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AIで広がる、これからの社会福祉

掲載日:2026.06.09

イベント |

― ATCSW主催「倫理的社会福祉実践のためのAI活用に関する国際会議」を開催 ―

ASEAN地域における社会福祉人材育成プロジェクトは、2025年8月に始動しました。本プロジェクトは、ASEAN社会福祉・ソーシャルワーク研修センター(ATCSW)、タイ社会開発・人間の安全保障省(MSDHS)、JICAが協力して進める技術協力プロジェクトです。
社会福祉を支える人材の育成拠点であるATCSWの機能強化を通じ、ASEAN地域全体でより質の高い研修や学びの機会を広げることを目指しています。

世界ソーシャルワークデーに、国境を越えた知の共有

2026年3月31日、世界ソーシャルワークデーに合わせたサイドイベントとして、「倫理的ソーシャルワーク実践のためのAI活用に関する国際会議」がバンコクで開催されました。本会議は、JICAプロジェクトが国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)及びGlobal Institute of Social Work(GISW)と共催したものです。
会場のMSDHSには約50名が参加し、オンラインでは世界各国から約300名が参加。Facebookでのライブ配信も行われ、地域や国境を越えて多くの社会福祉関係者がつながる場となりました。
GISWのタン・ンゴー・ティオン氏が議長を務め、アメリカ、日本、シンガポール、タイ、インドから多彩な登壇者が集いました。

AIは、社会福祉の現場をどう支えるのか?

会議では、社会福祉分野におけるAI活用が着実に広がっている現状が紹介されました。AIは、事務作業の効率化や支援計画の立案、支援が必要な人々の早期把握など、すでに現場を支える存在となりつつあります。
その一方で、アルゴリズムによるバイアス、個人情報やプライバシー保護、そして「人間中心の支援」をどう守るかといった倫理的課題も重要なテーマとして取り上げられました。
参加者からは、「AIは人に取って代わるものではなく、専門職を支えるパートナーであるべき」という共通認識が示され、責任ある活用のあり方について活発な意見交換が行われました。

「人間中心のAI」をめぐるメッセージ

― JICAタイ事務所長 挨拶 ―

会議は、MSDHSのカンタポーン・ランシーサワーン事務次官の開会挨拶で幕を開けました。続いて、JICAタイ事務所の作道俊介所長が登壇し、AI活用において何よりも「人間」を中心に据えることの重要性を強調しました。
作道所長は、AIがケースマネジメントや政策立案など社会サービスを大きく変える可能性を持つ一方で、偏りや過度な依存といったリスクにも目を向ける必要があると指摘。
JICAがインドでのAI関連インフラ整備や、ケニアでのAI教育支援などを通じて「責任あるAI活用」を進めてきた経験を紹介し、 AIは人間のつながりを代替することはできませんが、適切に活用することで社会福祉従事者を支援し、サービス提供のアクセス向上に貢献できると強調しました。

各国の知見が交差するパネル発表

パネルディスカッションでは、国際社会福祉協議会(ICSW)東南アジア・太平洋地域代表のテオ・アイ・ファ氏やJICAプロジェクト専門家の横山明子氏が議論を進行しました。
日本、シンガポール、タイ、インドの登壇者が、それぞれの国・地域でのAI活用の取り組みを紹介。議論の中で、組織やセクター全体でのガイドラインの重要性と、責任ある効果的なAI導入の必要性が強調されました。

高齢者の孤独に寄り添うAI

― 日本からの研究事例 ―

東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史氏は、「高齢者の孤独感軽減のためのロボット支援コミュニケーション」に関する研究を発表しました。人間が介在するソーシャルロボット BOCCO emo を用いた4週間の介入を、日本の地域在住の高齢者68名に対して行い、孤独感の軽減、ウェルビーイングの向上が確認されました。このロボットは双方向コミュニケーションを可能にし、人間的な存在感を生み出しました。この研究は、アジアの地域社会における高齢者のメンタルヘルスや社会的つながりを支援する人間介在型AIの有効性を示し、AIが人間の努力を代替する限界やさらなる研究の必要性について活発な議論を引き起こしました。

政策と現場の両面から考える「倫理」

政策研究開発財団のウィプット・プーンジャルーン事務総長は、「倫理的ソーシャルワークのためのAI」について発表し、意思決定やケースコーディネーションの改善を通じて家族福祉や児童保護を支援するAIの役割を強調しつつ、人間の判断を中心に据える重要性を示しました。タイ医療ソーシャルワーカー協会のヤウワレート・カムマナート氏とリスキー・ジェナ氏は、タイにおける脆弱な人々への支援において、社会サービスや医療アクセスの向上を図りながら、倫理的で人間中心の実践を維持する形で技術を活用した経験を共有しました。

未来へつながる議論を胸に

閉会にあたり、ATCSWのサランパット・アヌマッラージャキット事務局長(当時)が総括を行い、登壇者、参加者、関係機関への謝意を表しました。
本会議は、AI時代における社会福祉の未来を、多様な立場から共に考える貴重な機会となりました。JICAは、このような対話と協働を大切にしながら、ATCSW及びMSDHSとのプロジェクトを通じて、ASEAN地域の社会課題に柔軟に対応できる社会福祉人材の育成に今後も貢献していきます。

社会開発・人間安全保障省事務次官による挨拶

JICAタイ事務所長による挨拶

イベント共催団体(MSDHS、JICA、GISW、ICSW)代表者

パネルプレゼンテーション(ハイブリッド形式)

パネルプレゼンテーションの登壇者(オンライン)

イベント会場参加者による集合写真