「世界もあなたも、可能性に満ちている。」-日本と途上国、人々の暮らしと子どもたち、違いとは?-

2022年12月2日

川合孝弥(2022年度1次隊 青少年活動)

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伝統衣装を着てお気に入りの一枚

中学の時に英語のテストで"青点(赤点の半分以下の点数)"を取ったことのある私が、大人になって高校の英語教師に。そして今、これまで聞いたことのなかった中央アジアのキルギスという国で子どもたちに英語を教えています。想像していたよりずっと生活しやすく、派遣された学校の授業は一部日本よりIT化が進んでいます。驚くほど積極的に英語を話そうとする生徒に囲まれ、海外の大学に進学したいなどと希望を語り、未来にいろいろな可能性を秘めているのはどこの国の子どもも変わりません。ここでの2年間に何ができるか、どれだけこの子たちの可能性を広げることができるか、また学校や同僚の先生方にどれだけの貢献ができるか精一杯取り組んでみたいと思っています。

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日本での担任クラスの卒業記念(教え子の卒業は教師冥利に尽きる瞬間!)

2020年4月、それまで担任を務めていた3年生の卒業を見届けた後仕事を休職、これから始まるはずだったJICA海外協力隊訓練が延期に(暫くして中止に)なりました。突然、人生で初めて仕事のない宙ぶらりんの状態になり、コロナの蔓延と共に世界が大混乱に陥る中、これまで温めてきた情熱と期待が行き場を失ったあの時の喪失感は忘れられません。幸い元いた高校に戻ることができ、縁あって国際理解コースを担当することに。英語教員として、またJICA中部で開催された開発教育研修への参加や、2018年にはJICAの事業でパラグアイの協力隊員の活動現場を訪問した経験もあって、前向きに取り組んでいました。

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英語教育について同僚教師と研修会を開催

今、開発途上国と言われるキルギスで暮らしながら改めて国際理解教育、またキャリア教育について考えています。日本でキャリア教育というと、卒業後の進学、就職に目が行きがちではないでしょうか。もちろん、すぐ目の前のキャリアはとても大事です。また、海外で仕事というと最初に想像するのはアメリカやヨーロッパなどのいわゆる先進国ではないでしょうか。一方で、周りを見渡すと先進国から来た人だけでなく開発途上国と呼ばれる国々から来た人が多いことに改めて気づかされます。多くの場合、彼らのことを呼ぶとき"外国人労働者"という表現を使い、"多文化共生"という言葉も開発途上国から来た人を主に意識する人も多いと思います。私がいた愛知県名古屋市には多くの外国から来た方々が暮らしています。私の自宅近くにも外国の方が働く工場があるのですが、幾度か日本人の上司と思われる人が外国人従業員に対して大きな声で怒鳴りあげているのを目にすることがありました。見ていて気持ちのいいものではなく、一度その怒鳴っている人に声をかけたことがあります。その方曰く『外国から来た従業員が言われたことをやらない』と愚痴をこぼされ、コミュニケーションがうまく取れず仕事が思ったように進まないことにストレスをためているようでした。

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同僚たちとの食事会にて

私がキルギスにきてから、いろいろな人に出会いお話しする中で協力隊経験について印象的な言葉を聞きました。

『協力隊に参加して、これまで労働力と見ていた途上国の人が"フレンド"になった』

私たちは、知らず知らずのうちに途上国の人に対して失礼なものの見方をしていたのかもしれません。それにはなにか原因があるのでしょうか。例えば、キルギスは日本と違って陸続き、周りを4つの国々に囲まれ多くの"外国人"が歴史的にも今も行き交っています。私は外国人としてここに暮らし、職場でもどこに行っても言葉が上手く通じずコミュニケーションもままならないことばかりですが、親切にされることばかりです。島国として長く独自性を保ってきた日本人は陸続きの多民族国家よりひょっとして"違い"に弱いのかもしれません。ですが、日本も昔は多くの国々に分かれていたこともあったはずです。違いというものを国家や民族・宗教だけじゃなく、老若男女・年齢や学歴など普遍的にあるものととらえると、目の前の相手を尊重して一緒に物事を進めていくのに国籍や宗教など目に見える大きな違いはそこまでの障害にならないのかもしれません。国際理解教育や多文化共生とは、いろいろな違いに対してお互いが感じる垣根を低くしていくことなのかなと思い始めています。

最後に、ようやく待ちに待ったJICA海外協力隊としての派遣です。初めての途上国での長期生活を存分に楽しみつつ、多くの物を見て、経験して、挑戦していきたいと思います! そして、日本の職場に復帰した時にここでの経験を多くの生徒たちと共有したい、私の新たな挑戦を彼らの未来への挑戦に対する勇気に繋げたい、「世界もあなたも、可能性に満ちている。」と自信をもって伝えることができる経験をしたいと思っています!!

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「先生の日」に職場の同僚と一緒にダンスを披露しました

(注)『世界日記』でブログもやってます

(注)派遣前の訓練の様子はこちらをどうぞ