ASEAN災害保健医療管理に係る地域能力強化プロジェクトが世界災害救急医学会にてHumanitarian Award for Excellence in Disaster Managementを受賞
掲載日:2025.05.19
イベント |
掲載日:2025.05.19
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イベント名:WADEM2025(第23回世界災害救急医学会)
日時:2025年5月2日(金)~5月6日(火)
場所:日本、京王プラザホテル
国内外の災害救急医療に関わる実務者、研究者、教育者等。災害救急医療に関与するWHO(世界保健機関)等の国連、国際組織からの関係者も多く参加しました。
世界中の災害医学や救急医学、危機管理学等の学術関係者と医療従事者の知見を結集し、災害時の保健医療体制の強化を目的として開催される学術集会WADEM2025(第23回世界災害救急医学会)にて、ASEAN災害保健医療管理に係る地域能力強化プロジェクト(以下、ARCHプロジェクト)が “Humanitarian Award for Excellence in Disaster Management”を受賞しました。こちらの賞は、災害救急医療の分野で優れた功績を残した団体やプロジェクトに贈られるもので、過去には、WHOの地域機関であるPAHO(汎米保健機構)や国境なき医師団(MSF)など著名な組織が受賞しています。同賞は2年ごとに開催されるWADEM会議で授与され、今回ARCHプロジェクトが選ばれ、受賞しました。
授賞式には、本プロジェクトの代表者として、地域調整委員会(Regional Coordination Committee on Disaster Health Management : RCCDHM)事務局からタイ保健省のクリアンサック・ピンタタム氏、ASEAN災害保健医療管理研究所(ASEAN Institute for Disaster Health Management : AIDHM)からベラ・ドナ氏、そしてプロジェクトの池田チーフアドバイザーが出席しました。
本プロジェクトは、東南アジア諸国連合(ASEAN)が掲げる「One ASEAN, One Response」のビジョンのもと、約10年間にわたって実施され(第1フェーズ、延長フェーズ及び第2フェーズ)、災害保健医療管理分野におけるASEAN域内連携と災害対応能力強化のための活動が行われています。
日本とASEANの災害医療人材の交流や知識の共創を通じ、各国で緊急医療チーム(EMT)の立ち上げや強化、ASEAN域内の大規模災害時のEMT派遣標準手順書等のツール開発、研修コース開発と実施、ASEAN域内での合同災害演習、ASEAN学術研究機関ネットワークとASEAN研究所の設立、そしてASEAN学術雑誌の創刊やASEAN学会の開催等、過去10年弱にわたる多角的な活動により、災害医療分野でのASEAN域内連携や各国の災害対応能力が強化され、その功績が評価されました。
2025年3月末に発生したミャンマー地震においても、ASEANからはフィリピン、シンガポール、インドネシア、タイの保健省の緊急医療チームが派遣されました。これらのチームはARCHプロジェクトで能力強化され、またこれまでのプロジェクト活動を通じて築かれたネットワークや合同訓練での成果や学び等を活かしながら、現地での効果的な医療活動を実施しました。
大災害は忘れた頃にやってくる。そして次の大きな災害は前とは違う場所で起こるかもしれません。一方で、世界規模で考えると毎年どこかで大きな災害は起きています。故に大災害時の対応経験や災害に対する準備のための知見は、時代や地域・国を越えて、広く共有され、相互に学習し、役立つ知識が抽出されなければなりません。限られた人々の経験に基づくのではなく、そして日本の経験だけでなく、ASEAN各国の経験を共有し、さらにその他の世界の知見も融合し、グローバルにも共有できるような知識を創造することを目指してきました。また、技術面だけにとらわれることなく、ASEAN地域全体及び各加盟国における政策面、組織間連携面や制度面、学術研究の推進までを含めた多面的な成果を達成するため、ASEAN各国と日本の災害医療関係者の当事者意識を最大限に醸成することを意図し、旧来的な技術移転的な発想の技術協力ではなく、相互学習と知識共創を重要戦略としてプロジェクトを実施してきました。このような基本認識に基づくプロジェクトだからこそ、ASEANや日本以外の世界の災害医療関係者にも評価いただき、今回の受賞につながったと思います。
このARCHプロジェクトを通じ、日本とASEANの災害医療関係者が互いの状況を理解し、信頼関係を醸成するとともに、それぞれが災害医療にかかる知識向上と対応能力を高めてきました。今後、ASEAN地域もしくは日本国内、あるいはその他どこかの災害現場で、被災者に対する適切な医療支援活動が実施されることがより一層期待できると思いますし、時には日本とASEAN地域の災害医療関係者が同じ被災現場で協力して、より効果的な活動を行う場面も期待できると信じています。
ARCHプロジェクトが受賞したHumanitarian Award for Excellence in Disaster Managementの盾
WADEM2025受賞式の様子
ARCHプロジェクト関係者の集合写真
※参考記事
<ウェブサイト>
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