熱帯の内陸地域に特有の少し湿ったむっとした熱気、道路に無造作に並ぶ送迎車の列、赤茶けた原っぱの上で器用に足場を組む工事現場の男たちの逞しい背中、地平線まで続く白く光る空。
「これがナイジェリアの首都…」
空港内の雑踏から抜け出して20年振りのアフリカの空気を吸う。どこか懐かしい匂いがする。
ナイジェリアは、経済、人口、歴史、社会、文化など多くの面でアフリカを代表する大国の一つだ。発展の余地は計り知れない。もちろん解決すべき問題も多くある。
自分はどのように貢献出来るだろうか?この数ヶ月の間、あれこれ考えていたが、欲張り過ぎてなかなか纏まらない。
悶々と悩む日々を送っていたある日のこと、子供の頃ラジオで聴いて大好きになった、あの穏やかで柔らかい歌声がどこからともなく聴こえて来た。
「想像してみて、国境も宗教もなく皆が平和に暮らしている世の中を。
想像してみて、強欲さも飢えもなく皆が分かち合う世の中を。
想像してみて、ただ青い空の下で皆が今日この日を生きている世の中を。」
(John Lennon "Imagine")
アフリカ一豊かな自然の恵みを、250以上もの多様な民族グループが共に分け合い、一つの共同体として平和な社会を築くことができたら?
2億人もの国民が、平均年齢が20歳にも満たない若い力が、健康に生活し、それぞれの夢を実現できる機会を平等に得ることができたら?
多くの国民が生業とする農業で、誰一人取り残すことなくその生産、所得を倍増させて、豊かで満たされた農村を共に創ることできたら?
アフリカ有数の人材とネットワーク、巨大国内市場、規制のおおらかさを活かして、アフリカ、いや世界中の起業家が集まるベンチャー特区を創出できたら?
可能性無限大のナイジェリア。
その未来を育む2億枚のパズルの一つのピースとして、ちっぽけな存在かもしれないが、たゆむことなく一隅を照らし続けられたらと思う。
JICAナイジェリア事務所長
譲尾 進
scroll