任期終了隊員に帰国直前インタビュー (出水結花 職種:環境教育)
2024.04.16
アフリカ大陸の南部に位置するボツワナ共和国では、現在30名のJICA海外協力隊員が活動しています。そんな中、コロナ禍が明けて間もなく派遣された2名の隊員が、3月19日に1年8ヶ月の任期を満了して帰国しました。
帰国直前に、ボツワナで過ごした日々について現役隊員からインタビューさせていただきました。
本記事では、環境教育隊員としてモホディツアネ・タマハ県に派遣された出水 結花さんのお話を紹介します。
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早速ですが、出水さんの主な活動内容を教えてください。
環境教育隊員として、モホディツアネで活動していました。主には3つ、「ポイ捨ての防止」「ゴミの分別」「生ゴミを使った有機栽培」を目標にしていて、小学校とコタと呼ばれる自治体等が活動先でした。
基本的には地域の5つの小学校を巡回していて、学校の長期休み等を使ってコタに行き、大人向けの活動をしていました。
協力隊には、高校のときにOVの方の話を聞いてからずっと興味を持っていました。派遣前は高校で英語の教員をしていたのですが、コロナ禍で英語教育に関する要請が無くなっていて。授業の中でSDGsを取り扱う機会があったこともあり、環境教育で応募しました。
コロナ明けの派遣でもありましたが、ボツワナで活動する上で大変だったことはありますか?
教員をしていて、生徒に「国が違うと文化も当然違う。その違いは尊重すべきで、上下はない」というようなことを話す機会があります。もちろんそう思っていますが、分かっていても当事者になると納得がいかないことも多いです。
一番苦労したのは時間に関する考え方で、活動をする上で”縦軸と横軸がない”と感じる場面が多くありました。未来のことである縦軸と、他人を含む自分の周囲のことという横軸です。
何度アポイントを取っても忘れられてしまったり、明日は別件で行けないと伝えても何度も「明日来て」と言われるなど、物事がうまく進まないんです。
特に私は5つの小学校を回っていたので、次にその学校に行くのは1週間後になるんです。児童向けのエコクラブという部活動を立ち上げたから周知しておいてほしい、と先生に頼んだけれど先生が忘れてしまって、中々クラブ活動が進みませんでした。
予定のリマインドもよくしましたが、当日の朝にリマインドをしても忘れられてしまうこともあったので、段々と自分の中で妥協するポイントを見つけるようになりました。
例えばエコクラブは各クラス2名ずつ参加して欲しかったのですが、そうすると各クラスの先生に協力をお願いする必要があり連絡がうまく進みません。なので最終的には1つのクラスの児童みんなに参加してもらう形を取りました。理想の形とは違いますが、まず始めることが大切だと考えました。
また、未来のことがうまく進まないなら“今”やるようにしたこともあります。
ゴミの分別を来週から始めるから準備をしておいて、と言うのではなく、こちらで分別用のバケツを準備してしまって、今からやろうと進めたんです。そうすると先生たちも空いている生徒を呼んで設置を手伝わせるねと言ってくれて、その日から分別を始めることができました。どうしてもやりたいことがあったら、思い切って始めるのも手だと思います。
ボツワナに来てよかったと思う瞬間、出来事はありますか?
ボツワナの人たちはみんな頻繁に話しかけてくれて、私も見習わなければと思います。調子はどうか、と先生たちから一日に何回も聞かれるんです。コミュニケーションの取り方も、単なる仕事仲間というより個人としての繋がりを大切にしてくれている感じがします。
日本の学校は忙しいこともあって、あまり教員同士のコミュニケーションも取れていなかったなとボツワナに来てから思いました。ボツワナの先生たちは心の余裕があって、自分を大切にするやり方を知っていると思います。その服いいね、と個性を褒められることも多かったです。
活動以外の点で言うと、やはりボツワナの自然は大好きです。休暇を利用してゲームドライブ(野生動物を車でドライブして探索できるアクティビティ)によく行きました。
これから帰国して教育の現場に戻られると思いますが、ボツワナでの1年8か月は人生においてどんな時間でしたか?
この1年8ヶ月は“自分との戦い”でした。実は、自分の性格を変えたいと思ったことも協力隊に来た理由の一つだったんです。 自分の押しが弱いところや人と話すことが苦手なところを変えるきっかけにできればと思っていました。
活動の中で、もっとプッシュしたいという時に押しきれなかったり、週末でも地域の人に会いに行けばもっと彼らのことを知れるのに行かなかったり。もっと頑張りたいのに、頑張れない自分とこの期間ずっと戦っていました。自分の内面について考える機会も多かったです。
任期を通して、赴任前より明るく話せるようになったと感じます。ボツワナの人は基本的にとても明るくて、彼らと接する時間が性格に作用したんだと思います。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
ボツワナで過ごした1年8ヶ月は人生で間違いなく一番濃くて、一番自分と向き合った時間でした。
活動では計画したもののうまく行かずに諦めたこともあって、思い描いていた成果ではないところもあります。ですが、自分の限界までやったので、協力隊に参加したことを後悔はしていません。
辛いこともたくさんあったけど、私は来てよかったと思っています。
どんな人も、100%満足がいく結果にはならないと思うんです。ですが、それをいい経験になったと思えることが大切だと思います。うまく行ったことも行かなかったことも糧にするように考えられると、協力隊の生活を有意義に過ごせるのではないかと思います。
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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