所長あいさつ

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右:佐野前所長、左:小森所長

今年(2019年)8月は第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されます。前回2016年の第6回(TICADVI)はケニアの首都ナイロビで開催されました。TICADの歴史上初めてのアフリカでの開催でしたが、ケニア政府は見事にそれを成功させ、アフリカの力強いオーナーシップを示すことになりました。その成果は「ナイロビ宣言」として取りまとめられ、1)経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進、2)質の高い生活のための強靱な保健システム促進、3)繁栄の共有のための社会安定化促進、の3本柱への取り組みが謳われています。

前回TICAD開催以降、ケニアでも大きな政治的変化がありました。2017年の大統領選挙に伴う対立とその融和です。2017年の大統領選挙は異例の事態となりました。2期目を狙う与党ウフル・ケニヤッタ大統領がいったん勝利したものの、最高裁判所は選挙結果を無効とし、やり直し選挙が行われました。野党側は選挙をボイコットし、ケニヤッタ大統領が再選を果たしましたが、民族間の対立や政治上の分断を深める結果となりました。しかしながら、2018年3月9日、ケニヤッタ大統領と野党を率いるライラ・オディンガ氏が、共同声明「新しいケニアへ橋をかける(Building Bridges to a New Kenya Nation)」を発表し、私たちを驚かせました。両者の和解により、1963年の独立以降続いてきた民族間の対立を超え、新しい時代が到来することを願って止みません。

ケニアは多くの国立公園を持ち、サファリが有名ですが、野生動物の中でもライオン、ヒョウ、ゾウなど5つの目玉となる動物はビッグ・ファイブ(Big Five)と呼ばれています。これになぞらえて、ケニヤッタ大統領は2期目の主要政策を「ビッグ・フォー(Big 4)」と称し、(1)製造業の強化、(2)食料安全保障と栄養、(3)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注)、(4)誰もが購入可能な住宅、の4つの柱を打ち立てました。

(注)UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味します。

ビッグ・フォーの4本柱は、ナイロビ宣言の3本柱と重なり合っており、JICAがケニアの人々とこれまで共に積み重ねてきた取組みが、まさに対応しています。一例ではありますが、食料安全保障の分野では稲作プロジェクトを通じコメの生産性向上を実現するとともにムエア灌漑による二期作の実現とコメの生産量の増大を支援しています。また、UHCでは円借款による財政支援と専門家派遣の組合せでケニア政府のUHC推進政策の立案と実施を支えています。加えて、経済特区(SEZ)整備を含むモンバサへの包括的支援、産業人材育成を通じた「カイゼン」への取り組みは製造業の推進を後押ししています。

JICAは今後も、ケニアとアフリカのニーズに応える開発協力を促進していきます。そのためにも、民間企業、NGO、大学・研究機関等の開発パートナーとの連携を強化し、JICAがこれまで培ってきた経験に、新しいアイデアやイノベーティブな技術を取り込んで、より効果的な協力を探求していきたいと考えています。

そして、ケニアの人々が、互いに結びつき、調和できる、安定した社会を構築し、誰もが取り残されていると感じることがないよう、ケニアの人々による国づくりに対して、私たちは最大限支えていきたいと希求しています。

JICAは2017年にビジョンを新しくし「信頼で世界をつなぐ」としました。私たちは自らの活動を通じて、信頼で世界をつなぎ、人々がよりよい未来を信じ多様な可能性を追求できる世界を目指していきます。

ケニアおよびアフリカの開発協力に対して、JICAとともに歩んでくださる皆様、ご理解をいただき応援してくださる皆様、そして、これからともに歩もうとしてくださる皆様に、改めて、この場を借りて御礼申し上げます。

2019年4月
ケニア事務所長
小森 克俊