【COP30サイドイベント】温暖化する地球のためのパッシブクーリング設計・建設戦略
掲載日:2025.12.10
イベント |
| 氏名 | 所属 | 肩書 |
| 金川 誠 | 社会基盤部都市・地域開発グループ第3チーム | 参事役兼課長 |
開催日:2025年11月19日
主催:国連環境計画、Global Alliance for Buildings and Construction (GlobalABC)、Cool Coalition
会場名(パビリオン名):Buildings and Cooling Pavilion
| 氏名 | 所属 | 肩書 |
| チュオップ・パリス | カンボジア王国環境省 | 国務長官 |
| 柴田和直 | 独立行政法人国際協力機構(JICA) | JICA地球環境部次長 兼 環境管理・気候変動対策グループ長 |
| ルオン・クアン・フイ | ベトナム社会主義共和国農業農村開発省 | 気候変動局温室効果ガス排出管理・オゾン層保護部長 |
| カルビン・チョン | シンガポール共和国持続可能環境省 | エネルギー・気候政策部長 |
| ズルフィカル・ユルナイディ | ASEANエネルギーセンター | エネルギーモデリング・政策企画部長 |
| HY ウィリアム・チャン | ICLEI、元シドニー市議会議員・交通・遺産・環境・都市計画委員長 | 特別顧問 |
| モンセラット・ボダディージャ | EBP チリ | CEELA共同代表 |
| ヒューバート・ンソー・ザン | ガーナエネルギー委員会 | アシスタントマネージャー |
| * 鎌田源内 | 国連環境計画(UNEP) | 準専門官 |
2024年は観測史上最も暑い年となり、地球の気温が上昇を続けている中、機械空調に極力頼らない、省エネで快適かつ健康的な家づくりを可能とするパッシブクーリングが現在世界的に注目を浴びている。機械空調は既に世界の温暖化ガス排出量の7%を占め、対策が講じられなければ、2050年までに61億トンに達し、世界の温暖化ガス排出量の10%以上を占める可能性があるとされている。この傾向は都市化と人口増加が進む新興国・途上国で特に顕著であり、国連環境計画のCool Coalitionによると、機械空調への依存を最小化できるパッシブクーリングを導入することにより、2050年までに冷房需要を24%削減し、新規設備コストを1.5~3兆米ドルを節約するとともに、温暖化ガス排出量を13億トン削減できると推計されている。COP28では日本を含む70カ国以上がグローバル・クーリング・プレッジを支持し、また2024年には国連事務総長が「猛暑への行動要請」を発表し、パッシブクーリングの推進を世界的に呼びかけており、パッシブクーリングの重要性が高まっている。また、2024年にはシャイオ宣言を通じてパッシブクーリングの普及を目指し国際連携を促進することが70カ国以上の間で確認されている。
本セッションは、各国政府代表者と実務者が知見を共有し、パッシブクーリングの普及加速を図ることを目的とする。
パッシブクーリング事業を積極的に行う途上国の代表者による基調講演およびパネルディスカッションが展開された。JICAは、SATREPSの「パリ協定による2030年目標に向けた高温多湿気候下のインドネシアにおける低炭素アフォーダブル集合住宅の開発」を事例に、同国でのパッシブクーリングの実証実験を紹介した。モデル住宅の熱シミュレーションを通じ省エネで快適な自然換気システムを開発したこと、現在その知見を同国のデザイン基準やガイドラインへ反映していること等を発表した。また、インドネシア特有の気候データを収集・分析し、開発した気候区分図がインドネシア政府から公式に採択されたという社会実装の事例を紹介した。さらに、国連環境計画とASEANエネルギーセンター(ACE)が主導するASEANパッシブクーリングアドバイザリーグループに参加し、インドネシアでの知見を共有しながら、同地域のパッシブクーリングロードマップ作成に積極的に貢献していることも報告した。JICAはパッシブクーリングの普及推進に尽力し、グリーンで強靭かつ包括的な建築・都市づくりに寄与していくことを強調した。他の登壇者からもパッシブクーリングを喫緊にニューノーマルにしなければ気候変動対策が追い付かないという発言もあり、本領域でのJICAの支援の重要性が改めて強調された。
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