちも強化していきたい」という意見が4カ国から出されました。その声を受けて、今回、エチオピアのアジスアベバにエチオピア、ナイジェリア、南スーダン3か国の地雷対策政府組織の幹部とJICA、CMAC、UNMASが再度集まり、ナショナル・キャパシティを強化するための取組みについて議論することになりました。
7月17日に、アジスアベバのエントト山に位置するエチオピア地雷対策事務所(EMAO)の本部と研修センターを訪問しました。南スーダン国家地雷対策庁(NMAA)のプログラム局長からは「NMAA職員の中にはここで研修を受けたことがある人もおり、EMAOに感謝しています」との発言もありました。雨空のもと地雷探知犬の訓練の様子や研修センターの宿泊施設なども視察しました。
(視察の様子)
その日の午後から18日夕方まで一日半に亘って、アフリカ3カ国の地雷対策組織のナショナル・キャパシティを高めるための協力について議論が行われました。その結果、次の3つの取組が提案されました。
① 各組織の幹部のマネジメント能力を高めるための研修
② チームリーダー等現場の管理職を対象とした技術研修
③ 各組織の幹部と現場管理職、CMAC、JICA、UNMASが参加する課題解決型National Capacity強化プラットフォーム
①と②の研修では、CMACの長年の経験に基づいた知見を最大限活用し、国外の地雷対策組織に依存せずに地雷対策を推進していくのに必要なナショナル・キャパシティを確保するために、組織の上層部と現場レベルの双方を強化していくことを目指します。③のプラットフォームでは、各組織が抱える課題を定期的に持ち寄り、CMAC、JICA、UNMASと議論する場を設定し、課題の改善策を模索します。
アフリカの参加者からは「ナショナル・キャパシティを作り上げてきたCMACから学ぶ機会は貴重」「アフリカの複数の組織がこのような場に参加することが有効」といった、アジアーアフリカを繋ぐ協力、アフリカ域内地域協力というアプローチについても高く評価する声が聞かれました。また、「このような機会を自分たちだけではなく、地雷・不発弾被害に苦しむ他のアフリカの国にも提供してほしい」という要望も示されました。
(協議の様子)
日本政府は、2024年7月に上川大臣が「地雷対策支援に関する包括的パッケージ」の立ち上げを発表し、カンボジアをハブとした三角協力等による地雷対策支援を積極的に進めていく旨を表明しています。地雷・不発弾対策におけるナショナル・キャパシティ強化の「輪」が、アジアからアフリカに広がり、アフリカの国々も外部支援だけに頼るのではなく、国外のドナーや地雷対策組織と協力しつつも自国が中心となって「地雷・不発弾のない世界」を実現していく日が来るのを期待しています。
(参加者との集合写真)
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