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今、バングラデシュの花卉産業が熱い~課題だらけの市場は、大きなポテンシャルを秘める~

2014.12.25

AM8:00。
ジョショールの花卉市場は人と花で溢れかえり、活気づいていた。
バラ、ユリ、マリーゴールド、ガーベラ、蘭。取引が終わったものからどんどん荷台に積まれていく。大量だ。
「あと1時間早く来ていれば、もっと沢山の花が見れましたよ。」

教えてくれたのはアシャさん。花卉生産協会の協会長としてこの市場を切り盛りする女性起業家だ。

ここジョショールは、花卉栽培のメッカだ。季節に合わせて様々な種類の花が取れる。

バングラデシュの中では稀有な台地地形が、花卉を育てるのに非常に適しているそうだ。

実際、バングラデシュ国内で流通する生花の85%はジョショールで生産されている。この国では、祭事の際に非常に多くの花が使用される。また、ライフスタイルの変化によって徐々に都市でも個人向けの花屋が増え始めている。それにより次期産業として政府も注視するほどに、この業界は年々成長を続けているのだ。

写真:大量のバラがマーケットに運び込まれる

「私たちの手取りは非常にわずかです。100輪売って、20タカ(26円)。」

市内では1輪10タカと、この50倍の値段で小売りされている。なぜそんなに安く買いたたかれてしまうのか。

「私たちがもっているお金はわずかです。生花を保管するための低温倉庫を作るとか、花卉専用の輸送手段を確保するとか、そういうものに投資するお金がありません。その為、分かってはいても品質担保が出来ず、結局都市の中間業者に安く買いたたかれてしまうのです。」

事実、産業自体は伸びているものの、ほとんど政府や諸外国からの支援は無く、この生花市場も協会長の土地と資本で立ち上げたものだ。

写真:花卉生産協会の協会長をつとめるアシャさん

しかし、それだけ課題が多いということは、裏返すと解決することにより伸びる余地が十分にあるとも言える。保管倉庫の充実、運輸やパッキングの工夫による品質管理。さらには技術者を確保して品種改良の研究を続けていけば、生産効率も商品価値も大きく改善できるだろう。

ジョショールの花卉産業に投資し、産業を強くすることでこの地に集まる4000の事業者の雇用の安定に貢献することができ、安く優良な花が確保できる。輸出産業として育てられる可能性も十分ある。ちなみに、あまり知られていないがアフリカでは花卉産業が非常に盛んで、日本で流通するバラの15%はケニア産だ。このケニアにおいても、欧米企業が花卉農業に投資することで技術指導を行い、国際的な競争力を向上させた。フェアトレードの基準の元で多くの農業従事者を雇用している。

写真:アシャさんが経営する花卉農場にて

最近、イギリスのBBC放送がドキュメンタリー制作で、アシャさんを取材にきたそうだ。バングラデシュの産業としての認知度は今後徐々にあがっていくだろう。バングラデシュの花卉産業はまだまだ黎明期にあり、生花だけではなく、花を使った加工品など、日本の技術とアイデアで、新たなBOPビジネスのチャンスも発見できるかもしれない。

写真:袋詰めされた生花は、一般の乗客が乗る長距離バスの屋根に積まれて都市へ出荷されていく