ラオスの新型コロナウイルス検査体制へのJICAの貢献

2020年6月10日

ラオスでは4月12日に19人目の新型コロナウイルス感染者が出てから50日以上、新しい患者は確認されていません。しかし検査は現在も行われています。

ラオスでのPCR検査を行う機関の一つに、ラオス国立パスツール研究所(以下 パスツール研究所)があります。JICAはSATREPSプロジェクトとして2014年から5年間、パスツール研究所における感染症対策研究を支援しました(注)。現在の新型コロナウイルス診断の場では、JICAが導入した機材でDNA塩基配列の解読が行われ、育てた人材が活躍しています。

【画像】

パスツール研究所の寄生虫学ラボ研究者、Dr. Sengdeuane Keomalaphetさんは、このSATREPSプロジェクトを通じ、日本の国立国際医療研究センター(NCGM)研究所での研修に2度参加し、マラリアのPCR検査や遺伝解析を学びました。SATREPSプロジェクトが開始したころはまだ修士課程の大学院生で、石上盛敏JICA専門家が指導を手伝ったこともあります。現在のパスツール研究所が新型コロナウイルスのPCR診断を行うにあたり、ウイルス学ラボの職員だけでは人手が足りないことから、寄生虫学ラボからSATREPSプロジェクトメンバーでもあるMs. Pheovaly SOUNDALAとMs. Sonesimmaly SANNIKONEともに、彼女も参加することになりました。

【画像】

【画像】

他にもパスツール研究所には日本で学んだ職員がいます。1人はウイルス学ラボの研究者、Dr. Somphavanh Somlorさん。彼女は2014年12月に日本の国立感染症研究所が主催したエボラウイルスの短期研修に参加しました。普段はデング熱ウイルスのPCR検査を行っていて、毎週、デング熱患者数を取りまとめています。

もう一人はワクチン予防疾患ラボの研究者、Dr. Siriphone Virachithさんです。彼女は東京医科歯科大学大学院で博士号を取得しました。留学する前からパスツール研究所の職員であり、2015年1月には国立感染症研究所主催の感染症研修に参加しています。

また、ラオスでの新型コロナウイルスの中心的なPCR診断機関である国立検査疫学センター(National Center for Laboratory and Epidemiology:NCLE)の現所長、Dr. Phonepadith Xangsayarathさんは、長崎大学熱帯医学研究所でマラリアの研究を行い博士号を取得しました。ラオスに戻ってからはSATREPSプロジェクトのメンバーとして、パスツール研究所でJICA専門家と一緒にマラリアの研究やフィールド調査を行ったこともあります。まだ40代のとても若い所長で、現在ラオス保健省が行っているCOVID-19に関する記者会見にも同席しています。

ラオスでは、新型コロナウイルスを始めとする感染症の対策現場では、日本とゆかりのある人たちがそれぞれ責任のあるポストで健闘しているところです。

(注)「マラリア及び重要寄生虫症の流行拡散制御に向けた遺伝疫学による革新的技術開発研究プロジェクト」2014年5月~2019年4月 JICAとAMED(日本医療研究開発機構)が共同支援を行う「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の1つ。日本の国立国際医療研究センター(NCGM)研究所が実施。