天皇皇后両陛下が帰国した青年海外協力隊及び日系社会青年海外協力隊と御懇談
2024.11.07
帰国した青年海外協力隊員及び日系社会青年海外協力隊員の代表が9月26日、皇居(御所)において天皇皇后両陛下に御懇談の栄を賜り、派遣国での活動をご報告しました。帰国隊員と両陛下との御懇談は、1965年に青年海外協力隊が発足した当初から今日に至るまで続いています。
今回帰国した青年海外協力隊員及び日系社会青年海外協力隊員は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受け、日本への一時帰国や日本国内での待機を余儀なくされながらも、コロナ禍を乗り越えて派遣国での活動に従事しました。
今回両陛下にお目にかかったのはアジア、大洋州、アフリカ、中南米の国々に派遣されていた青年海外協力隊員7名、日系社会青年海外協力隊員1名です。御懇談に先立ち、JICA本部(東京都千代田区)で田中明彦理事長と面談しました。
前列左からビーバーズさん、高橋さん、田中理事長、園田さん、濱本さん、
後列左から 大塚理事長室長、杉村さん、田中さん、下村さん、市川さん、橘青年海外協力隊事務局長、和田青年海外協力隊事務局次長
ビーバーズ侑さん(キルギス派遣、職種:デザイン、神奈川県出身)は、キルギスの首都ビシュケク郊外の職業訓練校に配属され、15~18歳のデザイナーを目指す学生を対象に、グラフィックデザインの技術指導を行いました。広告デザインだけでなく、学生とともに現地アーティスト共同でアートプロジェクトを立ち上げ、平和をテーマに制作した作品の展示会を2都市で開催しました。また、現地企業とのコラボ商品の制作にも取り組み、生徒のデザイン技術と創造力向上に貢献しました。
生徒のデザインした靴下が商品化され、売り場を訪問した際の様子
高橋佳苗さん(タイ派遣、職種:障害児・者支援、福島県出身)は、タイ東北部にある、肢体不自由児が通う特別支援学校に配属され、スポーツを通した生徒の健全な育成を目指し、体育授業を実践しました。授業の実践においては、同僚と共に、より多くの生徒に運動の機会を提供できるよう工夫しながら取り組みました。また、それまで行われていなかった水泳授業の必要性や指導方法について現地教員と話し合いを重ね、現地教員のみで水泳指導を行える環境を作り上げるといった変化をもたらしました。
同僚と意見交換を重ね、体育で水泳の授業にチャレンジしている様子
園田珠紀さん(パラオ派遣、職種:環境教育、熊本県出身)は、パラオのコロール州にある公共事業・産業省公共事業局廃棄物管理課に配属され、学校や地域を巡回しながら環境教育やリサイクル促進のための啓発活動に取り組みました。日本の無償資金協力によって建設された廃棄物処分場において、訪問者向けの廃棄物学習教材の作成や、お店で広く使われている生分解性プラスチック袋の分解に関する実験など、現地の人々の身近な課題に着目した意識の啓発に貢献しました。
リサイクル回収を促し、捨てられるゴミの削減を目指して行われている資源回収の様子
濱本義実さん(パラグアイ派遣、職種:コミュニティ開発、広島県出身)は、パラグアイのセントラル県サンロレンソ市の国立大学内にある、新事業創設事業室に配属され、新たにビジネスを始めようとする起業希望者向けの支援を行いました。起業に関する基礎知識を学ぶ機会を提供するため、テーマ毎のオンライン勉強会の開催やホームページを活用した広報、教材作りに注力しました。また、現地の同僚を対象にしたパソコン操作の勉強会の開催、業務プロセス改善支援など、配属先のサービス向上にも取り組みました。
小学生向けに金融教育を実施する様子
杉村勇輔さん(ヨルダン派遣、職種:観光、東京都出身)は、2021年に世界文化遺産登録されたヨルダンの古都サルトにある歴史博物館に配属され、観光客の増加に向けて取り組みました。SNSを活用した情報発信、QRコードを用いた来訪者の満足度調査を導入するなど、DX化の推進に取り組み、また現地職員のITリテラシー強化にも尽力しました。ソフトウェアやアプリの使い方を現地職員に浸透させた結果、現在もSNSを活用した情報発信が継続されており、観光地としてのサルトの魅力発信につながっています。
観光局のSNSに掲載する写真を撮影する様子
田中翔さん(ルワンダ派遣、職種:コミュニティ開発、京都府出身)は、ルワンダ西部カロンギのコーヒー農家協働組合に配属され、若手農家のグループ活動、コーヒーツーリズムを通じたコーヒー産業の活性化に取り組みました。具体的には、若手農家がコーヒー産業に参入できるきっかけ作りとしてモデルファームを開始したほか、コーヒーシェア拡大のための新たな購入機会の創出、ホテルや旅行会社と提携したツアーの企画などを通じ、地域のコーヒーツーリズムの振興に貢献しました。
ホテルのスタッフにコーヒーの淹れ方をレクチャーしている様子
下村幸さん(ガボン派遣、職種:助産師、長野県出身)は、ガボンの首都リーブルビル市内にあるアケべ母子保健センターに配属され、母親学級、産後健診、望まない妊娠・若年妊娠の啓発活動に取り組みました。産後健診では、派遣当初、受診者数が少なく、検診センターが機能していない状況でしたが、幼児健診後に母親の産後検診を受診できる仕組みを作ることにより、母子の健康状態を確認する機会を創出し、受診者数の増加に貢献しました。
望まない妊娠、若年妊娠に対する啓発活動に取り組む様子
市川莉奈さん(ブラジル派遣、職種:小学校教育、愛知県出身)は、ブラジル北部アマゾナス州の州都マナウス市にある全日制の小中高一貫校に配属され、日本語の指導や日本文化紹介などの活動を行いました。日本文化の紹介として、現地の同僚と共に、折り紙、浴衣、けん玉、習字の指導やソーラン節の発表会を行ったほか、カルタ、相撲、夏祭りといった日本文化に関する教材作成や日本語の教科書改定に取り組みました。
小学校の授業で日本文化「夏祭り」を紹介し、浴衣の着付けを行った時の様子
御懇談後、参加者からは、「両陛下が熱心に活動報告を聴いてくださったことに感銘を受けた」、「激励のお言葉をいただき、今後の大きな励みとなった」などの感想をいただきました。
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