所長あいさつ

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ナイジェリアと聞くと、どのようなイメージを思い浮かべられますか?

ナイジェリアはアフリカ最大の人口(約2億96万人、2019年)を抱え、日本の約2.5倍もある国土に250以上と言われる民族が住む、多様性に富んだ国です。原油や天然ガスなど豊富な天然資源を有するほか、その国土中央には二大河川であるニジェール川とベヌエ川が流れ、熱帯雨林からサバナ、ステップに至る幅広い気候帯や高原地帯もある、豊かな植生に恵まれた国です。

首都アブジャは、1976年に旧首都であるラゴスから遷都した計画都市です(事実上の遷都は1991年)。その計画には日本人建築家・都市計画家である丹下健三氏も関わりました。首都アブジャの大通りには、国立モスク(National Mosque)と国立教会(National Christian Center)が徒歩圏内に対となって建てられており、この国の多様性を象徴しています。

ナイジェリアは西アフリカにおける文化や芸術の発信地でもあり、詩人・劇作家のウォーレ・ショインカ氏はアフリカで初めてノーベル文学賞を受賞しました。映画産業も盛んで、ナイジェリアの頭文字をとって「Nollywood(ノリウッド)」と呼ばれています。

スポーツではサッカーの強豪国で、日本が準優勝した1999年のワールドユース(現U-20ワールドカップ)はナイジェリアで開催されました。ナイジェリア人と話していると、欧州で活躍する日本人選手の名前が話題に出ることもあります。

様々な発展の可能性を秘めたナイジェリアですが、国内では多くの課題も抱えています。ナイジェリアはアフリカ大陸随一の経済大国で、そのGDPはナイジェリア1ヵ国でサブサハラ・アフリカ全体の約4分の1を占めます。近年はスタートアップの一大拠点でもあります。一方で経済発展の恩恵が国内に行き渡っておらず、国内の格差や貧困は大きな課題です。近年ではインドを抜き世界最大の貧困人口(1日1.9ドル以下で暮らす人口は8,700万人、総人口に占める貧困人口の割合は約43%)を抱えていると言われ、不安定な治安情勢がこうした状況に拍車をかけています。

JICAは日本政府の国別開発協力方針に沿って、3つの柱で支援を行っています。

一つ目は、質の高い経済成長のための基盤づくりです。急激な都市化に伴う膨大なインフラニーズに対応するため、経済活動の基盤となる基幹インフラの整備を支援しているほか、天然資源に依存した産業構造からの多角化、起業家・スタートアップを含む産業振興、水・廃棄物管理分野などの協力を行っています。また、農業はGDPの約2割、労働従事者の約5割を占める主要産業ですが、小規模農家の能力強化やコメの品質向上などに取り組んでいます。

二つ目は、包摂的かつ強靭な保健・医療システムの整備です。これまで母子保健や保健施設へのアクセス改善などを支援してきたほか、多様な開発パートナーと連携して実施したポリオ・ワクチンの供給は、2020年8月のポリオ撲滅宣言に大きく貢献しました。近年は、特に感染症対応能力の強化や、食を通じた母子の栄養改善などの協力を行っています。

三つ目は、北東部などの紛争影響地域に対する平和と安定の促進です。国民から信頼される政府の樹立と強靭な社会の形成を通じ、紛争を発生・再発させない強靭な国・社会づくりを支援しています。明治以降の近代化において「和魂洋才」を進めた日本の開発経験はユニークで、国際機関とも連携しながら、広島の戦後復興における地方自治体の役割などを共有しつつ、関係機関の能力構築支援を行っています。

独立から60年の節目であった2020年は、日本との外交関係樹立60周年でもありました。いまだ国内に多くの課題を抱えるナイジェリアですが、「アフリカの大国」として地域の発展にも大きな役割が期待されています。これまでの信頼関係や日本の強みを活かしつつ、「誰一人取り残さない」社会の実現に貢献していきたいと考えています。

JICAナイジェリア事務所長
中川 享之