jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

地域概況

東南アジア

未来の共創パートナー

2023年は日本ASEAN友好協力50周年という節目の年でした。日本と東南アジアは相互に学び、地域的な課題に加え気候変動などの世界的な課題に共に取り組む重要な「共創」パートナーとして、連携を強化していく姿勢を示しました。

近年、東南アジアは目覚ましい経済発展を遂げ、世界にその存在感を高めています。一方、開発課題は多様化・複雑化し、地球規模の課題も顕在化しています。JICAはこうした課題に共に対応し、次の50年に向け、これまで培った信頼の下、新たなパートナーシップを築いていきます。

東南アジア協力の重点領域

この地域の平和、安定および繁栄に貢献するため、ASEANの経済統合や空港、港、道路など物理的な連結性に加え、海上保安能力の強化を通じ、安全な海洋航行の実現に取り組んでいます。

また、経済・社会の発展と世界的な社会課題である脱炭素化の実現を両立させるため、産業界とも連携し持続可能な社会の実現を目指しています。

地域の発展を支える取り組み

JICAはインドネシア、フィリピン、ベトナムなど、各国の都市鉄道(MRT)の整備に協力しています。インドネシアのMRT運営会社は円借款で鉄道建設を進めるとともに、習得した日本の技術や経験を生かし、ベトナムなどのMRT運営会社に対し、運転・保守などに関する研修を実施しています。

フィリピンでは、多目的船の供与や密漁などの漁業監視を行う関係者を対象とした研修などを通じ、海上保安能力の強化に取り組んでいます。

気候変動対策への支援としては、カンボジア、ラオス、インドネシアで脱炭素化に向けた長期計画の策定に対する協力を開始。ラオスでは隣国の電力系統と連系させる広域連系の実現に向け、国内ルールの整備などに取り組みました。

またJICAは、地域的な広がりのあるASEAN共同体との連携も重視し、サイバーセキュリティ対策やフードバリューチェーン開発への協力なども開始。これらに加え、他の開発途上国への協力を始めた東南アジア各国の援助機関に対して、JICAが蓄積してきた知見を共有し、将来にわたり地域を支える基盤づくりに取り組んでいます。

東・中央アジアおよびコーカサス

依存からの脱却と産業の育成が課題

東・中央アジアおよびコーカサス地域の協力対象国は、ユーラシアの内陸部に位置するモンゴル、中央アジア5カ国とコーカサス3カ国の計9カ国です。

モンゴル、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタンはエネルギーや鉱物資源に恵まれている一方で、各国の経済は資源の国際価格の変動に影響されやすく、資源依存からの脱却が課題となっています。他方、エネルギー資源に乏しいタジキスタンやキルギスでは、ロシアなどへの出稼ぎ労働者による送金がGDPの大きな割合を占めており、経済的な自立に向け、国内産業の育成と雇用の創出が急務です。

自立と安定に向けた協力

この地域は、中国とロシアのほか、アフガニスタンや中東諸国と国境を接しており、これらの国から政治・経済的な影響を強く受けています。

各国の自立と安定が維持されることは、ユーラシア大陸全体の安定に不可欠です。この認識の下、JICAは法整備などの「ガバナンス強化」、民間主導の経済活動の活性化や中小企業振興などを通じた「産業多角化」、空港、道路や発電所などの「インフラ整備」、日本人材開発センターや留学生事業など「人材育成」の4分野を柱に協力を進め、域内の連携促進にも取り組んでいます。

2023年度はウズベキスタンに対して、民間セクターの成長や経済情勢の影響を受けやすい脆弱層を支援する財政支援借款を供与しました。また、経済制裁下のロシアを通らない「カスピ海ルート(中央回廊)」の物流機能強化を支援するための調査などを実施。2024年度も域内および他地域との連結性強化に資する広域協力を進めていきます。さらに、産業の多角化に向けた取り組みとして、モンゴルでは工学系人材の育成やその環境整備を進めていきます。

南アジア

成長可能性の裏にある開発課題

南アジア地域は、東南アジアと中東、アフリカをつなぐ地政学的な要衝です。約20億人もの人口を有し、うち25歳未満が約半数※1を占めています。2023年の経済成長率は地域全体で5.7%※2と前年比でわずかに鈍化しましたが、消費・労働市場の拡大が著しく、若い力による成長の可能性を持つ地域です。

一方、南アジアは絶対的貧困人口1.9億人※3を抱え、世界でも特にジェンダーギャップが大きく、また洪水などの気候変動による自然災害に脆弱な地域です。

幅広い協力を展開

南アジアを取り巻く開発課題への対応と強靱な社会システムの構築に向け、JICAはインフラ整備、貿易・投資環境整備、保健医療や教育の改善、平和と安全への取り組み、域内・他地域とのつながりの強化、留学生受入れや人材育成などの幅広い分野で事業を実施しています。また、協力全体を通じて気候変動対策やジェンダー主流化、DX実現に今後も一層、積極的に取り組んでいきます。

インドやバングラデシュでは、都市鉄道や都市間をつなぐ鉄道の建設支援を通じて、運輸交通の改善とともに公共交通機関への輸送手段の転換による温室効果ガス削減に貢献しています。2023年度には、バングラデシュでダッカメトロ6号線の南区間が開業しました。また、パキスタンでは産業競争力の向上を目指し、現地ICT人材と日本企業の連携を開始しました。さらにスリランカでは経済危機に対応するため、公共投資管理の強化や電力セクター改革、政策づくりや制度改善のための人材育成などを通じて、同国政府の債務再編に向けた取り組みに協力しました。アフガニスタンでは、2021年8月のタリバーンによるカブール制圧以降、日本政府の方針を踏まえ、国際機関などと連携し、幅広い人道ニーズに対する支援を継続しています。

※1 United Nations, “World Population Prospects 2023”のデータを基に算出。
※2 World Bank, “Global Economic Prospects, January 2024”
※3 World Bank, “Poverty & Inequality Indicators”のデータを基に算出。