天皇皇后両陛下が帰国した青年海外協力隊及び日系社会青年海外協力隊と御懇談
2025.10.24
帰国した青年海外協力隊員及び日系社会青年海外協力隊員の代表が9月24日、皇居(御所)において天皇皇后両陛下に御懇談の栄を賜り、派遣国での活動をご報告しました。帰国隊員と両陛下との御懇談は、1965年に青年海外協力隊が発足した当初から今日に至るまで続いています。
今回帰国した隊員の中には、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受け、日本への一時帰国や日本国内での待機を余儀なくされた方もいましたが、様々な困難を乗り越えて派遣国での活動に従事しました。
今回両陛下にお目にかかったのはアジア、大洋州、中東、アフリカ、中南米の国々に派遣されていた青年海外協力隊7名、日系社会青年海外協力隊1名です。御懇談に先立ち、JICA本部(東京都千代田区)で田中明彦理事長と面談しました。
前列左から佐藤さん、上瀧さん、田中理事長、木田さん、紅井さん、
後列左から 林理事長室上席秘書、大塚青年海外協力隊事務局長、今井さん、内田さん、山川さん、山本さん、和田青年海外協力隊事務局次長
内田善也さん(インドネシア派遣、職種:公衆衛生、北海道出身)は、南スラウェシ州タカラール県の保健局に配属され、健康で清潔な生活習慣を目指した啓発活動、住民のニーズに基づいた健康教育、SNSを利用した住民への情報発信の3つの活動を中心に取り組みました。健康維持促進を目的に、人形劇や視覚的にわかりやすい教材を活用、配属先の同僚とともに地域に入り、住民の視点に立った啓発活動に尽力しました。
地域住民向けにデング熱に関する啓発活動を行う様子
患者にリハビリ支援をする様子
佐藤加奈さん(ウズベキスタン派遣、職種:理学療法士、宮城県出身)は、首都タシケント市の国立障害者リハビリ・センターに配属され、患者のリハビリに有効な器具の提案やSNSを活用した院内だよりの発行、現地の医療スタッフ向けの実技指導や研修などを通じて、患者の健康意識の向上、現地スタッフの育成に取り組みました。また、地方の関連施設などと協働し、地域全体に医療や福祉への関心を高める機会を提供しました。
上瀧桃佳さん(ソロモン派遣、職種:小学校教育、千葉県出身)は、ガダルカナル州のセントメリー・タナガイ小学校にて、算数教育の質向上に取り組みました。教員の授業力向上と児童の学習意欲・学力向上を目標に掲げ、現地教員を対象とした研修会を継続的に実施しました。こうした取り組みにより、教員が自ら授業計画を考え、児童主体の授業が行われるようになりました。さらに、児童の学習意欲を高めるために、視覚的にわかりやすい教材やゲームを授業に取り入れるなどの工夫を提案しました。
配属先の小学校で算数の授業を行う様子
配属先の音楽院で高校生にピアノを指導する様子
木田麻貴さん(チュニジア派遣、職種:音楽、福島県出身)は、中部沿岸部モナスティール市にある公立のダンス・音楽院に配属され、6歳から18歳の生徒を対象にピアノの個人指導を行いました。生徒のレベルに合わせた練習方法と教材を提案し、演奏技術の向上に貢献しました。また、指導体制を構築するために、現地教員と話し合いを重ね、指導方法や試験の内容、採点方法を検討し、ピアノ指導のカリキュラム作成に取り組みました。
今井明男さん(マダガスカル派遣、職種:ラグビー、群馬県出身)は、首都アンタナナリボ市のマダガスカルラグビー連盟に配属され、女子7人制ラグビー代表チームのアシスタントコーチとして活動を行い、国際大会での複数回の優勝に貢献しました。また、「ラグビーを通じて女性が輝く社会を実現する」という目標を掲げ、教育セミナーを企画し、女子選手が自分で考え、行動する機会を設けるなど、広い視野で選手の育成に取り組みました。
シニアチームの女子選手に、練習の目的について伝える様子
農業組合設立に向けて農民と話し合いを行う様子
山本祐輔さん(ベナン派遣、職種:コミュニティ開発、東京都出身)は、南部の小都市アジョウン市の村落開発支所に配属され、農民の生活改善活動に取り組みました。村の小規模農家が協働して農業を行うための農業組合を設立し、農民の収入向上に尽力しました。組合では、コンポスト肥料を導入し、作物の品質と収穫量の向上を図り、さつま芋などの収穫物に有機野菜としての付加価値を加えることで収益と市場の拡大を目指しました。
紅井万里絵さん(グアテマラ派遣、職種:栄養士、富山県出身)は、西部高原地域トトニカパン県の農牧食糧省事務所農村家政部に配属され、地域住民の栄養改善や食育の推進に取り組みました。配属地域の課題を把握するために食生活調査を実施し、現地の農業普及員とともに住民グループを訪問。地域の課題に合わせ、栄養をテーマにした講話や、地域の農産物を活用した調理実習を行い、住民が日常的に取り入れやすいレシピを提案しました。
農村の家庭を訪問し、女性たちとともに調理実習を行う様子
家族に日本語で手紙を書く授業で、子どもたちに指導する様子
山川雄平さん(ブラジル派遣、職種:日本語教育、福井県出身)は、サンパウロ州マリリア市の日系人協会が運営する日本語学校に配属され、日本語の授業と課外活動などに取り組みました。日系2世、3世の子どもから大人まで、幅広い年齢層に応じた授業内容を提案し、日本語の指導を行いました。また、日本文化紹介や日本料理教室を開催し、日本語学習者以外にも日本文化に触れてもらう機会を提供しました。
御懇談後、参加者からは、「協力隊の活動に深く関心を寄せてくださり、幅広くご質問いただいた。両陛下の一人ひとりへのお心遣いに感銘を受けた。」、「あたたかいお言葉をいただき、今後の人生の大きな励みになった。」などの感想をいただきました。
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