読売巨人軍女子チームがニカラグアを訪問 -JICA海外協力隊が支援する現地女子野球チームと試合・交流!

2024.01.29

 スポーツ振興を通じた国際貢献のため、JICAと協力関係にあるプロ野球・読売巨人軍。その女子チームが、2024年1月6日から11日の日程で選手12名他のメンバーで中米・ニカラグアを訪問し、ニカラグアの女子野球チームとの交流試合や子どもたちへの講習会などを行いました。同国の女子野球の更なる活性化と、スポーツを通じた開発のために実現したものです。また、2024年は巨人軍創立90周年、JICAのニカラグア協力60周年。巨人軍にとって90周年の最初の公式イベントとして、また巨人軍女子チームにとって初めての海外遠征としてこの訪問が実現しました。
 読売巨人軍女子チームは国内トップクラスの選手20名を中心に、2023年より本格稼働しました。日本の女子野球は、女子野球ワールドカップで2018年第8回大会まで六連覇を果たすなど、世界でもトップレベル。同チームは女子野球界をリードし、新たな女子野球の歴史を創っていくことを目指しています。
 一方、ニカラグアでは野球は国技とされる人気のスポーツで、男子代表チームは2023年春のワールドベースボールクラシック(WBC)本大会にも出場しています。これまで16名の野球職種のJICA海外協力隊員が派遣されていますが、中でも2016年10月から2018年10月まで女子野球の振興のために活動した阿部翔太隊員は、「野球は男子のスポーツ」という考えがまだまだ根強い同国で、野球が女子の夢にもなるということを提案し、これは現在派遣中の河合賢人(たかひと)隊員にも引き継がれています。
 実はニカラグアでは、日本野球に対する強烈なイメージが根付いています。きっかけは50年以上前に遡ります。1972年11月、同国で開催された野球世界選手権大会に日本チームも参加。日本野球のレベルに国民は驚き、当時の日本チームの投手であった古屋英雄選手が大活躍したことから、今では同国のスペイン語で“Furuya”が“きりきり舞いにする”という意味として定着、日本野球が巻き起こした当時のセンセーションは伝説のように語り継がれています。ニカラグア国民が畏敬の念を抱く日本野球。半世紀の時を超えて今度は読売巨人軍女子チームが初めてニカラグアを訪問する形となり、訪問前から現地でテレビ放映が行われるなどの大きな注目と熱烈な歓迎を受けました。
 女子チームはまずニカラグアのキッズリーグなどの子どもたちに実技指導を行い、猛勉強したスペイン語と笑顔で子どもたちの心をぐっと掴みました。野球経験の無い小学校の子どもたちとの野球教室では、ボールに触れる楽しさだけでなく、相手が取りやすいようにボールを投げる「相手への気配り」も学ぶ機会となり、子どもたちは巨人軍女子選手を取り囲んで、笑顔で「ありがとう!野球チームに入ってもっと学びたい!」と喜びを表していました。

野球を初めて経験した小学生と真砂寧々選手

野球教室に参加した小学生に囲まれてスペイン語で挨拶する田中美羽選手

ニカラグア女子代表チームや女子リーグ優勝チームとの交流試合ではいずれも巨人軍が圧勝しましたが、ニカラグア側の懸命なプレーにも大きな声援が送られました。現地選手からは、「巨人軍の野球レベルの高さには驚くばかり。今回はヒットを打つこともできなかったが、もし再会できた時は、良い勝負ができるように努力したい」、「たくさんの観客の前でプレーをする事ができて嬉しかった。次は日本に行って試合をしたい」、「試合には負けてしまったが、とても刺激を受けた。今後の女子野球に貢献していきたい」、「日本からニカラグアに来てくれたことに心から感謝している」といった思いが伝えられました。

ニカラグア女子リーグ優勝チームとの試合を行った。収容人数4,000人のマサヤ球場に3,800人の観客が押し寄せた。試合後、マサヤ球場を一周しながら観客とハイタッチ。

 巨人軍の中には初めての海外渡航という選手もいましたが、笑顔と元気で現地を盛り上げました。「こんなに多くの人が球場に足を運んでくれたのは日本でも経験の無いこと」、「ニカラグアが大好きになった。いつか戻って来てこの国の女子野球をもっと盛り立てたい」といった感想を話す選手もいました。
 また、ニカラグア女子選手の一人は、以前河合隊員に、いつかソベラニア球場(今回の試合会場)で試合をするのが夢だと語っていたそうです。ソベラニア球場は主に男子プロリーグの試合で使用しており、彼女達はまさか試合ができるとは思ってもいませんでしたが、今回そこで2,000人という多くの観客の前でプレーする事ができました。河合隊員は「彼女の夢を叶えてくれた巨人軍にとても感謝しています。最初は小さな一歩かもしれませんが、その一歩からいつか大きな夢を叶える事が出来るんだと選手たちは学ぶことができたと思います」と語りました。

 ニカラグアでは「女性の活躍」、「ジェンダー平等の社会実現に向けた取り組み」が国の発展の重要事項とされています。世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数の世界ランキング(2023年)では調査対象国146国中7位(中南米地域でトップ)と非常に高く、男女格差が比較的小さいという結果が出ています。交流試合が行われた首都マナグア市及びマサヤ市の両市長とも女性で、二人が始球式を務めました。しかし、スポーツ活動の機会においては、実際は女子が男子の後塵を拝している面があります。巨人軍女子チームの来訪は、女性の活躍、ジェンダー平等を推進するニカラグア及びJICAにとって「ジェンダーと開発」の実践にもつながる貴重な機会となりました。
 JICAは今後も、海外協力隊の派遣などを通じて、「誰もがスポーツを楽しめる平和な世界」の実現に向けて努めていきます。

ニカラグア代表チーム、巨人軍女子チーム、ニカラグア野球連盟会長、マナグア市長(女性)、副市長、中村大使、JICA小谷所長の集合写真

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