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【COP29サイドイベント】グリーンな未来への資金調達:劣化した牧草地の回復戦略

掲載日:2024.12.23

イベント |

報告者

氏名 所属 肩書
日比谷 遼 地球環境部環境管理・気候変動対策グループ 専門嘱託

イベント概要

開催日: 2024/11/21
主催: 地域気候基金(RCF:Regional Climate Foundations)
会場名(パビリオン名): RCF パビリオン

登壇者

氏名 所属 肩書
ブルノ・ブラジル 農務省 サステナブル生産灌漑部長
ペドロ・カント 農務省 大臣特別補佐官
マルセロ・モランディ 農牧研究公社 国際関係部長
ロドリゴ・リマ Agroícone 総裁
碓井 祐吉 JICA 地球環境部環境管理・気候変動対策グループ 課長

背景・目的

本イベントは、劣化した牧草地を持続可能な農林システムに転換するブラジルの国家プログラムに焦点を当て、劣化牧野の回復への投資を通じて、食糧安全保障やGHG排出量削減といった正の効果をもたらし得るか、環境・持続可能性と経済開発の両方に資する投資モデルについて議論することを目的に行われました。

内容

  • 開会挨拶として、農務省サステナブル生産灌漑部長のブラジル氏は、ブラジルで実施中(2021~2030)のABC+プログラムについて紹介。本プログラムは、低炭素型農業を実現する為の国家戦略で、NDC達成に向けた核心であるとしました。また、同国の牧野の60%が荒廃および荒廃の一途を辿っており、PNCPD(荒廃牧野の持続可能な農林業生産システムへの転換の為の国家プログラム)は、同国の8000万haの荒廃牧野(うち2600万haは特に農業適地とされる)の農地転換を目標に掲げていると述べ、政府だけでなく民間からの投資の重要性を強調しました。
  • パネルディスカッションでは、はじめに農務省大臣特別補佐官のカント氏が、PNCPDについて紹介し、研究が進んだことで荒廃牧野の農地転換技術は既に有るものの、現状では社会のコミットメント、人手、農家に対する優遇融資政策等が十分でないことが、その迅速な実現を阻んでいることを指摘しました。
  • 農牧研究公社の国際関係部長のモランディ氏は、1970年代から研究開発で耕作可能な農地へと転換されたサバンナ地帯(セラード)は、転換後、長期的にその生産性を維持することが課題とされてきた経緯を述べました。また、研究開発を進める資金提供に加えて、科学的知見の共有をグローバルで推進するという観点で、国際協力が重要であると強調しました。
  • Agroícone総裁のリマ氏は、農務省と気候社会研究所(iCS)のパートナーシップの下、今年全9回に渡り開催されたワークショップでは、連邦、州、民間等から管理者や技術者約400名が参加し、農地転換が可能な荒廃牧野地域をリストアップしたことを紹介。国際投資を誘致する為には、荒廃牧野の詳細情報や、農地転換に関する経済的プランを開示することが重要であると述べました。
  • JICA地球環境部環境管理・気候変動対策グループの碓井課長は、ブラジルでの劣化牧野を改良した農地での低炭素農業を通じた穀物生産は、世界の食糧安全保障と気候変動対策に大きく貢献するだけでなく、バイオ燃料生産による地域内でのエネルギー安全保障や循環型農村経済の実現、ひいては社会包摂にも貢献し得るとしたビジョンを提示しました。

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集合写真

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パネルディスカッションの様子