マダガスカルから世界の大舞台へ! 7人制ラグビー女子チーム、2024年パリオリンピックへの挑戦

2023.10.23

2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップを皮切りに、国内におけるラグビーの人気は一気に高まりました。現在フランスで開催されているワールドカップの熱狂の裏で、2024年のパリオリンピック出場を目指して日々汗を流し、努力しているチームがアフリカにあります。そのチームは、7人制ラグビー女子・マダガスカル代表チーム、通称マキレディース(マキはマダガスカル語でワオキツネザル)です。

“プロ選手”が1人もいないナショナルチーム

マダガスカルは、その自然の美しさや生態系の多様性で日本でもよく知られている国ですが、経済的には世界で最も貧しい国の1つという一面を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。国民の約79%が1日1.9ドル以下で生活しており(2021年、世銀)、経済的に不自由なく暮らせている人はほんの一握りです。そしてまた、国を代表するマキレディースの選手たちも例外ではないのです。
国内に男女ともにプロラグビーチームがないマダガスカルにおいて、選手たちはナショナルチームの試合や合宿が無い期間、自分たちの地元で仕事をしています。マキレディースの中には路上で物を売りながら家族を支えているシングルマザーの選手たちも多くいます。
ラグビーで生計を立てている“プロ選手”がいない、そんなマダガスカルの代表チームをJICAは海外協力隊のコーチ派遣を通じてサポートしています。

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戦術指導をする今井隊員

JICA海外協力隊の関わり、現れた成果

JICAがマキレディースに関わり始めたのは今から6年前、2017年に初代のラグビー海外協力隊員・中野祐貴さんを派遣した時からでした。当時は世界規模の国際大会に出場したことのないチームでしたが、隊員が現地コーチの意見をくみ取りながら、日本で培った知識やノウハウを共有しました。2019年には、中野さんのご縁から岐阜県郡上市がTokyo2020のホストタウン制度でマダガスカルを受入れ、日本遠征が実現しました。日本でチームとしての規律を学んだマキレディースは、2019年のTokyo2020予選アフリカ大会では3位、さらには2022年4月に開催されたワールドカップ予選アフリカ大会で史上最高の2位となり、同年9月に南アフリカで開催された7人制ラグビー女子ワールドカップへの出場を果たしました。ワールドカップ出場時には、二代目となるラグビー隊員・今井明男さんが派遣されており、マキレディースに帯同して最終戦の勝利に貢献。初出場初勝利の快挙はワールドカップのハイライトの一つとして紹介され、マダガスカル国内でも大きく報じられた、歴史的な1勝となりました。

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インド洋島嶼国スポーツ大会前の隊員4名とコーチ及びマキレディース

国際大会での完全優勝とパリ五輪への挑戦、そして次なる目標へ

南アフリカでの歴史的な1勝から1年が経った今年9月、国際大会の一つである第11回インド洋島嶼国スポーツ大会(インド洋に浮かぶ7つの国と地域が参加するスポーツ大会)がマダガスカルで開催されました。予選から決勝までの合計5試合を2日間で戦うという超過密な日程で試合は行われました。昨年から今井隊員が強化してきたパスとキックプレーに加え、この大会に合わせて派遣された3名の短期隊員、照沼康彦さん(読売広告社:元早稲田大コーチ、現東京工業大学ラグビー部監督)、磯谷竜也さん(島根県石見智翠館高校女子ラグビー部監督)、佐藤一斗さん(トヨタ自動車:元トヨタ自動車VERBLITZプロップ))によるセットプレーと守備に特化した指導の下、マダガスカルは予選から順調に試合を勝ち抜き、準決勝では56対0の大差でモーリシャスに圧勝、決勝ではフランス領レユニオンを26対0で倒し、見事に優勝を果たしました。
そして何より、彼女たちが今大会を通して相手チームに与えた得点は【0点】。15人制に比べて得点が入りやすい7人制ラグビーとしては類を見ない無失点での「完全優勝」を果たしました。この驚くべき成果は、彼女たちの団結力と高い技術力、そして何よりもパリオリンピック出場という最大の目標に向かって進み続ける揺るぎない闘志を物語っていました。キャプテンのクローディア選手は、「今井隊員をはじめとしたJICA海外協力隊員の指導に感謝しています。試合終了の笛(ノーサイド)が鳴るまで、決して諦めないことを誓います」と語っていました。
完全優勝の歓喜からすぐに気持ちを切り替え、次の目標に向けて練習に励んできたマキレディースは10月14日と15日、2024年のパリオリンピックへの出場を賭けたアフリカ予選に挑みました。出場が決まれば、マダガスカルとして初の団体競技でのオリンピック出場となり、多くの期待と夢を背負って全身全霊で戦いました。結果は残念ながらあと一歩のところで負けてしまいパリオリンピックへの道は予選で途絶えてしまいました。
しかし、「ラグビーを通じて外国の景色を見ることができました。マダガスカルでは学べないプレーの考え方やメンタリティの持ち方などを海外協力隊から学べました。」と、試合後のクローディア選手も語っていたように、海外協力隊が彼女たちに伝えたメッセージ、そして、これまでの選手たちの努力は確かにマダガスカルのラグビー界に残り、これからの新たな挑戦に活かされていきます。

次の目標は2026年に開催予定の7人制ラグビー女子ワールドカップです。マダガスカル女子ラグビーチームのこれからの活躍に、私たちも大いなる期待を寄せています。彼女たちの活躍と挑戦を見守り続けたいと思います。

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インド洋島嶼国スポーツ大会優勝後

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