マラウイ点描「民主国家マラウイと共に歩むJICA」

2021年2月18日

アフリカの温かい心(The Warm Heart of Africa)と呼ばれ、その名の通り心温かい人達が多いアフリカの小国マラウイ。近年は一定の経済成長がみられるものの、依然として世界最貧国の一つとされ、多くの開発課題を抱えています。開発の視点を踏まえて見えてくるマラウイの「今」について、事務所員・専門家からお届けします。

昨年、マラウイは英国エコノミスト誌のカントリー・オブ・ザ・イヤー2020を受賞しました。国際NGOのフリーダム・ハウスはコロナ禍において80か国で民主主義や人権配慮に後退がみられていると報告していますが、マラウイでは大統領選を巡り自由と民主主義のために国民が立ち上がったことが評価され同賞の受賞に至りました。

2019年5月の大統領選挙で現職が僅差で再選を果たした直後、野党側の訴えから選挙結果の集計の不正を巡り憲法裁判が行われました。2020年2月一審判決を支持するかたちで最高裁判所は集計の不正により同選挙結果を無効とし、再選挙を命じました。この判決確定までの間、市民のデモは全国に広がり、行政は停滞、一部治安の混乱も生じました。判決後、コロナ禍のただ中ながら各地で「密」な再選挙のキャンペーンを経て、6月のやり直し選挙では過半数を獲得しチャクウェラ大統領が誕生しました。野党が逆転勝利した再選挙はアフリカ大陸で初ケース。小国の出来事が世界で報じられました。

そんなマラウイですが開発においては依然最貧国です。一人当たりGNIは380米ドル、飲用水入手に30分以上かかる割合は4割超え、道路舗装率は3割弱、全国の電化率は14.6%。民の多くは天水農業に依存し、主な外貨獲得手段はタバコの葉です。近年も人口は約3%の増加率で膨らみ続け、コロナ禍で国家財政は厳しさを増すなか開発課題は山積しています。

多くの開発課題があるなか、JICAは農業、人材育成、インフラの3つの柱を掲げ、マラウイの開発課題に取り組んでいます。例えば農業では農村の自立を目指し、MA-SHEPという市場志向型アプローチでの協力を展開しています。また、天水農業からの脱却を目指し、中規模灌漑開発技術協力も実施してきました。次いで人材育成では主に行政官の能力向上を目的に2019年度末時点で累計3,500人以上を日本及び第三国での研修プログラムに参加する機会を創出しました。さらに、インフラ開発では社会経済基盤の強化を目指し、航空セクターでは首都の空港建設への支援以来、その後の施設の改修や国際空港としての安全性向上のために資金協力及び技術協力を実施してきています。道路セクターでは、商業都市ブランタイヤ中心部の道路の拡幅整備や橋梁建設を支援し、物流の効率向上に資する協力を実施しています。電力セクターでは発電容量拡充のためテザニ水力発電所を増設し、人々の生活及び産業の基盤強化のためにマラウイ政府とともに取り組んできています。

今年、1971年に開始した青年海外協力隊の派遣から50周年を迎え、累計派遣数は1,800名を超えます。これまで多くの日本人がマラウイの人々と共に汗を流してきました。日本がマラウイの開発と歩んできた歴史は各所に刻まれており、両国が信頼を礎とした絆で結ばれていることを感じます。

いま、多くの支持を得て誕生した政権に対し、過去の血縁主義や汚職に別れを告げ、公正な開発を進めるよう民の期待が高まっています。政権のリーダーは富の創造と自立をビジョンとして示しつつ、権威主義的な体質やドナー依存のマインドセットの変革を呼び掛けているほか、安定した国際関係維持のため諸外国との友好関係構築にも力を注いでいます。独立以来維持してきている平和と、民主主義を守る土壌は公正な開発を進めるうえで重要な基礎です。それをどう価値あるものとして生かしていくのかが今後の課題です。

JICAは自由と民主主義の価値観を我が国と共有するマラウイの開発のパートナーとして、日本の開発経験を伝え、自助の精神を涵養しながらこれからもアフリカの友を大切に共に歩んでいきたいと考えます。SDGsを掲げ、世界中で持続的な社会づくりに取組む時代において、マラウイ、日本双方が相互に課題解決のために協力し、よりよい明日を築いていきたいと思います。

(JICAマラウイ事務所 和田泰一)

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デモの様子

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大統領就任

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協力の写真(農業セクター/中規模灌漑開発)

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協力の写真(インフラセクター/カムズ国際空港)

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協力の写真(保健セクター/COVID19緊急支援)