JICAは、2003年のイラク復興支援国会合で日本政府が総額50億ドルの資金協力を表明して以降、イラクの着実な経済発展に大きく貢献してきました。同会合の直後から、日本及び近隣の第三国での研修事業を実施するなど、主として人材育成に向けた各種技術協力を開始するとともに、2008年1月には同国初の円借款事業となる合計8件(総額約10億ドル相当)の貸付承諾を行い、エネルギー、運輸、農業など優先度の高い経済基盤の復興または改修に支援を表明しています。
これらJICA協力事業の円滑な実施促進のため、JICAはまず2009年にフィールドオフィスを置き、2011年には正式にイラク事務所を開設しました。そして事務所設立の後もJICAはイラク側との協力関係を積極的に構築しています。
その積み重ねから、JICAによる研修事業の参加者総数は1万人を超えるとともに、昨年度(2023年度)までの円借款供与も合計36件に上り、総額は約1. 2兆円に達しています。更に、2021年12月には初の海外投融資も実現し、同国最大の商業港ウンム・カスルで民間事業者による新ターミナル整備計画に直接投資を行っています。
私は当事務所の所長として2024年4月にイラクに赴任して参りましたが、引き続き円滑な事業実施と事業成果の早期発現に向けて努力して参ります。特に現場にいるという事務所の利点を最大限に活して、イラク政府の関係省庁およびその他のステークホルダーと常に緊密に連携することを図ります。幸い、事務所の人員規模も拡大しており、日本からの職員を増員し、現地の専門職スタッフも新規に採用しており、こうした事務所体制の強化を通じて協力事業の量的拡大および質的向上に一層取り組む所存です。これからも「信頼で世界をつなぐ」というJICA全体のビジョンと共に、現地で長期にわたり一緒に汗を流すことを通じて、日本とイラクとの二国間関係の絆を育むことに貢献して参ります。
イラク事務所長
鈴木 浩
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