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科学技術協力「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究」

背景と目的

気候変動の影響は、ブータン北部に位置するヒマラヤ山脈の山岳氷河の減退も招き、結果氷河湖が決壊して起こる洪水被害(氷河湖決壊洪水:GLOF)が見られています。1994年のGLOFでは、死者や歴史的建造物の破壊、農作物や家畜などへの壊滅的な影響を与えました。

ヒマラヤ地域の国際機関である国際総合山岳開発センター(ICIMODO)は、ブータン国内には677の氷河と2,674の氷河湖が存在し、これらのうち24氷河湖についてGLOFの危険性が高いと評価しています。しかしながら、ヒマラヤ氷河の研究者からは、ICIMODによる危険度の評価基準は科学的な根拠が不明瞭であり、GLOF発生の危険性に関する再評価が必要との指摘がなされていました。

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これらの状況をふまえ、危険な氷河湖が多く位置するマンデ川上流を主な対象として、2009年から2011年まで、ブータン政府、JICA、科学技術振興機構(JST)が共同で調査を行うことになりました。

事業概要

この研究では、既存氷河湖の危険度調査と目録作成、氷河湖の拡大過程やGLOFの危険要因を調べ、危険箇所を特定し、結果として被害を軽減する対策をブータン政府の関係者と共に考えました。氷河や氷河湖の研究者、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や専門コンサルタントの知見と技術を目の当たりにすることで、ブータン政府の調査・研究能力および災害対策立案能力の向上に貢献できました。また、この研究より、GLOFが前兆現象を伴わず突如下流域に襲来すること、したがって継続的なモニタリングと早期警報システムを構築する必要性があることが提言され、これが技術協力プロジェクト「氷河湖決壊洪水(GLOF)を含む洪水予警報能力向上プロジェクト」に繋がっています。

【協力期間】

【日本側協力機関】

【実施機関】

【専門家派遣】

事業ハイライト

この研究は、JICAとJSTが共同で支援する地球規模課題対応国際科学技術協力(通称SATREPS)の第1号プロジェクトとして始動しました。遠隔測定手法(リモートセンシング)、現地観測、数値実験、地形図、衛星データ等を駆使した研究の成果は、ブータン政府カウンターパートと日本側研究者の共同学術論文として多数発表されています。

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