「誰一人取り残さない」ために何をすべきか。 SDGs達成に向けた「いのち会議」を実施
掲載日:2025.11.17
イベント |
日時:2025年8月22日(金)
会場:ヨコハマ グランドインターコンチネンタルホテル
主催:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
(開会挨拶)
西尾
章治郎 (「いのち会議」事業推進協議会 議長/大阪大学前総長/2025
年日本国際博覧会 「シニアアドバイザー」)
堂目
卓生 (「いのち会議」事業実行委員会 委員長/大阪大学社会ソリューションイニシアティブ長・特任教授)
(パネルディスカッション)
Ismael NABE(ギニア共和国 計画・国際協力大臣)
Amma TWUM-AMOA(アフリカ連合委員会 保健・人道・社会開発担当委員)
今西
達也(外務省 国際協力局 参事官)
齋藤
俊太郎(アフリカ・アジア・ユースネスト 共同代表)
David Kpondehou(在日アフリカ人ネットワーク(ADNJ)理事)
(閉会挨拶)
田中
明彦 (JICA理事長)
第9回アフリカ開発会議(以下、TICAD9)のテーマ別イベントとして開催された「いのち会議」は、「アフリカと共に創る未来社会:SDGs達成とその先へ」をテーマに、アフリカ諸国と日本の関係者が一堂に会し、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現に向けて議論を深める場として企画されました。
2025年8月22日、ヨコハマ グランドインターコンチネンタルホテルにて、TICAD9のテーマ別イベント「いのち会議 アフリカと共に創る未来社会:SDGs達成とその先へ」を開催しました。
「いのち会議」とは、誰一人取り残さない」社会を実現するための方策や科学技術が果たす役割を提示した上で、さらにSDGs後、すなわち2031年以後に人類が目指すべき目標を議論する会議です。
本イベントでは、この「いのち会議」の視点から、アフリカが目指す未来社会像と克服すべき課題について議論し、アフリカの関係者とともにポストSDGsの議論を活発に話し合ました。
開会にあたり、2025
年日本国際博覧会(以下、万博)「シニアアドバイザー」の一人でおられる「いのち会議」事業推進協議会 西尾議長が「単なる議論の場ではなく、いのちの本質を見つめ直す場です。包摂的で敬意に満ちた対話を通じてこそ、本当の意味での『共創』が可能になり、すべての人にとって輝かしい未来社会への大きな一歩となります」と発言されました。続いて「いのち会議」事業実行委員会 堂目委員長がいのち会議の基本的な理念を分かりやすく紹介し、「助けを必要とするいのちを中心に、助けるいのちをその周辺に捉える。そして両者の間には共助の関係があります。一方的ではなく、助ける側が助けられる側に回ることもあります。こうした相互性を踏まえ、すべてのいのちが認められ、尊重され、はぐくまれる社会の実現を目指します」と語りました。
開会の挨拶を行う 「いのち会議」 事業推進協議会 西尾議長
その後のパネルディスカッションでは、アフリカ(ギニア共和国、アフリカ連合委員会)、日本政府(外務省)、アフリカ・日本の若者代表の5名のパネリストが登壇し「アフリカと共に創る未来社会:SDGs達成とその先へ」というテーマのもと、「誰一人取り残さないために、アフリカの未来社会をどうデザインしていくか」「アフリカにおいて、SDGs達成の最大の課題は何か」など、多角的に議論しました。教育・保健・医療などの分野において、2030年までに達成を掲げたSDGs目標に向けて、具体的な課題と、その課題解決に向けた各国連携の重要性について下記のような活発な意見交換が行われました。
ギニア共和国 計画・国際協力省 Ismael NABE大臣は、「より良い未来社会の実現のために重要なのは『共創』であり、対等な『パートナーシップ』です。我々は『援助』という言葉を使いません。鍵となるのは教育です。人材なくして未来はありません」と語り、在日アフリカ人ネットワーク(ADNJ) David Kpondehou理事は「適切な能力と価値観を持つ人材こそが未来をつくる」と応じました。
また、外務省国際協力局 今西参事官は「若い世代が多いアフリカでは、質の高い教育が不可欠です。若者の潜在能力を引き出すことが持続可能な社会づくりに直結します」と述べました。アフリカ・アジア・ユースネスト 齋藤共同代表は「現在、日本からアフリカへ渡る人は4〜5000人。これを10万人に増やし、チェンジメーカーとして育てていきたい」と意気込みを語りました。
アフリカ連合委員会 Amma TWUM-AMOA保健・人道・社会開発担当委員はヘルスケアの観点から、「貧困の問題を解決し、健康な人材を増やすためには、人々に等しく医療が行き渡る仕組みが必要です。そのためには、保健や医療への投資も欠かせません」と語りました。
パネルディスカッション後の質疑応答では、来場者参加者から「女性や子供のプライオリティを上げることで、国の発展に寄与できるのではないか」と熱のこもった質問も投げかけられました。これに対し、 Amma TWUM-AMOA担当委員は「その通り、女性や子供なくして完璧な社会の実現は不可能です。まだまだ、弱い立場にあるとされる両者をエンパワーすることで、未来の社会にとっても大きなメリットが生まれます。例えば、パートナーと連携し、妊婦や乳児の死亡率を下げる取り組みや、AIを活用して医療へのアクセスを容易にすることにも注力していきます」と答えました。
パネルディスカッションの様子
質疑応答後のプログラム終盤には、「アフリカでは若年層の人口が多く、日本では高齢化が進む中で、両地域の若者が手を取り合って
相互利益
のパートナーシップを築くべき」という共通認識のもと、議論が締めくくられました。
閉会にあたり、田中理事長は「すべてのいのちが輝き、サステナビリティを実現できる未来に貢献したい。そのためには、知識を共有しながら互いにインスピレーションを与え合う『co-inspiration』が不可欠です」と述べ、盛況のうちに幕を閉じました。
JICA 田中理事長とギニア共和国 計画・国際協力省 Ismael NABE大臣
今回のTICAD9におけるJICA主催テーマ別イベントにおける「いのち会議」では、万博の理念「いのち輝く未来社会のデザイン」とも深く共鳴する場となりました。
イベントの3会場の受付
今回のTICAD9では、テーマ別イベントの3会場の受付に、万博の公式ポスターを掲示し、万博の公式マスコットキャラクター「ミャクミャク」のロゴを掲載したJICAのアフリカ協力を紹介するパンフレットを配布し、万博との連携も紹介しました。
JICAのアフリカ協力を紹介するパンフレット
これにより、国内外からの参加者に対して、TICADと万博の目指す世界観の接続性が視覚的・感覚的に伝わる演出となり、万博の持つ「共創」や「包摂」といったキーワードが、会議全体に一層の深みを与える結果となりました。
TICAD9における「いのち会議 アフリカと共に創る未来社会:SDGs達成とその先へ」の議論は、万博の理念「いのち輝く未来社会のデザイン」とも深く共鳴する場となりました。
今回の議論の成果は、2025年10月11日の万博で発表される「いのち会議」の結果を集約した「いのち宣言」に引き継がれます。
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