所長あいさつ

2021年8月よりJICAマダガスカル事務所長を務めております、田中と申します。
これまで、コートジボワール、ブルキナファソ、セネガルと西アフリカ仏語圏での駐在経験がありますが、今般、親しんだ地域を離れてマダガスカルに参りました。

マダガスカルは、アフリカ大陸の東南部、モザンビーク海峡を挟んでインド洋に浮かぶ世界で4番目に大きな島国(日本の1.6倍の面積)です。ゴンドワナ大陸に遡る古い地史と多様な地形、その多くが固有種と言われる独特な動植物、さらに鉱物資源等の豊かな天然資源にも恵まれています。そこに住む人々は、長い歴史の中で、言語・伝統宗教・生活様式等にアジア・アフリカ・中東の影響を受けつつ独自の文化を育んでいます。こうしたことから、地理的にはアフリカに位置するものの、「マダガスカルは、アフリカではなく、アジアでもない、マダガスカルなのだ」と考えるマダガスカル人が多いということにも納得です。

【画像】

魅力および潜在力にあふれる側面とは裏腹に、マダガスカルの1人当たりGNIは480ドルと最貧国の1つに留まっています。加えて1960年の独立以降、繰り返し起こる政治危機の度にGDPが漸減し続けているという国でもあります。なぜマダガスカルの発展が足踏みし続けるのか、「マダガスカルの謎と矛盾」というレポートが出ているほどです。さらに、新型コロナウイルスによる経済への打撃は大きく、NGOの調査によれば生活水準の見通しを悲観的に捉える人が7割に上るという厳しい状況です。

こうした中、JICAは「経済開発と社会開発のバランスの取れた持続的開発」を目指し、農業・農村開発(稲作、市場志向型農業振興SHEP)、経済インフラ開発(トアマシナ港拡張、アンタナナリボ‐トアマシナ経済軸開発)、社会セクター開発(みんなの学校プロジェクト、病院5S、栄養改善)、の三分野を中心に事業を展開しています。膨大なニーズに柔軟かつ迅速に応え、開発効果の最大化を図ることを念頭に、日本の民間企業・大学・NGO、他開発パートナー等多様なアクターとの連携に積極的に取り組みたいと考えております。
また、青年海外協力隊の派遣は、2022年には20周年を迎えます。マダガスカルにはサブサハラアフリカで2番目に多い日本語学習者がおり長年国費留学生を輩出していますが、JICAもABEイニシアティブをはじめ近年留学プログラムを拡充しております。開発協力の土台として、こうした人的ネットワークの強化も引き続き図って参ります。

また、当事務所は、モーリシャス共和国とコモロ連合も兼轄しています。
モーリシャスでは、2020年8月に起きた船舶座礁・油流出事故対応の一環として、環境モニタリング、零細漁業開発、油防除の協力を実施します。高中所得国で、アフリカへのエントリーポイントになる潜在性を持っており、従前より実施している環境・気候変動対策・防災分野への協力を継続しながら、パートナーとしての関係構築を模索しているところです。

コモロ連合は同じ小島嶼国ですが、過去の政治危機の影響により特異な政体を持つ脆弱な貧困国です。過去のアセットや南南協力・三角協力を通じ、零細漁業振興や母子保健等の分野での支援を継続して参ります。

ポストコロナ時代の協力を模索する中で、2022年にはTICAD8が予定されています。各国の風土、歴史、社会経済状況を踏まえ、人々のニーズに耳を傾けつつ、開発協力を通じ、マダガスカル・モーリシャス・コモロの発展、日本との信頼強化に、微力ながら事務所一丸となって貢献できれば幸いです。

JICAマダガスカル事務所長
田中 香織