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【COP30サイドイベント】UNEP ARIC (Adaptation and Resilience Investors Collaborative)“Investors Resilience Challenge introduction: 気候変動への適応に向けた民間資金の動員”

掲載日:2025.12.19

イベント |

報告者

氏名 所属 肩書
稲田恭輔 JICA サステナビリティ推進担当特命審議役

概要

開催日:2025年11月18日
主催:UNEP ARIC
会場名(パビリオン名):Blue Zone Action Room 4

登壇者

氏名 所属 肩書
レムコ・フィッシャー 国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI) Climate Lead
フェリシティ・スポール 欧州復興開発銀行(EBRD) Director, Sustainable Business and Infrastructure
ナンシー・サイク 欧州投資銀行(EIB) Chief Climate Change Expert
ブラッドリー・トッド・ヒラ― イスラム開発銀行(IsDB) Lead Climate Mitigation Specialist
稲田恭輔 JICA サステナビリティ推進担当特命審議役

背景・目的

本イベントは、適応・レジリエンスのためのファイナンスの拡大を阻む障壁とそれを乗り越える対応策を議論するために開催されました。

内容

・UNEP FI フィッシャー氏は、ノンソブリン投融資を行うMDBsやDFIsが加盟し、UNEPが事務局を務めるAdaptation & Resilience Investors Collaborative (ARIC)が策定中のInvestors Resilience Challenge (IRC)を紹介。IRCは、①気候リスク管理、②気候リスクアウトカム測定、③適応を可能にする活動、④適応アウトカム、⑤民間資本の動員(主にMDBs/DFIs向け)の5つの基準を設け、うち2つ以上を充たす投資を「Investors Resilience Challenge」と認定することを想定しています。
・EBRDのスポール氏は、EBRDでは2012年から投融資事業における適応の分類・推進に取り組んでおり、気候変動リスクにロックインされないよう、クロスセクターの課題と捉えて取組を行ってきたとしました。マクロの観点で見て、気候変動の影響が生じていることやそのリスクは広く認知されてきており、残された問題は適応を行うことが収益に反映されるよう、Financial Accountingに取り組むことだとの認識を示しました。国際開発金融機関(MDBs)の間でも作業グループを作って改善を検討中としつつ、リスクや対応の分析に必要なデータを入手することには困難も伴うとしました。
・EIBのサイク氏は、MDBs間では20年以上前から適応の必要性について議論を重ねており、パリ協定整合の枠組みや現在国際交渉で議論されているグローバル適応指標(GGA)の同枠組みへの反映などについて検討しているところとしました。EIBとしても、EIB全体及び殆どが途上国向けでありEIB全体の約10%を占めるEIB Globalの活動において、適応の割合を高めるべく、先般発表した気候変動ロードマップ(2026~30年、フェーズ2)でも目標を設定したところと共有。IRCについては、既存の取組がある中で、「車輪の再発明」にならないかとのコメントも行いました。
・IsDBのヒラ―氏は、IsDBは規模は小さいが、対象地域には多くの脆弱国が含まれており、気候変動対策事業のうち適応の割合が緩和を上回る数少ないMDBsと紹介。インフラにおいて適応策を導入することで便益が増えることに注目しており、脆弱なコミュニティに対して保険を提供する機能も備えているとしました。
・JICAの稲田特命審議役は、①JICAの適応の取組(ソブリンの資金協力や技術協力が中心であったが、民間企業等向けのファイナンスでも取組が進んでいること)、②ジェンダー投資のラベルである2X Challengeの教訓、③IRCの課題、④個別事業の限界(数年間の限られた範囲内の事業で適応を行ってもアウトカムは限定的となり得、国全体の計画と個別事業への投資を紐づける取組の重要性)等につき発言しました。